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2015.10.24

第二十二回

単車乗りてぇ

小嶋 陽太郎

単車乗りてぇ

 近所のリサイクルショップで金の横須賀ジャンパー、いわゆる金のスカジャンを発見した。光っている。なんだ、このクソダセえ服は……。レジに持っていき、木下優樹菜みたいな外見の女店員に千円札を三枚乱暴に叩きつけ、かすかに血の味のするツバをペッと吐いて家に持ち帰った(誇張アリ)。
 スカジャンは、男なら誰しも一度は着てみたいと思ったことのある服ランキングの一位に君臨し続けるアイテムである。同時に、着てみたいけど勇気が出なくて購入に踏み切れない服ランキングの一位に君臨し続けるアイテムでもある(ともに僕調べ)。
 スカジャンを着ている人はあまり見かけない。たぶん、たくさんいるにはいるんだろうけど、数ある服の中からわざわざスカジャンを選んで着る人間は、全体から見れば少ないのだ。
 光っていて、胸や背中に龍とか虎の刺繍が入っているあのスタイルは、かっこいいような気もするし、とてつもなくダサい気もする。それがまた魅力的である。
 ともかく僕は金のスカジャンを買った。どこへ行けば買えるのかもわからないし、わざわざ調べて探しに行くほどの情熱はないので、たぶん一生着ることはないだろうなあと思っていたところ突然目の前に現れたのだから、買わないわけにはいかなかった。
  まず、スカジャンどうのこうの関係なく、金だからダサい。君たちは金の服を着た人を見たことがあるか? 僕はない。C-3POくらいしかない。
一部にアクセントとして金が入っているのではなくて、ほとんど全部が金なのだ。袖の切り替え部分以外、全部金。たぶんC-3POの次に金だ。まぶしい。
 さっそく袖を通し、姿見に自分を映してみた。
 なんだこいつ、ダセえ……。それに違和感――着用者本体とのギャップがすごい。
 ふだんチェックのシャツなどを着ている人間がいきなりスカジャン、しかも金色を着れば、そうなるのは当たり前である。『クローズ』的な世界にバックボーンを持つやつか、そうでないとしたら、せめてオダギリジョーみたいな顔をしたやつしかそれを着ることは許されないのだ。
 でも、その日から僕はその金のスカジャンに愛着を持ち、かなりの頻度で着るようになった。マックに行くとき、ココスに行くとき、スタバに行くとき、タリーズに行くとき、コメダ珈琲に行くとき……。(コメダ珈琲にいちばん似合う気がする)
 ぱっと見にはまじでダサいと思ったのだが、一周回って(という便利な言葉が世の中にはあるのだ)いかす、という結論に自分の気持ちを持っていくことで、どうにかそれを実現した。
 服というのは不思議なもので、繰り返し同じ人間に着られていくうちに、その着用者に歩調を合わせ、自らなじんでいくような性質を持っている。と僕は思っている。
 その甲斐あってか、最近は金のスカジャンを着ている自分、というものに対してそこまで違和感を覚えなくなってきた(俗に言う『見慣れる』という感覚的現象にも言い換えられる)。
 もしくは僕がスカジャンのほうに歩調を合わせ、キャラクターをスカジャン寄りに変えていっているのかもしれない――そういえば最近、「目が合ったやつを片端から蹴り飛ばしたいなあ」と思うことが多いし、「単車乗りてぇ」が急に口癖になったけど、そうか、そういうことか。

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