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2015.11.12

誉田哲也氏スペシャルインタビュー

「罪を償った人たちが
 社会に戻っていくために」

「罪を償った人たちが<br /> 社会に戻っていくために」

この秋、話題のミステリー『プラージュ』。誉田哲也さんが新作の舞台に選んだのは、厄介者たちが集まるシェアハウスでした。ひとりひとりの住人たちが、かつて罪に問われた過去があることが明らかにされるこの物語は、どのようにして生まれたのでしょうか。
(インタビュー・文 タカザワケンジ)

 

●日本の犯罪者更生システムは機能しているのか?

「プラージュ」という言葉の響きは甘く、フランスの恋愛小説を思わせる。

しかし、書き手は、警察小説『ストロベリーナイト』シリーズから、青春小説『武士道』シリーズまで幅広い作品を書いている誉田哲也。当然、読者の予想を裏切ってくる。

「どんな小説ですか? と聞かれると『ざっくり言うとシェアハウスものかな』って答えるんです。でも、本質をまったく言い当ててない(笑)」

 たしかに舞台はシェアハウスである。しかし、テレビのリアリティ・ショーのような甘酸っぱいお話ではない(いや、別の意味での切なさはあるのだが)。

「価値観が揺らぐようなものを書きたいと思ったんです。『法と社会』とか、本当にタテマエ通りの関係になっているかなと思うキーワードを並べていって、どんな話にしようか考えました」

 主人公はたった一度の覚醒剤使用で逮捕され、いまは執行猶予中で求職中の貴生。火事でアパートを焼き出され、転がり込んだ先がシェアハウスだった。一階には天井の高いカフェがあり、住人も食事ができる。夜には地元の客がやってきてにぎやかな時間を過ごす。

「こんな食事のシーンを書きたいとか、天井にシーリング・ファンが回っていて、ギターを弾いている男性がいるとかをイメージして、こういうカフェになったんです。アメリカの映画を見ていて、日本でああいう店があればいいなって思っていたんですよ」

 住人やカフェの客たちとの交流を通じ、貴生が更生していくハート・ウォーミング・ストーリー。それだけでも十分に面白いのだが、それだけではない。住人のなかに、ある事件の真相を追う雑誌記者が潜入していることが明らかになり、ミステリの要素が加わる。しかも、やがて住人たち一人ひとりが、かつて罪に問われた過去があることが明らかになっていく。 「『法と社会』というキーワードに関係するんですけど、日本の犯罪者更生システムがあまりうまく機能していない。再犯率が高いし、罪を償って社会に戻ってきたはずの人たちが一般社会から受け入れてもらいづらいんですね」

 ●罰があるのは、許す前提があるから

  タイトルの「プラージュ」はフランス語で「海辺」。同時に、シェアハウス階下のカフェの店名でもある。

「罪を償った人たちが一般社会に戻っていくときの水際、波打ち際みたいな場所があったら、と思ったんです。前科があるっていうと、みんな同じレッテルを貼られて一緒に見えちゃうんですよね。でも、人それぞれ犯した罪も事情も違うだろうし、刑務所と社会の間に、波が打ち寄せる境界が必要だと思うんです。波が引き寄せられて刑務所に戻っちゃったらダメなんですけど(笑)。うまいこと陸に上がってきてくれたらいいなって」

 読者は新参者の貴生の視点で、罪を償って社会へ戻ってこようとしている人びとを見ていく。ほとんどの読者にとっては知らない世界だろう。

「僕自身もおそらく前科のある人たちと相対したら構えてしまうし、怖いと思ってしまう。でも、社会復帰したいと思っている人たちを絶対に拒否することはできないんですよ。罰があるということは許す前提があるからで、それが許されないなら、どんな罪でも死刑だって話ですからね」

 しかし、たとえば、「サイコパス」を疑われるような人物だったらどうなのか。シェアハウスの最年少、二十歳の美羽は十代の頃に、人を殺したことがあった。

「彼女の心のうちに耳を傾けなければ、彼女が悪で、殺された側が善。でも、彼女の内面を書くことで、本当にそうなのか、と疑うことができる。それが、小説の良さだと思うんです」

 シリーズ以外の作品は、いままで書いたことのない谷間を狙っていく、と誉田は言う。そして、未知の領域だからこそ不安を感じるとも。しかし、『プラージュ』は実は誉田の王道、ど真ん中の作品なのではないか。海(犯罪)と陸(日常)の境界で起こるドラマを描いたこの作品は、警察小説と青春小説を並行して書いてきた誉田だからこそ書けた作品だと思う。小説家、誉田哲也を語るうえで、必読の作品である。

(パピルスvol.62より転載)

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