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2015.10.14

第3回:第1章-6

死について、リアルに感じる機会をもらえたこと。

K

死について、リアルに感じる機会をもらえたこと。

兵役とはどんなものなのか。自身の641日間の兵役経験を基に綴られた韓国人ミュージシャンKさんの初の著書『幸せを数える。』から、軍隊に入った一人の青年が何を感じ、何を考えたかを、全7回のダイジェストでお届けします。

今回は訓練所に入ってすぐに感じさせられた、生と死について。

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プレゼント応募期間は終了しました。多数のご応募、ありがとうございました。


*  *  *

 訓練所に入ってすぐに、認識票が配られた。ドッグタグとも呼ばれるネームプレートだ。ペンダントになっていて、首からぶら下げなければならない。

「1173400**** カン・ユンソン A型 陸軍」と刻印されたプレートが2枚ついていた。カン・ユンソンは僕の本名だ。

 これを渡されたとき、「なぜ2枚あるかわかるか?」と上官が話し始めた。

 戦地で死亡者が出たとき、1枚を仲間が持ち帰り、もう1枚は死者のあごの中に押し込んでおく。そうしておけば、死体が燃えてしまってもこの認識票は焼けずに残るから、戦死兵を認識できるという話だった。

「戦地」「死」「死体」「戦死」

 上官から発せられる言葉によって、手の中にある認識票の重さがズシリと増していく。死をリアルに実感した瞬間だった。

 軍隊の中で、最も重要なことは何か?

 それは暗号だ。

 味方と敵を見分ける術すべ。

 訓練期間中から、深夜のパトロールの任務に就く。

 冬だったら、外回りのとき、通常の靴下の上から、さらに厚い防寒用の靴下をはき、コートを着て、その上から湯たんぽ代わりに、お湯の入った水筒を腰に巻いて出かける。

 このとき、必ず確認しておかなければいけないことがある。

 暗号だ。

 見回りをする際は、見張り番として立っている人間同士で、暗号を言い合う。

「88番 カン・ユンソン。今日の暗号は?」と問われたときに、すかさず答えなければならない。このとき、低く攻撃的な声を発しなくちゃいけない。3度問いかけて答えが出てこなければ、「撃ちます」と言って、即座に発砲するように僕らは教育されている。

 暗号は毎日決まった時間に変わり、師団にいる兵士たちに告げられる。それも公に発表するわけでなく、秘ひ密みつ裡りに行われる。ある場所に表示された暗号が、順次伝達されていく。これをどこかに書き記すことは許されず、頭の中で覚える。

 緊急時に最初に行うのは、表示された暗号を消すことだとも教えられた。

 暗号の多くは、たとえば「ラーメン」と言えば「魚」と答える……というように名詞だったりするけれど、そのふたつには関連性がまったくないし、毎日変わるから混乱しそうだ。けれど、暗号が言えなければ命を失うという危機感と緊張感があるせいか、「暗号が言えない」という事態は聞いたことがなかった。

 今まで、こんなふうに死を感じたことはなかった。国を守るということは、死も近くにあるのだ。僕らは軍での生活を重ねながら、身をもって知っていくことになる。


*  *  *

次回は「第1話-9 愛する人たちを守るために戦うことの意味を知れたこと。」を10月17日(土)に公開します。お楽しみに!

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