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2012.08.01

連載エッセイ74

食マンガの現在
『酒のほそ道』
『めしばな刑事 タチバナ』
『そばもん』他

中条 省平

食マンガの現在<br />『酒のほそ道』<br />『めしばな刑事 タチバナ』<br />『そばもん』他

  手塚治虫文化賞は今年で16回目を迎えましたが、他の有力なマンガ賞である小学館漫画賞や講談社漫画賞と比べると、歴史の浅さは否めません。講談社漫画賞は1977年から始まって今年で36回を数えますし、小学館漫画賞に至っては、授賞部門の設定に紆余曲折はあったものの、1955年以来57回に及んでいます。
 しかし、手塚治虫文化賞がそれら先行するマンガ賞と異なるのは、主催者が出版社ではなく、新聞社(朝日新聞)だということです。講談社漫画賞や小学館漫画賞では、受賞作品の一覧を見れば賞に名を冠した出版社の作品が圧倒的に多いのにたいして、手塚賞の場合は、マンガを主な事業とする出版社がプロモーションとして自社作品に力を入れるという根回し(暗黙の推挙)がいっさいなく、賞の公明正大な中立性という点で、より信用できるものといえるでしょう。
 手塚治虫文化賞のもうひとつの特色は、小学館漫画賞および講談社漫画賞が、児童、少年、少女、一般向けという4つの部門に分かれているのに比して、マンガ大賞、新生賞、短編賞という独自の部門を設けていることです。「マンガ大賞」は年間のベストワン、「新生賞」は新人賞ということですが、面白いのは「短編賞」です。「短編」とはいうものの、この部門の歴代受賞者は、マンガのジャンルのなかでも等閑視されがちな、4コマものなどユーモア・ギャグマンガの作者が多いからです。
 いしいひさいち、秋月りす、西原理恵子、伊藤理佐、森下裕美、中村光、ヤマザキマリ、山科けいすけといった受賞者たちの名前を見ているだけで、なんとなくニッコリしたくなるような、ユニークな人選です。なかでも、今年選ばれたラズウェル細木は、昨年の山科けいすけと並んで、ここで選ばれなかったら、一生、賞と名のつくものとは無縁だったのではないかと思うようなタイプの娯楽マンガ家で、ラズウェルファンの私としては大いに喜びたいと思います。
 かつて私は東京・板橋区の大山というところに住んでいました。ここはパチンコ店と居酒屋の密集率が異常に高い土地で、そんな場所柄のせいか、私の住まいにいちばん近いコンビニでは、ラズウェル細木の『酒のほそ道』(日本文芸社)の新刊が出るたびに店頭のマンガ本コーナーに並ぶのでした。そんなわけで、『酒のほそ道』は、わざわざ本屋で買わなくても自然と全巻読めていたのですが、6年前に大山から池袋に引っ越ししてからは、近くのコンビニが『酒のほそ道』を置かないため、なんとなく読まなくなっていました。今回、手塚賞にノミネートされたのを機にあらためて読み直したのですが、なんと! 31巻にも達する大河作品になっていました。
 居酒屋の〈食〉の話題だけでこれほど長く続くということが驚異ですが、『酒のほそ道』は日本ならではの四季おりおりの味覚をうまく取りあげており、どこか俳諧の季語にも通じる、月並みだが安定した、そして、どこか可笑しみと哀れを同時に醸しだすような感覚に満ちています。

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