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2011.07.01

連載エッセイ61

No.1は本当に日本か!?
日本人が知らない世界マンガの沃野
小野耕世『世界コミックスの想像力』、
ウォード『狂人の太鼓』、タン『アライバル』

中条 省平

No.1は本当に日本か!?<br />日本人が知らない世界マンガの沃野<br />小野耕世『世界コミックスの想像力』、<br />ウォード『狂人の太鼓』、タン『アライバル』

  小野耕世が「ユリイカ」に連載していた世界のコミックス紹介が単行本になりました。題して『世界コミックスの想像力 グラフィック・ノヴェルの冒険』(青土社)。私は連載中いつも楽しみに読んでいたのですが、こうして1冊にまとまってみると、小野耕世のすごさがよく分かります。
 全16回、毎回1人のマンガ作家に焦点を当てますが、そこには、作家周辺の各国のマンガ事情や、世界を駆けめぐって編みあげた小野の人脈や、彼が生きてきたマンガやアニメの膨大な体験と歴史が豊かに盛りこまれているので、1回につき400字詰め原稿用紙で約40枚というそれなりに長文の紹介でもあり、大変に充実して読みごたえがあります。
 表題には「コミックス」とありますが、これは一般に通用しているから使ったもので、著者は副題の「グラフィック・ノベル」(絵で描かれた文学作品)という呼称のほうがふさわしいと述べています。つまり、コミックスというと、つい子供や少年少女向けの娯楽マンガを想像してしまいますが、グラフィック・ノヴェルは青年や大人が読む芸術性の高いマンガであって、その内容や形式には無限といっていいほどの多彩な実験性が含まれているのです。
 実際、小野耕世の作品紹介を読んでいると、「日本のマンガは世界一だ」などという一部マンガファンの思いこみは根拠のない空想にすぎず、世界には、日本の制度化されたマンガとは異質の、多種多様な発展をとげた表現の宇宙が広がっていることに驚かされます。そして、マンガという表現形式の可能性の大きさに興奮してしまいます。
 小野の紹介するマンガ家たちは、アメリカ人(6人)、フランス人(3人)、オーストラリア人、イタリア人、スペイン人、中国系アメリカ人、日系アメリカ人、中国系オーストラリア人、そして日本人と、そのナショナリティは多様で(アメリカとヨーロッパが中心であることは否めませんが)、世界マンガの最前線がいまや自由な越境者によって担われていることが分かります。
 例えば、この本で紹介されるマンガ家のなかに、スヴェトラナ・シマコヴァという31歳の女性がいます。彼女はロシア出身で、16歳のときからカナダで暮らし、アメリカで出版するマンガで人気を得ました。彼女の代表作『ドラマコン』(2005~07年)は、アメリカのある町で開かれるアニメ大会を舞台とするラブ・ロマンスですが、全編、日本の少女マンガの技法で描かれているのです。

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