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『男尊女卑という病』刊行記念インタビュー

2015.10.07 公開 ツイート

女が不思議に思う
男の7つのナゼ?【後編】 片田珠美

片田 そうですね。でも日本は比較的、母親への愛情というのが美化される傾向が強いかもしれません。たとえば、野口英世のような偉人が、留学先から帰国したときつきっきりで母親孝行をしたといった話は、感動的に受け入れられますよね。

——普通にいい話として聞いてしまいますね。

片田 世の中で成功していてマザコンで、という人はたくさんいますよ。その昔、知人の男性に「あなたってマザコンね」と言って、すごく怒られたことがありますけど、差別語じゃないんですよ。真実なんです。
 男性も女性も、その辺りをそろそろ否認しないで、男性はそういうものなんだ、と受け入れて、見つめ直して、そこから出発したほうが、新しくいい関係が築けていけると思いますけどね。

——なるほど……。男性をちょっと責める言葉のように思っていましたけれど、そうではないと。

片田 男性も女性もそう思っているからよくないわけです。じつは素晴らしいのよ、マザコンって(笑)。まずは「男性はみんなマザコン」という真実をきちんと受け入れることからスタートしたほうがいいですね。


6 男はなぜ、女性上司が苦手なのか?
——ではちょっと角度を変えまして。
 たとえば、母親と同じような年齢の女性でも、上司となると苦手という若い男性はけっこう多いのではないかと思うのですが。反対に、女性の場合は、「上司が男性だから苦手」と、性別を理由に苦手意識を持つ人は、あまりいないと思います。

片田 これは簡単です。やっぱり男性の場合は、女性一般に対しては常に優位に立っていたい、支配したい、という欲望がありますから。それが逆転された状況は、男性のプライドが許さない、それだけです。
 ただ、あれよね、本当に時々、本の中でも書きましたけど、エリート女性にありがちなことなんですけど、「女だからとバカにされないように」と肩に力が入りすぎている人もいますから、男性も女性もお互いが自分自身を振り返ってみる必要もあるでしょうね。

——確かに、女性のほうも、部下の男性にちょっと反論されると、「女だからってバカにしているんじゃないの?」とか被害者意識を持ってしまうことも、あるかもしれません。

片田 そういう意識を持ってしまうと、「あなたは私の指示通りにしたらいいのよ」とか相手に言ってしまって、違う意見や異論を挟ませないようになりがちなんですね。
 だからやっぱり、男性も女性も、自分の意識や行動をちょっとだけ振り返ってみることをおすすめします。だって、お互いに気持ちよく仕事をしたいという気持ちは同じわけですから。

 


7 男はなぜ、家事と育児は女性の仕事と思っているのか?
——お互いに気持ちよく暮らす、というのは本当にそうですね。最後のなぜ? の問題は、そこにもつながってくる話ですが、家事と育児についてです。
 もちろん、最近はイクメンという存在もとりあげられたりしていますし、かつての「男は外で働き、女は家で」という形は、共働きをしないとやっていけない現実もあって崩れています。
 それでも、男性の意識の中では「育児参加」などと言うように、ちょっと「参加」して満足しているような、やっぱり内心では、家事や育児は女の仕事、と思っている人が多いような気がするのですが、どうでしょうか。そういう意識の根底には、どういう理由があると先生は思われますか。

片田 きっとそういう人たちは、自分の親の世代が、男は外で働いて女は家にいるというのが圧倒的に多くて、それを見てるから、「育児や家事は女性がするもの」と、自然と刷り込まれてきた部分はあるでしょうね。

——刷り込まれて自然とそうなっている……確かにいそうですね。

片田 あとやっぱり誰でも面倒なことはやりたくないですよね。そういう中で、「女性より優位に立ちたい」という意識が強い男性なら、家事や育児は自分はやらなくてもいいんだ、という特権意識があるかもしれませんね。
 でも診察にくる男性たちを見ていると、本当にみなさん忙しくて、全般的に疲れてますよ。
 先日、診察にきた男性もそう。彼の奥様は、産休や育児休暇を長くとれて、復帰しても短時間勤務で夕方早めに帰れるそうなので、かなり恵まれているほうですけど、男性は仕事で夜23時とか24時に帰宅。その頃には奥さんも寝ていて、独りでご飯食べてお風呂入って寝て、翌朝早く出る。そうなると、家事や育児を手伝いたくても、手伝えないでしょう。

———確かにそうですね……。となると、男性が女性が、という話というより、社会の構造的な問題になってくる感じですね。男性が育休をとる、というのも、かなり勇気がいると思いますし、よっぽど理解ある会社じゃないと、席がなくなったりする可能性も高いですし。

 

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片田珠美 精神科医

広島県生まれ。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学び、DEA(専門研究課程修了証書)取得。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて犯罪心理や心の病の構造を分析。精神分析的視点から、社会の根底に潜む構造的な問題も探究している。主な著書に、『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)、『他人の意見を聞かない人』(角川新書)などがある。最新刊は『被害者のふりをせずにはいられない人』(青春新書)。

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