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2015.12.23

第3回

ニューヨークのトレンドは、企業の寄付とボランティアから生まれる

りばてぃ

ニューヨークのトレンドは、企業の寄付とボランティアから生まれる

人気ブログ「ニューヨークの遊び方」の著者で、マーケティング・コンサルタントの「りばてぃ」さん。今回はニューヨークのトレンドと社会貢献活動の関係性に迫ります。日本にも進出して話題のハンバーガー屋「Shake Shack」も社会貢献活動から生まれたって知ってましたか?

 

転機は、2001年の同時多発テロ

ニューヨークで、社会貢献活動の一環として、地域住民や地元企業が公園の建設や維持・管理に主体的に関与するようになった影響は、とても大きい。

特に、公園やパブリック・スペースに誘致したお店やイベントから収益を上げて、維持・管理の費用(寄付)を賄い、さらに周辺エリアに経済効果をもたらそうという考え方が広まったことは、ニューヨークを大きく変えた。

転機になったのは、たぶん、2001年9月11日に起こった米国同時多発テロだろう。ワールド・トレード・センターが崩壊した後、ニューヨークでは、人々が協力し合って、この街を復興させようという気運が、かつてないほど高まった。

街角のそこらじゅうに、

「I Love New York More Than Ever 」

と書かれたポスターが飾られ、人々は自分ができることから、様々な社会貢献活動をやりはじめた。

市長がブルームバーグ(Michael Bloomberg)さんだったことによる影響も大きかっただろう*1 。今や世界的なメディア企業となったブルームバーグ社を一代で築き上げた優秀な経営者のブルームバーグさんは、ニューヨークを見事に復興。数々の実績を残された。

マイケル・ブルームバーグNY市長、「アーモリー・ショー」の記者会見前(写真:りばてぃ)

分かりやすい事例を1つ挙げると、例えば、ニューヨーク市を訪れる1年間の観光客数は、2001年の3520万人から、2013年には、当時、史上最多記録となる5430万人へと増加。

また、その観光客が旅行のために直接使うお金(Direct Spending)も、2001年の170億ドル(1ドル=120円換算で約2兆円)から、2013年には、394億ドル(同約4兆7000億円)へと、わずか10年ほどで2倍以上、金額にして224億ドル(同約2兆7000億円)も増加させた*2

これは別の言い方をすると、日本「全国」全ての理美容市場(2013年時点で約2兆円)や、出版市場(2010年時点で2兆円の大台割れ、2012年には1兆7398億円)よりも大きな市場を生み出した、ということだ。そんな偉業を、ブルームバーグさんは、ニューヨーク「市」で実現した。

2010年の調査では、ブルームバーグ市長は、過去30年間の全ての市長の中で最高の支持率を記録。それまで2期8年までと決まっていた市長の任期を、法改正し、史上最長となる3期12年(2002年1月~2013年12月)務めることになった。

しかも、その間、ブルームバーグさんが市長として得ていた報酬は、たったの年間1ドル(ブルームバーグ社の成功で世界有数の大富豪になられているため、市長としての報酬を辞退。ただし、法律上、無報酬では政府機関で働けないためゼロではなかった*3)。

ボランティアで市長をやっていたのだ!!!

そんなわけで、ニューヨークは2001年を境にして、まったく別の都市になったと言っても良いほど様変わりし、特に、社会貢献活動の普及ぶりはすさまじい状況になっている。

企業スポンサーがついたり、寄付によって、公園やパブリック・スペースなどの公共エリアで開催される各種イベントは、爆発的に増加。

野外でのコンサート、映画鑑賞会、ミュージカルや各種ダンスのショー、さらに、演劇、ヨガ教室、マラソン大会、無数にあるパレードなどの他、公共エリアでの様々なタイプのアートの展示なども、現在、増える一方だ。

企業スポンサーや寄付によって行われる諸活動も、もはや、あまりにも増えすぎて、その全てを把握できている人はいないだろう。

マディソン・スクエア・パーク内の「Shake Shack」(撮影:りばてぃ)

中には、公園の維持・管理費を稼ぐために作られたハンバーガー屋(Shake Shack、売上げの一部が寄付される仕組み)が、地元民からの支持を得てチェーン展開するようになり、2015年春、ニューヨーク証券取引所に上場した事例まで登場した*4(さらにこのShake Shackが2015年11月13日に日本の東京・明治神宮外苑内にオープンし、今でも長蛇の列を作っているのは皆さんもご存知のことだろう)。

このような背景から、2013年から新たにはじまった共有自転車プログラム(Citi Bike*5 )も、税金を一切使わず、スポンサー企業からの寄付と利用者からの売上げで運営されていたりする。

プロ、素人、個人、団体を問わず、様々な文化活動や地域活性化などの社会貢献活動を行う人々への寄付もますます盛んになった。

ユニークな例を挙げると、いきなり街角でミュージカルを披露したり、様々なパフォーマンスを行う街角即興パフォーマンス集団、「インプロブ・エブリウェア」(Improv Everywhere)という、寄付とボランティアによって運営されている団体まである。彼らは、世界的なフラッシュ・モブ・ブームの火付け役としても有名だ。

さらに、こうした意識の変化は、インターネット上で、もともと主に音楽、アート、舞台芸術などの文化活動に対する寄付集めからはじまったニューヨーク生まれのキックスターター(Kickstarter)が、世界最大のクラウドファンディング・サイトに成長した理由の1つとも考えられるだろう。

なお、キックスターターでは、自社商品を量産したい中小ベンチャー企業などが、資金の寄付を募る場としても発展し、2015年2月には、「Pebble Time」というスマートウォッチの製作資金の寄付の呼びかけに、たった2日で1000万ドル(1ドル=120円換算で12億円)、最終的には2000万ドル(同24億円)を超える寄付が集まった*6

こんなことが広く一般的に可能になれば、もはや銀行も株式市場も不要になるかもしれない。資本主義経済の世界の中心地として知られるニューヨークで、資本主義ではない(資本主義を超えた?)新たな経済原理が誕生し、育まれている。

この他、ニューヨークで見られる様々な流行や、革命的な変化について語れば、まだまだ無数に事例が挙げられる。

キリがないのでもう1つだけ、日本人なら知っておくべき例を挙げると、2015年、日本人俳優の渡辺謙さんが主演されたブロードウェイ・ミュージカル、『王様と私』がヒット。

「王様と私」劇中歌のCD発売イベントのサイン会での渡辺謙さん(撮影:りばてぃ)

謙さんの主演男優賞を含め、トニー賞で9部門にノミネート、4部門受賞の快挙となったが、2015年の秋からはじまる新作に「白人の欧米人」ではない人物が主役を演じるミュージカルが急増し、少なくとも過去10年は見られなかった異例の現象として話題になっている*7。渡辺謙さんの成功による影響で、新たな流行が起ころうとしているのかもしれない。

まだまだいくらでも書けるが、一旦、ここで前回の記事の冒頭の質問に戻ってみよう。

「今、ニューヨークでは何が流行っているの?」

いかがだろう? 
この質問が、そう簡単には答えられない難問中の難問という意味が、なんとなくにでもお分かり頂けただろうか。

ニューヨークでは、様々な分野にいる多種多様な人々の間で、常に、いろいろなものが同時多発的に流行しているというわけだ。

でも、じゃぁ、なぜ、こういう状況になっているのだろう? 次回はその理由について掘り下げてご紹介する。
 

*1 著者ブログ記事 http://nyliberty.exblog.jp/20143752
*2 著者ブログ記事 http://nyliberty.exblog.jp/21630545
*3 「wikipedia」https://en.wikipedia.org/wiki/One-dollar_salary
*4 著者ブログ記事 http://nyliberty.exblog.jp/23959674
*5 著者ブログ記事 http://nyliberty.exblog.jp/20544212
*6 著者ブログ記事 http://nyliberty.exblog.jp/24181744
*7 「The New York Times」
http://www.nytimes.com/2015/09/13/theater/this-broadway-season-diversity-is-front-and-center.html?_r=2 

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