ひとりでなくてはダメなんだ

 タクシーが止まったのは静かな路地の突き当たりにある小料理屋の前。運転手に「お釣は取っておいて」と言ったあとで、緊張ぎみの部下たちに「おう、ここはオレの店だ。今日は好きなだけ飲んでくれ」なんて言いながら、店へ入る。
 部下は「さすがコグマ部長の行きつけの店ですね〜、雰囲気いいですね」「わ、お通しが美味しい……」てな感じで盛り上がる。そこへしずじずと若女将(かなりの美人ね)登場。「コグマさん、いつもありがとうございます。お料理はいつものでよろしいですか?」とか言ってくれたら最高だ。おしぼり渡しながら目配せしたりして。
「部長、なんかあの女将さんといい雰囲気じゃないですか? えーアヤしい」「おいおい、そんなワケないだろう、ハッハッハ〜」
 ……と、ハイ、ここまですべて妄想。部下に好きなだけ飲んでもらうお金もなければ、そもそも付いてくる部下がいなかった。もちろんいい雰囲気の若女将なんていない。あ、どうしたんだろう。なんだか無性に泣きたくなってきた……。

 でも、ひとりでもいいんだ。いや、ひとりでなくてはダメなんだと思えるようになった。この本に会えたからだ。

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