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2015.10.08

『海に降る』ドラマ撮影現場潜入ルポ〈後編〉

灼熱の撮影現場でみせた女優・有村架純のプロ根性

朱野 帰子

灼熱の撮影現場でみせた女優・有村架純のプロ根性

「読後感が爽やか」「深海生物に会いたくなった」「秀逸な幻想文学」「元気になれるお仕事小説」――。2012年の発売以来、多くの読者を惹きつけた人気深海小説『海に降る』(朱野帰子・著)がこのたび文庫版になりました。有村架純主演での連続ドラマも放送決定!(WOWOWにて2015年10月10日よる10時~〈全6回〉放送予定)ここでは『海に降る』文庫版がさらに楽しく読める情報をお知らせします。

有村架純さん、井上芳雄さんら豪華俳優陣が出演するWOWOW「連続ドラマW 海に降る」の撮影現場に、原作小説『海に降る』著者である朱野帰子さんが潜入しました。その模様を朱野さん自身の手によるイラストとエッセイで紹介する記事の後編です。時期は夏真っ盛り、灼熱の撮影現場で朱野さんが見たものとは!?

前編はこちら
 

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絵:朱野帰子

 すぐに撮影が再開されるということで、眞美役の板谷由夏さんにあわただしく挨拶させていただいて、その後、山本剛義監督のうしろの席に座らせてもらった。
 山本監督は春に行われた〈しんかい6500〉の耐圧殻に自らカメラを持って乗りこみ、実際に深海に潜っている。WOWOW制作チームが勝ち取った潜航機会はたった一回。小説を書くだけなら想像で何度だって潜れるけれど、ドラマはそうはいかない。深海生物たちが快く出演してくれるかどうかだってわからない。映像を必ず撮って帰らねばならなかった監督のプレッシャーはいかほどのものだったろう、と屈強そうな首筋を眺めながら考えた。

 それにしても暑い。七月下旬だというのに、整備場には冷暖房がない。まったくの無風だ。それなのに有村さんも井上さんも汗ひとつかかずに、長袖の衣装のままで待機している。現場の準備ができれば、すっと立って演技に臨み、カットの声がかかると、また灼熱の待機場所へ戻る。ワンシーンを撮るためにそれが何度も繰り返される。それなのに、監督のうしろから覗きこんだモニターのなかで動き回る深雪や高峰からは、暑さが微塵も感じられなかった。
 さっきまで私と気さくに会話してくださった俳優さんたちも、今はもう「連続ドラマW 海に降る」の登場人物たちにしか見えない。シーンの最後で、若いパイロットたちに指示をくだす西岡徳馬さんからは、ベテラン司令の静かな気迫が発せられている。一瞬でドラマに引きこまれてしまう。

 お昼はスタッフの人たちと同じ、冷たいうどんを食べさせてもらった。美味しかった。しかし私とカオリンはもうバテバテだった。「午後もどうぞ」と言ってもらっていたのだが、残念ながらここでギブアップした。俳優さんやスタッフさんたちがどうやってあの集中力を維持しているのか。ふしぎでならない。うどんをすすりながら、カオリンと「私、絶世の美女に生まれ変わっても女優はできないと思う……」「私も……」と情けない会話をした。

 見学中、現場に来ていた若い脚本家の方と話すことができた。「先日、〈しんかい6500〉が航海に出るときも見に来たんです」と彼は言った。その航海はマリアナ海溝で調査をするためのもので、もちろんホンモノの研究のために行われる。当日の朝は大勢のJAMSTECの職員たちが岸壁に出て、〈しんかい6500〉を載せた支援母船〈よこすか〉の出港を見送ったという。そのときもカメラは回っていたそうだ。シーンのひとつとして撮影するために。現実と物語とが境目がわからないほど入り交じっていてくらくらした。

 後日知ったことだが、今回のドラマには、ホンモノの研究者さんたちが本人役で出演されているらしい。宇宙からは、「はやぶさ」ミッションにおいてプロジェクトマネージャーを務められたことでも有名なJAXAの川口淳一郎さん。深海からは、JAMSTECで深海・地殻内生物圏研究分野の分野長を務められている高井研さん。それを聞いて私は「本気なんだな」と思った。制作チームの方々も、調査船や研究施設、パイロットや研究者の方々のスケジュールをやりくりして、文字通り全面協力を果たしてくれたJAMSTECも、みんな本気で深海探査の最前線を描こうとしているのだなと。

 わくわくしながら撮影現場を後にした。タクシーを待っているとき、岸壁のむこうに巨大な入道雲がむくむくと立ちあがっているのが見えた。その下にひろがる深い海をしばらく眺めて、私の夏休みは終わったのだった。

 

小説でもドラマでも、登場人物たちがさまざまな思いを抱いて立つ岸壁。ここから多くの船が深海の謎を探るために旅立つ。

〈おまけ〉後日、ドラマの打ち上げでふるまわれた特製ケーキ。〈しんかい6500〉が精巧で見事!

 

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