「手当」すら求人票に書かない企業の騙しの手口

 また、最近ではそうした「◯○手当」とすら書かない求人も増えている。

 ある不動産会社の事例をあげよう。

〈case1〉
 新卒入社3ヶ月で、中堅不動産会社に勤める方からの相談。求人票には「基本給30万円+歩合給」とあり、勤務時間は「9時15分~18時30分」「完全週休2日制」となっていた。
 ところが、実際には月150時間以上の残業を命じられた。入社後の給与明細には「基本給15万円」「固定割増手当15万円」との記載だけがあった。固定残業代については契約時の際にも説明がなく、契約書にも記載はなかった。

 もはや、給与の実に半分が固定残業代となっている異常な事態だ。しかも求人の段階ではただ単に「基本給30万円」とあるだけで、残業に関する手当と一切書かない。明らかな「詐欺」である。

 また、今度は大手コンビニのフランチャイズを運営する会社に新卒で入った人の事例を見てみよう。連載第2回でも紹介したケースだ。

 大手コンビニとフランチャイズ契約をして15店舗ほど運営している会社に正社員として入った女性からの相談。求人サイトでは「月額20万円」「1日8時間のシフト制」「年間休日100日」とあったが、実際に採用が決まり契約書を交わすと、そこには基本給が15万円、他に様々な手当が含まれていて、手取りは「17.8万円」となっていた。


 しかも労働時間は1日8時間のはずが実際には毎日8時から22時まで休憩もほとんどなく働いており、休日もまず週2日とれることはなく、年間100日には到底足りなかった。

「月額20万円」が「月額17.8万円」ここまで来ると単に「嘘」の求人である。

 しかし、単に「騙された」ですめばまだマシかもしれない。実は、この固定残業代制度を「活用」した企業では、すでにいくつも過労死・過労自殺事件が引き起こされている。

 有名なのが外食大手チェーン店を経営する大庄株式会社の「日本海庄や」での過労死事件だ。この会社では新卒社員を「月給19万4500円」として募集していたにもかかわらず、入社後にそこに「80時間分の固定残業代」が含まれていた。そして2007年には月300時間に迫る長時間残業の結果、入社4ヶ月の24歳の男性社員が過労死するに至っている。

 違法な固定残業代制による「求人サギ」は現在、爆発的な広がりを見せている。2014年にブラック企業対策プロジェクトが、ハローワークのインターネットサービスを対象に行った調査では、これを導入している求人は180件あり、そのうち違法なものが139件も発見されている。
http://bktp.org/news/896

 恐るべし「固定残業制度」……。次回は、あぶない求人票を見抜くコツ(その2)をお送りします。「給与」のごまかしだけでなく、「雇用形態詐称」まで今はある! 11月28日(土)公開予定です。

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