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2015.09.09

第十九回

南の島からの手紙

小嶋 陽太郎

南の島からの手紙

 ハイサイ。
 僕はいま、沖縄の海を見ながらこれを書いています。
 沖縄の海はとてもきれいです。まるでかき氷のブルーハワイのようです。でも、沖縄の海をハワイにたとえるというのも、少し野暮かもしれませんね。
 沖縄には飛行機で来ました。高二以来の飛行機に少し緊張しましたが、無事に着陸したのでうれしく思います。
 僕たちは沖縄に着いて、まず居酒屋に入りました。
 僕たちというのは、僕とヨネクラの二人です。
 数日前、半年ぶりにヨネクラ(本連載にも一度くらいは登場しています。女にモテるために手相を鑑定する技術を習得したというベタな男です。あと背が高い)とご飯を食べる機会がありました。そこで提案されたのです。沖縄に行かないか? と。
 なんでも、ヨネクラははじめ、ほかの人間と沖縄旅行を楽しむつもりだったらしいのですが、なんやかんやと事情があってそのツレが行けなくなってしまった。飛行機の搭乗券のキャンセルもできない……そうだ! 代わりにコジマでも連れていくか、あいつ暇そうだし。という結論に落ち着いたらしいのです。誰が暇そうだって? まったく失礼なやつだ。でも、実際僕は暇なので、のこのこついて行きました。
 ちなみにヨネクラは成田国際空港へ向かう電車を待つ駅のホームで、
「伝説つくって帰ってこようぜ」
 というすこぶる頭のよくない人間が言いそうなことを言っていたので、僕は少し頭が痛くなりました。 
 最初に入った居酒屋では、ゴーヤチャンプルーを食べたり泡盛を飲んだりして、ひととおり沖縄らしいものを楽しみました。泡盛って、水やらシークワーサーやらで割って飲んだりもするんですね。驚きました。ブラックコーヒーで割るという、洒落た飲み方もあるみたいです。ストレートでぐびぐび飲むものなんだろうなと思っていた僕からすると、少し意外な気がしました。
 いくらか滞在しているあいだに、首里城だとかなんだとか、それなりに観光地は巡りましたが、そのへんは省きます。
 滞在二日目の夜、僕たちは国際通りという繁華街的な通りに宿をとって、その周辺で飲み歩いたのですが、一軒目の居酒屋を出たところにあるドブみたいな水路に僕が単独で落ちたことが印象的でした。そのまま二軒目に行ってもよかったんですが、膝から下が激烈に臭かったので一度ホテルに戻ってジーパンをコインランドリーに突っ込み、部屋着として持ってきていたトランクスみたいな短パンで再度、街に繰り出しました。靴も完全にアウトだったのでシャワーで洗って部屋に干しておき(葉っぱとか、黒い虫みたいなのがたくさん出てきた……)、代わりにホテルのスリッパを履いて出かけました。ちょっとルール違反かもしれないんですが、緊急事態だったので(というかあのドブ、落ちたことある人ならわかると思いますが、ほんとに臭いです)。
 気を取り直して、僕たちは民謡居酒屋みたいな店に入りました。ヨネクラが、「せっかく沖縄に来たんだから民謡とか聞きながら飲みたい」と言ったからです。
 現地の人が三線を弾きながら歌ってくれるのを聞きながらオリオンビールや泡盛を飲むという店です。歌を聞かせてくれたのは鳩間島という島出身の親子でした(たしか)。
 そのうち盛り上がってくると、お客さんのひとりが踊り出し、現地の人らしき隣のテーブルのおじさんに、何やってんだ、そこの若いの、踊れ、と言われて僕たちも踊り、女性の店員さんも踊り、最終的には店内にいた十数人全員で列になって汽車ポッポといったハッピーな空間になりました。
 一連の流れが終わって席に着くと、踊りの効果か、隣のおじさんとの距離もぐっと縮まったような感じがしました。
「僕たち昨日長野から来たんですけど、いつもこんな感じで飲んで踊って騒ぐんですか?」
「知らないよ、おれ沖縄の人間じゃないもん」
 ま、まじかよ。
 話を聞くと、隣にいたおじさんの集団は本州のどこぞの県から出張でやってきたサラリーマンだったらしいのです。さんざん踊っといて、沖縄人じゃねーのかよ。
 そのおじさんの集団は上機嫌な様子で、僕たちに刺身の盛り合わせを丸々一皿分けてくれましたが、ヨネクラは生魚が食えません。しかし好意でもらったものにまったく手をつけないというのも失礼な話なので、おそるおそるマグロを一枚だけ食べるヨネクラの様子に、僕は内心、ウケる、と思いました。結局僕がひとりで盛り合わせを食べましたが、最近のマイブームが刺身だったので、ちょうどよかった。
 オリオンビールと泡盛と踊りとドブの臭いとホテルのスリッパとともに、沖縄の夜は更けていきます。
 日が真ん中まで昇った空は青く、海も青いです。同じ日本なのに、違う国に来たような感じがして、なんだかとても不思議です。
 本当なら写真もつけて絵葉書にしたかったところですが、面倒なのでやめます。
 ところでハイサイとは、どういう意味だろう?
 まあいいや。
 僕はもう少し、ブルーハワイ色の海を眺めてから帰ることにします。
 ではみなさん、ハイサイ。

 

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