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2015.12.09

第二十五回

僕の勘違い日本語シリーズ1

小嶋 陽太郎

僕の勘違い日本語シリーズ1

 子供のころ謎だった言葉に「バケツぎらい」というものがあった。
「あいつはバケツぎらいだ」
 何かの局面でその言葉を聞いた僕は、「バケツぎらい?」と思った。だって、おかしいじゃないか。バケツに好きも嫌いもあるか。バケツというものが、好きとか嫌いとか言及するような対象だとは到底僕には思えなかった。
 でも、最近になって「ああ、あれは『負けずぎらい』を聞き違えていたんだな」と気づいてひどく腑に落ちた……気がしたけど、やはり腑に落ちない。だって、「負けずぎらい」もおかしくないか。
「負けぎらい」ならわかるけど、「負けずぎらい」って、へんだ。「ず」が否定の「ず」だとすると、「負けないぎらい」という意味になる。負けないことが嫌いということはつまり勝つことが嫌いということであって、したがって僕たちが日常的に使う「負けずぎらい」とは真逆の意味の言葉になる。それはおかしいので、「ず」は否定の「ず」ではないということになる。
「ず」が否定じゃないとしたら、あと僕が思いつくのは、方言というか、なまりというか、そういうものしかない。「オラはレバーが苦手だズ」みたいな。
 でも、方言的な「ず」だとしたら、語尾に持ってきて「負けぎらいズ」にする必要があると思う(なんかパンクバンドの名前みたいになった)。でも「負けずぎらい」には、見てわかるとおり、真ん中に「ず」がある。ということは、なまりや方言でもないということになる。「負けずぎらい」ってなんなんだ。意味わかんねえ。ホワイジャパニーズピーポー、オカシイダロ。
 しかしグーグルで調べたら納得のいく解説をあっさり発見したから、この話はここで打ち止めとする。(気になる人は調べてね)
 また僕は、ものごころついたころからトマトには大別して二つの種類があると信じ込んでいた。ひとつは「トマト」。もうひとつは「右トマト」だった。
 トマトはわかる。シンプルにトマトだ。しかし右トマト。これはわからん。トマトより小さいけど、トマトと同じように赤くて丸くて、右要素が感じられない。何をもって右と断定しているんだ。当時4歳か5歳だった僕は激烈に疑問に思った。が、「右トマト」はいわずもがな「ミニトマト」だった。それにしても右トマトって、どない間違いやねん。天皇万歳言うてどっかにビューン突撃しそうなトマトやな。と幼少期の自分に関西弁でツッコミを入れつつ、今回でこの連載が開始からちょうど1年になることに気づいてしまった。光陰矢の如し。そして「光陰矢の如し」をひらがなにして並べ替え再度変換すると、「うんこの仕事イヤ」になることにも気づいた。並び変える前より切実な響きを持つ言葉だと個人的には思う。日本語の持つ可能性をひしひしと感じざるを得ない。というところで、僕の勘違い日本語シリーズ1を終える。(2はたぶんない)

 

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