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2015.10.07

第3回

「本・人・旅」の掛け算で人生はもっと楽しくなる

出口 治明

「本・人・旅」の掛け算で人生はもっと楽しくなる

 60歳にして戦後初の独立系生保を開業した起業家であり、ビジネス界きっての読書家でもある、ライフネット生命株式会社代表取締役会長兼CEOの出口治明さん。
 その出口さんの新刊『人生を面白くする 本物の教養』が、好評発売中です。刊行を記念して、本の読みどころを5回にわたってご紹介する、「出口塾」を開講します。

 第3回は、出口さんの人生の道標となってきた「本・人・旅」のうち、「人」と「旅」について。まずは第5章「人に会う」からの抜粋です。

 ***

 本書では教養の源として「本・人・旅」という分け方をしていますが、大きな目でとらえれば、本も旅も人だと言えます。本を読むことは著者と対話をすることですし、旅は異なる場所に住む人を知ることです。つまり、すべては人です。

 古典を読めば過去の賢人と対話ができますから、本はどちらかと言えば時間軸です。旅は離れた場所に行くことですから空間軸です。「タテ」と「ヨコ」の思考法で言えば、本は「タテ」、旅は「ヨコ」ということになります。

 さて、人とのつき合い方についてですが、私は人とつき合う場合も本と同様、基本的には「面白いかどうか」で考えています。面白ければつき合えばいいし、面白くなければ近所づき合い程度で十分だと思います。人と会う時間も、本と同様、ワクワクしなければ互いに時間の無駄だからです。

 もっとも、近所づき合いは大切です。郊外に一軒家を買った場合、仮に隣近所がみんな好みのタイプでなかったとしても、ご近所ですから毎日のように顔を合わせます。顔を合わせれば「おはようございます」と挨拶するのが大人の常識というものです。無視して仮に喧嘩になったら、互いにそれだけ時間とエネルギーの無駄になります。ニッコリ笑って「こんにちは」と普通に接するべきです。

 ビジネス書では、人脈をテーマにした本が、よく売れるそうです。どうやって人脈を広げか、どのように有力者とのパイプをつなぐかなどを説いた本は、まず大きく外れることがなく、出版社の定番商品だといいます。でもちょっと待ってください。それは人間関係をどこまでも利害関係でしかとらえておらず、何とも世知辛い話ではありませんか。

 人間関係を人脈としか考えていない人は、そもそも自分もそのようにしか見られていないことに気づいているのでしょうか。利害でつながった関係は、所詮、利害が切れたらそれでお終(しま)いです。現役時代はお中元やお歳暮が山のように送られてきたのに、リタイアしたらまったくこなくなってあらためて寂しい思いを味わっている、といった類の話はいくらでもあります。

 しかし、そう語る人自身が、それまで人とそのようにしかつき合ってこなかったのではないでしょうか。

 日本人は情を大切にするとよく言われています。なのに、ビジネス上の人間関係となると、まるで人が変わったような趣になるのが不思議でなりません。どうして、もっと個人として、情でつき合わないのだろうかと、いつも思うのです。

 個人対個人のつき合いが下手なのは、日本人の生真面目さの裏返しかもしれません。つまり、「企業の一員」という役割を全うすることに熱心すぎて、個人としての自分を表に出すことが十分にできていない可能性があります。役割に対する一種の過剰適応です。

 ある世界企業の接客コンテストの世界一は日本人だそうです。ていねいで愛想のいい応対が評価されているのでしょう。それは素晴らしいことではありますが、冷めた言い方をすれば、世界一のホスピタリティと言っても、あくまでも「接客スタッフ」という役割を忠実に果たしているだけです。多くの航空会社のアテンダントは常に微笑みを絶やしませんが、それも営業用の微笑みです。

 立場が逆転して「客」になったとき、日本人は必要以上にかさにかかった態度を取る人が少なくありません。「お客さまは神様です」と言わんばかりに、「客」であれば何でも許されると勘違いしている人によく出会います。「客」という意識が強すぎるのです。

「客」であろうと「接客スタッフ」であろうと、本当は同じ人間同士だということを忘れてはいないでしょうか。「客」という立場、「接客スタッフ」という立場に過剰適応していないでしょうか。立場や役割ではなく、所詮人間は人間だという意識を、私たちはもう少し持つ必要があるように思います。

***

 ここでもキーワードは「面白い」。次ページでは、そんな出口さんが、旅の楽しみについて語ります。

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 『人生を面白くする 本物の教養』(出口治明)
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