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2012.11.01

連載エッセイ77

大友克洋も降参した!? 
クレシーの最新翻訳2作品
『レオン・ラ・カム』『サルヴァトール』

中条 省平

大友克洋も降参した!? <br />クレシーの最新翻訳2作品<br />『レオン・ラ・カム』『サルヴァトール』

  日本を代表するマンガ家、大友克洋は、アニメ作家として『AKIRA』(1988)と『スチームボーイ』(2004)というふたつの長編作品で有名ですが、私は個人的に大友アニメの最高傑作は、この2作のあいだに作られた「大砲の街」という短編だと思っています。この作品は大友克洋の原案をアニメ化した3編からなるオムニバス映画『 MEMORIES』(1995)のなかの1編で、ほかの2作品は別の監督が演出しているのですが、「大砲の街」だけは、大友克洋が監督を(原案・脚本・美術も)担当しています。

 舞台は中欧あたりと思しき、レトロな雰囲気のある近未来の独裁国家で、ひとつの都市全体が巨大な砲台のための城塞として建設され、そこで国民たちは日夜、軍事労働に駆りたてられています。そんな町に暮らし、軍国主義の学校に通う少年の一日を淡々と描いた作品です。見どころは、少年が起床してから学校へ行き帰宅してふたたび床に就くまでの時間をワンカットで描いているところです。

 厳密にいうと、完全にひとつながりのカットではなく、イメージの類似性を利用してひとつのカットから異なるカットに移行する場面が数か所あります。しかし、きわめて巧みにアナロジカルな処理を施されているので、じつに流麗なカメラワークによって、一日の時間の流れ、一日の空間の動きがワンカットで描きだされているように見えます。ヒッチコックが『ロープ』でおこなった実写によるワンカットの実験を、もっとずっと繊細に、優美に、アニメで実現したフィルムとしていつまでも記憶に残る傑作です。

 ところで、数年前「大砲の街」をDVDで見直して驚いたのは、この映画の雰囲気が、フランスのアニメ監督、シルヴァン・ショメの作品にとてもよく似ていることでした。ところが、ショメのアニメが世界的に知られたのは、短編「老婦人とハト」(1996年製作)がアヌシーのアニメ映画祭でグランプリを受賞し、また、アカデミー賞の最優秀短編アニメ部門にノミネートされてからです。ましてや、高畑勲はじめ多くの評者から絶賛されたショメの初長編『ベルヴィル・ランデブー』が日本公開されたのは2004年のことです。したがって、1995年に公開された『MEMORIES』の「大砲の街」がシルヴァン・ショメの影響を受けることは不可能なのです。しかし、この類似がどうしても頭に引っかかっていた私は、大友克洋に直接インタビューするチャンスを得たとき(「芸術新潮」2012年4月号)、思いきってその感想をぶつけてみました。すると、思いがけぬ答えが返ってきました。

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