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2015.11.06

第二十三回

スメルズ・ライク・ティーン・スピリット的な目覚め

小嶋 陽太郎

スメルズ・ライク・ティーン・スピリット的な目覚め

 中学の体育館にびっしりと同級生が並んでいて、彼らは全員段ボールを頭からすっぽりとかぶっていた。段ボールから足が生えたといった箱男的な格好だった。ただ、僕の同級生には男だけじゃなく、半々の割合で女子もいたので、つまり半分は箱男で半分は箱女だった。
 彼らはきっちりと隙間なく並び、人間の高さの、段ボール製の足場を作っていた。僕はその上に立っていた。そして僕の正面には若い男が立っていた。見覚えはなかったが、「ああ、これは担任の先生だ」と直感したので、担任の先生であることは間違いない。
 男は僕と目が合うや否や背中を見せて逃げ出し、不意に鬼ごっこが始まった。僕は男を追いかけた。
 足場は段ボールというか人間の集まりで構成されているから高さも違うし、不安定であることは間違いなかった。でも不思議と段ボールに穴が開いたりへこんだり、中に入っている人間が僕に踏みつけられる衝撃で大きくよろめいたりすることはなかった。
 箱男と箱女たちからは、文字どおり頭上を駆け回る僕たちに対する文句や、うめき声のひとつも聞こえてこなかった。息を殺してじっとする忍耐の気配だけは伝わってきた。
 やがて男を捕まえると突然スピーカーからニルヴァーナの音楽が流れ出し、デイブ・グロールのたたくドラムに合わせて僕は彼の尻をぶったたいた(全然知らんという人のために説明しておくと、ニルヴァーナはアメリカのバンドで、デイブ・グロールはそれのドラマーだ。とっくに解散してるけど)。
 しばらくすると音楽が止み、男は立ち上がって僕から逃げる。また捕まえる。ニルヴァーナが流れて尻をぶったたく。
 男はうぐうぐとうなりながら、抵抗せずにひたすら尻をたたかれていた。
 ときおり足場が箱男箱女の連なりでできているということを忘れかけ、しかし段ボールの内部から漏れ出るように漂う、そこはかとない忍耐の気配にそれを思い出す。それにしても、なんで彼らはおとなしく僕の足場になっているんだろう?
 何度目かに男を捕まえたとき、懇願するような目で彼が言った。「何がいい?」
「『Lithium』で」
「『Heart-Shaped Box』で」
「『In Bloom』で」
 そういう具合に僕は曲をリクエストした。すべてニルヴァーナの曲だ。するとそのとおりの曲が流れ、僕は、よりテンションを上げて男の尻をたたいた。
 ちなみに僕は『In Bloom』の投げやりな(実際はどうか知らんけど、そう聞こえる)ドラムと、スティック糊みたいな匂いのする(伝わるかな)粘着質なギターソロが超好きだ。
『In Bloom (Alternate Version)』もあるのだが、こちらのギターソロはスティック糊の皮を被った鉄骨みたいな漢っぽさがあり、元バージョンよりズガッとしたノイジーなピッキングが激烈に気持ちよくてこれも最高に好き、などと考えながら僕は同級生を段ボール越しに踏みつけながらまた一心不乱に男の尻を……
 というヤバイ夢を今朝見た。目覚めたときには背中にびっしり汗をかいていた。
 助けて、フロイト先生。(でも分析されないほうがよさそうだな)

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