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2013.07.01

連載エッセイ85

ゾンビに噛まれる 
『ウォーキング・デッド』『アイアムアヒーロー』『Z』

中条 省平

ゾンビに噛まれる <br />『ウォーキング・デッド』『アイアムアヒーロー』『Z』

 2013年6月号の「新潮」で、よしもとばななと綿矢りさが「荒廃した世界を生きていくうえで、小説にできること」というタイトルで対談をしています。その冒頭の小見出しが「人生の基準はゾンビ」と題されており、ふたりの女性小説家はいきなりゾンビをめぐって意見交換をおこなっているのです。
 昨今、「ゾンビブーム」とでもいうべきものが映画やマンガ界で起こっているらしく、じっさい、今年の「ユリイカ」2月号は「ゾンビ──ブードゥー、ロメロからマンガ、ライトノベルまで」という妙に力のこもった特集を組んでいます。しかし、いまなぜゾンビなのか? ということがいまひとつ納得できなかったのですが、よしもと=綿矢対談を読んで、その理由が腑に落ちるような気がしました。今月はこの対談を導きの糸として、ゾンビマンガについて考えてみたいと思います。
「綿矢 私、ゾンビがすごい好きで、それも、よしもとさんのエッセイ『パイナツプリン』を読んだことがきっかけになっているんです。
 よしもと わあ、悪い影響申し訳ない(笑)。私もどうしてこんなにゾンビが中心になるんだろうと思うぐらいに好きなので。
 綿矢 あのエッセイで、ホラー映画『マンホールの中の人魚』やスティーヴン・キングを知って、そのあと、かなりマニアックに好きになりました」
 しかし、じつは『パイナツプリン』でよしもとばなな(当時、吉本ばなな)はほとんどゾンビに言及していません。せいぜい、ジョージ・A・ロメロ監督の「『ゾンビ』のようなものをいつか描くのが私の夢だ」として、「あの、人間関係の感じ、閉じ込められた感じ、巨大なスーパーマーケットや、人気のないその通路のしんとしたイメージ、曇っている天気の具合、こわさ、スリル、生と死のドラマ、色彩、向上心のあり方、人間の品格についての考え方、生命力によせる作者の信頼の強さ……等々が私の理想にぴったりと合ってい」ると語っただけです。ともあれ、綿矢りさはゾンビ好きになったわけです。
「綿矢 ただ怖いとかではなくて、ゾンビにしか表せないよさがあるなあ、って。
 よしもと 『ウォーキング・デッド』は見てますか? アメリカのTVドラマシリーズで、ゾンビしか出てこない[略]私はそれを見ていて、自分の人生の基準はやはりゾンビだとわかったんです」
『ウォーキング・デッド』はそもそもアメリカでヒットした大長篇マンガで、いまだ完結していません。よしもとばななが言及しているのは、そのかなり忠実なTVドラマ化なのです。このマンガが近頃の世界的なゾンビブームの発火点のひとつになっているのは間違いないところで、日本でもTVドラマが人気を博しただけでなく、原作マンガ(ロバート・カークマン作)の邦訳も、1冊3000円+税という高額な価格設定であるにもかかわらず、3巻目まで出ています(風間賢二訳、飛鳥新社)。

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