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2015.11.16

スペシャル対談 誉田哲也×瀧井朝世 後篇

道を踏み外した人間は、
人生をどうやり直していくか。

誉田 哲也/瀧井 朝世

道を踏み外した人間は、<br />人生をどうやり直していくか。<br />

9月19日、渋谷にて大盛況のうちに終わった『プラージュ』出版記念トークショー&ライブ。前篇では、誉田哲也さんが作家になる以前に結成したバンドや重版ごとに購入するギターのお話、そしてこの小説の舞台であるシェアハウスが実際にご自宅の近所に出来たエピソードについて語っていただきました。
対談の後篇は、『プラージュ』のテーマの一つでもある日本の刑罰制度について、そして、人気シリーズを幾つも抱える誉田さんの創作の裏側やについて語り尽くします。

●誉田哲也がお手本にした作家とは?
 

瀧井朝世 視点の切り替えをすごく意識されていて、テンポが良いというのが、誉田さんがとても得意とされるところですよね。

誉田哲也 ありがとうございます。僕が視点というものをすごく意識しはじめたのは、
逢坂剛さんがきっかけなんです。
逢坂さんがとある文庫のあとがきに、視点というのはぶらしちゃいけない、と書いておられて、プロっていうのはこんなことを意識して書いているのか、これは真似しなきゃいけないな、と思ってやり始めたので、僕がこういう書き方をしている一番大きな影響は逢坂剛さんですね。

瀧井 今回も貴生をはじめ、男性・女性といろんな視点が混ざってきますけれども、その中で気に入っているキャラクターはいますか?

誉田 実際に身の回りにいたらその人が好きかどうか、というのとは違いますが、紫織さんと美羽ちゃんは割と好きですね。

瀧井 シェアハウスの住人ですね。

誉田 シェアハウスには女性が3人いて、その中で潤子さんだけを挙げないのは申し訳ないような気もしますけど。

瀧井 潤子さんはオーナーですよね。

誉田 潤子さんは良い人だとは思うんですけれど。
 美羽ちゃんって、ものすごく困った子ではあるんだけど、普通の人がわりと疑問に思わないようなことをきちんと、というか彼女は本気でそれを疑問に思っているので、いちいち「どうしてなの」「なんでなの」と問うんです。それにぱっと答えられる人も、あんまりいないと思うんですよね。そういう疑問をいちいち挙げるところが好きでもあるし、僕にもそういうところはきっとあると思って。

瀧井 美羽ちゃんはまだ20歳ですが、彼女もある事情があってシェアハウスにいます。割と社会のルールをそのまま信じるのではなく、「なんでだろう」「どうしてだろう」と思うようなタイプ。それ故にいろんな過去を背負ってしまったという。

誉田なんでだろうってずっと疑問に思わなかったことを、ある日不意にネットで調べてみたりすることってありませんか? 
ちょっと固い話になっちゃうんですけれども、消費税って、大体みんなが消費者なんですから、嫌だし、反対するじゃないですか。なのに、経団連の会長は消費税を上げましょうって言っている。それはなんでだろうな? というのをものすごく疑問に思って調べてみたんです。割とすぐ答えに行き着いたんですけれど、そういうのをあまりみんな考えないということが、僕は嫌なので。その話は面白いと思ったので、とある作品に盛り込みました。社会の嫌な部分を見たような気がしたので

●最初のタイトルは、「カーテン」でした。

瀧井 『幸せの条件』もそうですけれど、現実問題で感じたことを小説に落とし込むことが多くありますか? 

誉田 そうですね。自分が疑問に思うことが先なのかな。疑問に思って、何か調べたり考えたりして、答えに行き着いて、別につまんなかったらそれはそれでいいんです。でも『これって一言でこう言えたらいいんじゃないかな』って思うとじゃあ作品にしてみよう、という風になることは多いですね。

瀧井 白か黒か、はっきりといいのか悪いのか決め付けられない、揺らいでいるところを掬い取る、というような感じですね。

誉田 それが揺れていることすら気づかれていないことも色々あると思うので、『いいんだよ、揺れてて』って言えればそれはそれでいいかなと思う。

瀧井 そういうところから、今回のこの「プラージュ」というタイトルが生まれたのかなと思いました。「プラージュ」というのは作中ではシェアハウスの名前ですが、フランス語で海辺、波打ち際という意味がありますよね。

誉田 作中のシェアハウスでは、一人一人の部屋にドアがないんですよ。カーテンしかない。いろんな揺れるものっていうのは作中にモチーフとして出てくるんですけれども。だから最初は『カーテン』というタイトルで連載していたんです。そしたら書き上がる前に、だんだんカーテンじゃないなと思い始めてきて、途中で「すみません、カーテンじゃなくて、プラージュにしたいです」と言ってタイトルを変更した。そういうことはあんまりないんですけどね、僕の場合。

瀧井 プラージュという言葉自体は、最初から誉田さんの中に強い印象としてありましたか?

誉田 お店の名前としては出てきていたので、そっちの方が登場回数も多いですし、語感もいい。意味もあるので、作品のタイトルとしていいかなと思って。

瀧井 後半はプラージュについての確信的な言葉も入ってきますけれども、前半の時はプラージュ自体に色々な意味合いは抱いていなかったのですか?

誉田 そうかもしれないですね。最初にある程度のことを決めていても、全部が全部決めて書いているわけではないので。途中で決まってくる部分もありますし。だからなんかね、予言の書みたいな感じです。

瀧井 予言の自己成就のような。

誉田 そうです。「何月何日 誰かが死ぬ」、と予定に書いてあって、そこまで書き進めれば死ぬんですけど、どういう風に死ぬのかは分からないし、交通事故にしてもダンプに轢かれるのか、バイクで跳ね飛ばされるのかはわからないので、そういう余白も残しつつ。でも編集さんから他の作家さんの話を聞くと、僕は最初に割と考えていて、事前の準備が多いほうみたいです。

 

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