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2015.11.25

第13回

〈ニューヨーク〉「SEX & THE CITY」が言えなくて(後)

ワクサカソウヘイ

〈ニューヨーク〉「SEX & THE CITY」が言えなくて(後)

現在、コラムニストとしてだけではなく、コント作家、脚本家、舞台のプロデューサーなど、多方面で活躍中のワクサカソウヘイさん。

そのワクサカさんの新刊『男だけど、』が、とにかく笑える、共感できると好評発売中です。刊行を記念して、本の読みどころを一部ご紹介します。

第13回は、真冬のニューヨーク。紙おむつを穿いて待ち続ける、タイムズスクエアでのカウントダウン・後編。
満員電車状態の人混みの中、およそ10時間待ってでも経験したかったこととは――。

 

*  *  *

このように、性にまつわる案件について僕がどうしても奥手になってしまうのは、他ならぬ“女の子ちゃん”のしわざだと思っている。
“女の子ちゃん”が、性的なものに対しての嫌悪感や抵抗感を表明しているのだ。

しかし、いつまでもこんな調子では、僕は恋というものに対して、ずっと空回りの状態で挑まなくてはならなくなってしまう。
たまにはドーンと、男らしく「キミをみた瞬間から恋に落ちたのさ。もちろん『みた』は『魅た』と書くのさ……」的な口説き文句のひとつでも言ってみろよ! なんてことを思う。
恋に関して“女の子ちゃん”と折り合いをつける、なにかのきっかけはないものか。

そんなことを思っていたある日のこと。
自分が作家および出演者として参加しているコントのカンパニーが、アメリカはニューヨークでライブを敢行することになった。日本でちまちまとコントをやっていても、どうにもパッとしないので、ここはひとつ景気づけにニューヨークでライブでも開催するか!という建前と、単純にみんなで海外旅行をしてみたいという本音とが入り混じったうえでの、決断だった。
時期は年末、真冬のニューヨークである。

「寒いんだろうなあ……言葉とか通じないんだろうなあ……」
初めてのアメリカ旅行を前にして、僕はとてもナーバスになっていた。
アメリカに対しては、他の国とは違う、一種の憧れのようなものをかねてから抱いていた。みんなスタバのタンブラーを手に持ち歩き、子どもたちはつまらなそうな顔で路上でレモネードを売り、学生たちは授業終了のチャイムと同時に「ヒャッホー!」と騒ぎ、パパ、こんどの日曜日にダンスパーティーがあるから車を借りてもいい? ああ、いいとも、お前は世界一の息子だ、HAHAHA、みたいな、映画の中のアメリカのイメージに僕は憧れていた。憧れているからこそ、初めてのアメリカ、それもニューヨークへの旅は僕を妙に緊張させていた。
そんな出発前、そのコントカンパニーのスタッフが、会議中にこんなことを漏らした。
「タイムズスクエアのニューイヤーカウントダウンって、年が明けた瞬間に、近くにいる人とキスをするらしいですよ」
え……? と、耳を疑った。
「それは、その、見知らぬ人同士が……?」
おそるおそる尋ねると、そのスタッフは
「ええ、たぶん」
とそっけなく答えた。

これだ。
次の瞬間、僕は確信めいたものを得た。
真冬のニューヨーク、新年の花火が摩天楼に上がる中、見知らぬアメリカ人女性と、最高のキス……。
これほどまでに大人の恋が、かつてあっただろうか?
これは絶対に、僕の女々しい恋愛体質を捨てる、よいきっかけになる!

このシチュエーションには、ちょうどよさがある。
男としてはなによりも「行きずりの相手とキス」という設定にドキドキ感を覚えるし、さらに「ニューヨークのカウントダウン」というオブラートがそれをマイルドに包んでいるので、“女の子ちゃん”も性的な抵抗を感じることは、ない。

いいじゃん! タイムズスクエアのカウントダウンでキス、すごくいいじゃん! 恋に関して“女の子ちゃん”と折り合いをつける、いいきっかけじゃん!
大人のキスだ。大人の恋だ。ニューヨークで、大人のキスをして、大人の恋をしよう。女々しい恋は、ニューヨークの下水道に捨ててこよう。そうだ、そうしよう!

こうして僕は、わりとしょうもない下心を密輸しながら、機上の人となった。

 

 

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