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2015.11.06

次々と起こる怪奇現象。これって霊の仕業なの!?

心霊コンサルタント 青山群青の憂愁Ⅰ

入江 夏野

心霊コンサルタント 青山群青の憂愁Ⅰ

  キャラノベ界に、クールでイケメンな心霊コンサルタントが登場!
 11/12発売の文庫『心霊コンサルタント 青山群青の憂愁』の刊行を記念して、全5回のためし読み記事を公開いたします! 
 次々起きる怪奇現象を解決してもらうため、貧乏女子大生・花は、心霊コンサルタント・群青を紹介される。長髪に藍染の袴姿、ブルーのカラコンをした群青は、超感じ悪いけど、腕は確か。洗面台一杯の鶏の頭、血染めのライブ会場などの謎を“降霊”して次々解決! “心霊コンサルタント”青山群青が紐解く怪奇ミステリ、始まります。

 

<著者の入江夏野さんより、plusへメッセージが届きました!>

 はじめまして。入江夏野と申します。
  このたび、みなさんのもとへお届けする物語の主人公「青山群青」は、イケメンだけど一癖も二癖もある男。
  よくいえば、世界一ハカマを美しく着こなす「ハカマ王子」となりますが、「いや、単なるコスプレイヤーだろ」なんて突っ込みを入れたくなる場面もご用意してあります。
性格はぶっきらぼうで、ちょっぴり俺様な一面もあるようです。それでいて相談事が舞い込めば、真摯に依頼人の話に耳を傾け、難事件から珍事件までを鮮やかに解決。貧乏女子大生「花」が彼に胸ときめかせるのも、当然の流れでしょう。
「心霊コンサルタント」を名乗る群青は、相談者の前で「降霊」して様々な事件を解決します。でも、花は最初、疑問に思います。彼には本当に「霊能力」はあるのか? そんな男が存在するのか? もしかして、彼はとんだペテン師野郎なんだろうか……?
 読者の皆さまも当然、疑わしく思われることでしょう。
 実は、ここに哀しい秘密が秘められているのですが、それは読んでのお楽しみということで!
 ただし、これだけはみなさんにお約束いたしましょう。
 最後の秘密が明らかになったとき――
 あなたの心には青山群青が棲みついています。

<登場人物紹介>

青山群青 (あおやま ぐんじょう)
24歳。「心霊コンサルタント」のときは、石川五右衛門のような羽織袴のコスプレ(もと弓道部員なので)、青いコンタクトレンズ、手には革の手袋。クールなイケメン。細マッチョ。「降霊」してオカルトなナゾを解決するが……。

小日向花 (こひなた はな)
広尾のお嬢様女子大2年生。貧乏苦学生でアルバイトばかりしてる。群青に片想い。

 

塩村一生 (しおむら いっしょう)
34歳。兆徳寺住職。大柄、筋骨隆々、ソフトモヒカン。日本人離れしたルックス。墨色の法衣。声が大きくて優しく面白い。

青山一翠 (あおやま いっすい)
34歳。群青の兄、一生の親友。3年前の事故で植物状態で入院中。
 

 


第一話 ドクダミ館の怪
 

 佐藤教授の講義はいつも二十分ほど早く終わる。この日もそうだった。

 「では、ごきげんよう」

 「ごきげんよう!」

 花がリュックに教科書をしまっていると、一列前の亜由美と佳奈がくるっと振り向いた。二人とも、ばっちりアイメイクを決めている。

 「小日向さんも、一緒に行かない?」

 「え、どこへ」

 「六本木。今夜、慶安大学の男の子たちとご飯を食べる約束なの。食事のあとはクラブへ繰り出すかも」

 ――ああ、それで。

 真面目な亜由美と佳奈が珍しく机に立てかけた教科書の陰でマスカラを塗っていたから、何かあるんだろうなとは思っていたが、合コンか。

 「マナト君も来るみたいよ。ほら、前に話した彼女募集中の男の子」

 マナト君の名前ははっきり覚えている。憎めない三枚目キャラで、スノボが得意。その上、大学生の分際でベンツを乗りまわしているという。

 「小日向さんも、彼氏、欲しいでしょう?」

 「そりゃあ、いないよりはいてくれたほうがいいけど……」

 とくに気味の悪い出来事があったときに、「聞いて、聞いて」と電話できる相手がいてくれたら、どんなにか心強いことだろう。

 マナト君が自分のような田舎者を気に入ってくれるとは到底思えないけれど、一度くらいは他校の男子学生とゆっくりお喋りしてみたい。

 しかし、そこをぐっと堪えて、花は「ごめんね」と手を合わせた。

 「参加したいのは山々だけど、バイトを休むわけにはいかない。また誘ってね」

 亜由美が「あら?」と、リュックを担いで立ち上がる花を見上げた。

 「水曜日はアルバイト、お休みでしょ?」

 「それはファミレス。春休みから水曜の夜は居酒屋で働いてるの。洗い場担当だけど」

 英会話スクールの入学資金を捻出するため、アルバイトを増やしたばかりだった。

 「偉いのね。私たちにはとても真似できない」

 「英会話スクールの費用は、ご両親に出してもらえばいいのに。一度しかない大学生活、もっと楽しまないともったいないわよ」

 小学校からエスカレーター式で上がってきた亜由美たちは、海外旅行もブランド物も親におねだりすればすぐに手に入る、いわゆる銀のスプーンをくわえて生まれてきた幸運な子たちだ。彼女たちがバイトするとしたら、人気ファッション雑誌の「読モ」。これが定番だ。

 一方、大学近くのアパートで一人暮らしの花は、山形の実家から届く仕送りが少なく、足りない分は自分で稼ぐしかなかった。

 「私の分まで楽しんできて。ごきげんよう!」

 小さく手を振ると、花は駆け足でキャンパス西側の駐輪場へ向かった。

 狙っていた国公立大学の受験に失敗し、滑り止めのお嬢様大学に入学して早一年。いまだに、花は華やかな校風に馴染めず、心を許せる友達も少なかった。

 有栖川宮記念公園を通りすぎ、二百メートルほど坂を上っていくと、オレンジ色の三角屋根が見える。それが花の暮らす女性専用の賃貸アパート〈五十嵐フラット〉だった。

 ここ港区元麻布界隈は、大使館が多く、都内でも有数の閑静な高級住宅街として知られている。

 東京メトロ日比谷線・広尾駅までは徒歩十五分。都内へのアクセスは抜群で、あの六本木ヒルズや麻布十番商店街も徒歩圏内にある。当然マンション、アパートの賃料は高めのところが多い。そうしたなか、五十嵐フラットは、一人暮らしの女性を支援したいという大家さんの意思を反映し、月々の家賃は驚くほど安かった。

 その上、築五十年とはいえ、赤毛のアンの世界を彷彿させる洋館造りの建物は、いつ見ても胸が躍る。……と、五十嵐フラットは、花のような地方から出てきた女子大生が一人で暮らすには申し分のない条件が〓っていた。

 ただ一つ、気味の悪い出来事がつづくことを別にすれば……。

 

 自転車をいつもの場所に止めて鍵をかけているとき、後ろから「花さん、花さん」とハスキーな女性の声がした。

 「はーい」

 振り向けば、同じ敷地内にそびえる立派なお屋敷の扉が左右に開き、車椅子に乗った老婦人と介添えの男性が出てくるところだった。

 「こんにちは!」

 「お帰りなさい、花さん」

 花に向かって車椅子から手を振る五十嵐淑子さんは、五十年前に五十嵐フラットを建てた実業家の未亡人で、現在の大家さんである。そして、車椅子を押す背の高い二枚目のおじさまは、一人息子の慎一郎さん。アパートの管理を担当している彼のことを、花たちは「管理人さん」と呼んでいる。

 「お出かけですか」

 「ええ、気分転換に有栖川まで。ちょうどよかったわ。花さんにお話があるのよ」

 「もしかして、あのことですか」

 花は腰を屈め、大家さんの顔を見て尋ねた。

 といっても、大家さんの表情はサングラスに遮られて、まったく読めない。いくら覗き込んでも、漆黒のレンズには、セミロングの髪にピンクのキャップという花の姿がぼんやり映るだけだった。

 大家さんがいつも大きなフレームのサングラスを愛用しているのは、昔の交通事故で足だけでなく顔にも大怪我を負ったから、という噂だ。それでも、ターバンのような黒いタフタの帽子をお洒落に被り、背筋をぴんと伸ばして車椅子に座る淑子さんは、いつ会っても昔の大女優のような貫禄を漂わせ、絵になっている。

 「専門業者に頼んで、来週、防犯カメラを取り付ける工事をします」

 わあ、と目を輝かせた花は、慌ててお辞儀をした。

 「ご心配おかけしてすみません」

 「こちらこそ、怖い思いをさせてしまい、ごめんなさいね。一昨日、花さんから報せを受けたあと、他のお部屋のことも心配になって息子に聞いて回らせましたの。そうしたら、田渕さんのお宅でも被害に遭っていたんですよ」

 「えっ、美穂子さんも?」

 「花さんのところと同じ。真夜中に誰かにチャイムを鳴らされて迷惑していたそうなの。ねえ?」

 「はい」と、車椅子のハンドルを押さえる慎一郎さんが後ろからうなずいた。

 「田渕さんに防犯カメラの話をしたら、『ぜひ付けてほしい』というご意見でした。防犯カメラは二階の高い位置に取り付け、二十四時間、建物の外周りの様子を撮影、記録します」

 「ありがとうございます!」

 夜中に玄関チャイムを鳴らされるという不審な出来事が始まったのは、先週からだった。

 深夜二時過ぎにチャイムが鳴らされ、ドアスコープから覗いてみると誰もいない。戸締りを確認してベッドに戻ると、しばらくしてまたチャイムの音がして目を覚ます――。寝ぼけまなこでドアスコープ越しに外を見ると、やはり誰もいない。そこで、仕方なくチェーンをかけたままドアを開けて外を確認してみるのだが、アパートの周囲に人影は見当たらない。

 そんな気味の悪い出来事が約一週間つづいていた。

 「防犯カメラの工事が済むまでは、毎晩私がアパート周辺をパトロールして警戒に当たります。今夜からはどうぞ安心してお休みください」

 慎一郎さんにつづけて、大家さんが花の手を握り、念を押すようにいった。

 「何かあったら、あたくしか、息子の携帯電話に連絡くださいね。遠慮は禁物ですよ。よろしくて?」

 「ありがたく、そうさせてもらいます」

 真夜中に鳴り響くチャイムのせいで先週から寝不足つづきだったけれど、これで一安心だ。

 散歩に出かけていく大家さん親子を見送ったあと、花は一〇一号室の玄関ドアに鍵を差し込んだ。

 ――よかったー! どこかに落としたわけじゃなくて助かったー。

 花は、今朝うっかりテーブルに置き忘れた携帯電話を掴むと、トイレも使わずバイトに出発した。ゆっくり寛ぐような時間はなかった。

 

 居酒屋のバイトは、午後六時から十一時までのシフトだった。食べ残しを処分して、お皿や鉄板にこびりついたご飯粒や焦げ付きを洗い落とす作業は、腰に疲労が溜まるのが少し辛いけれど、先輩たちが皆、いい人で助かる。

 バイト初日に手を滑らせてグラスを割ってしまったとき、先輩たちが一斉に「大丈夫?」「怪我しなかった?」と優しく声をかけてくれたときには、感激のあまり涙ぐんでしまった。

 それに引き替え、一年近くホールを担当しているファミレスでは、あまりにも忙しくて皆、気が立っているせいか、一番若い花はいつも料理長や先輩たちから「もたもたせんで、スピードをアップしろや!」「のろま! おまえの前世は亀か?」と怒鳴られてばかりいる。

 「お先に失礼します!」

 「おっ、気をつけて帰るんだよ」

 「はい」

 自転車を飛ばしてアパートにたどり着くと、背の高い男の人が二十メートル先の角を曲がっていくのが見えた。すらっとした体形といい、街灯に照らされて銀色に輝く髪といい、慎一郎さんが約束通り、アパートの周りをパトロールしてくれているようだ。

 「ただいまー」

 玄関ドアを開けて電気を点けると、シューズボックスの上にちょこんと座るスヌーピーの首をくしゅっと握りしめる。ハグのかわりのちょっとした儀式だった。

 次に、洗面所のドアを開ける。うがいを済ませ、コップを濯いで元の場所に戻そうとしたとき、あれ? と花は洗面台を見回した。

 愛用の歯ブラシが消えている。

 大家さんにもらった柄がピンクのもので、毛の硬さがちょうどよい優れモノだった。

 ――朝、歯を磨いたあと、別のところに置き忘れた、あるいは、床に落としたか?

 しゃがんで洗面台と壁の間を覗き込んだあと、「あ、そうだ」と勢いよく立ち上がった。浴室のドアを押し開けながら、花は心の中で呟く。

 ――きっとここだわ。今朝、洗濯物を干したし……。

 五十年前の建物だから、浴槽は小さくお湯に浸かる際は体育座りをしないといけない旧式タイプだ。しかし、このレトロな雰囲気が逆に田舎育ちの花には落ち着ける。

 えっ、なにこれ……。

 花は、大きな目をさらに丸くした。

 今朝、シャンプーしたあと、前の晩に手洗いしたショーツとブラ、タオルといった洗濯物を浴室のポールハンガーに干して大学に出かけた。本当は外のテラスに天日干ししたほうが早く乾くし、紫外線の殺菌効果やオゾンによる消臭効果も期待できて良い。だが、このアパートに入居した昨年十二月、隣人の美穂子さんから「下着は外に干すと盗まれるから、室内干しにしたほうがいいわよ」と忠告を受けた。以来、下着類は必ず室内に干すことを心掛けているのだが――。

 「これは……」

 頭が真っ白になった。

 しばらくその場に立ち尽くしていた花は、慎一郎さんに連絡しよう! とリビング兼寝室の八畳間に取って返した。

 リュックから携帯電話を取り出したものの、指が震えてうまく操作できない。

 ――私の留守中、誰かがこの部屋に忍び込んだ。間違いない。

 電話を耳に当てながら室内をぐるっと歩いて確認した花は、首を傾げた。

 ――おかしい。誰かが侵入したにしては、窓は全部、内側からロックされている……。どういうこと……?

 「……まただ」

 携帯電話を耳から離した花は、舌打ちしそうになった。

 ディスプレイに浮かぶ「圏外」マークが、今夜ほど忌ま忌ましく思えたことはなかった。

 ここ最近、アパートから夜間、誰かに連絡しようとすると、決まって電波状況が「圏外」になっている。電話の調子がおかしいのだろうか。

 ――外で試してみよう。

 そう思うや、サンダルを突っかけて玄関ドアを開けた。

 「キャッ!」

 まさかドアの前に人がいるとは、思いもよらなかった。

 花が反射的にドアを閉じるのと相前後して、外から「ううっ……」とうめき声が聞こえてきた。

 花は恐る恐るドアスコープに目を近づける――。

 

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