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2013.11.12

第1回

躁鬱の食卓

坂口 恭平

躁鬱の食卓

熊本に住む、作家、建築家、画家、ミュージシャンの坂口恭平さんは、自身が「躁鬱病」であることを表明しています。しかし、熊本の豊かな食材を堪能しつつも、病気との付き合いの大変さは、食風景にも表れているようです。


10月17日 夜/宮崎ハーブ鶏の丸焼き

夕食をヒロミさんが持ってきてくれたので、僕と妻フーと4歳の娘アオと0歳の息子ゲンと、フーの母ちゃんと6人で食べる。宮崎のハーブ鶏の丸焼き。天草の鶏の丸焼き専門店のもの。漢方も入ってる薬味につけて焼いていて、坂口家の好物なので、ヒロミさんがよく持ってきてくれる。

ヒロミさんというのは、僕がよく通っている料亭Kazokuの女将さんで、元々は現政府元内閣総理大臣細川護煕さんの家族の料理を作っていた細川藩古料理の伝承者でもある。現政府の総理はもう駄目だからって、今は新政府総理一家の食事を作ってくれている(笑)。胆の座った天草の女性である。

 

10月18日 昼/魚よしの寿司

魚よしで昼食をとる。100年以上の歴史を持つ熊本で一番美味しいと僕が思っている寿司屋は自宅から歩いて5分のところにある。大将が選んだ鯛が美味しい。常連アオのオーダーはいつも「赤身、河童、赤出汁」の3点セットである。大将は僕が勝手に提唱している態度経済論を理解してくれており、原稿がたくさん書けた日には0円で鮑と縞鰺を握ってくれる素晴らしい人。僕もいつか雁皮の和紙に青墨で鯛を描いて渡すことになっている。

 

10月19日 昼/阿蘇赤牛の焼肉 おやつ/自作バター

アオの幼稚園が休みなので、阿蘇へ。ミルク牧場で、動物と戯れ、牛さんの乳を自分で搾り、さらにはバターまで作った。夕方には、豚さんレースを観戦。阿蘇は湧き水がどこにでもあるので好き。

 

10月20日 昼/酒蔵まつり

僕が「雪烏(ゆきがらす)」と名付けている書斎がある130年前の元酒蔵・早川倉庫にて酒蔵まつりがあるというので、家族で行ってみる。昼間から、熊本にある7つの酒蔵の日本酒を飲みまくった。

 

10月21日 鬱一日目

僕は躁鬱病なんですが、この日から鬱になりました。鬱になると、御飯が全く食べれなくなるのです。一日、おにぎり一個とか、そうめんだけとか、そんな風になる。でも、それでいいのである。食べたくないときは食べない。終日ベッドで寝ては泣き、死にたいと言ってはフーに体をさすってもらったり。

 

10月22日 鬱二日目

同上。もう駄目だ。これ以上作品なんて書けないんだ、だからバイトを見つけなくてはいけない、と焦っているところを、フーに後ろから頭を叩かれる。

「鬱なんだから、血迷わず、寝てなさい。どうせ、躁に戻ったら、書きはじめるんだから」と諭された。

 

10月23日 鬱三日目

同上。今日もまじで死ぬかと思った。でも死なないことにしている。死にたいとは思っていいことにしている。終日ベッド。アオから早く鬱、治してくれない? 自転車乗りたいんだけど、とクレーム。

 

10月24日 鬱四日目

同上。もう諦めて、うだうだ言わず、ただ寝てた。それなのに、性欲はなくならない不思議。フーも首をかしげてた。死ぬかもしれないと体が感じてしまっているから、子孫を残そうとするのに必死なんだと説明した。夜、アウト×デラックスというフジテレビの番組でマツコ・デラックスさんの前で躁状態で喋る自分を鑑賞。このギャップはもうおれの武器なのだと勘違いすることで公共の電波からの威圧をさらりとかわわす。

 

10月25日 鬱五日目

鬱は治らず、体も動かず。先のことを考えると、涙が出てきた。

 

10月26日 鬱明け宣言 朝/太秋柿 昼/ざるうどん 夜/イタリアン

ところが、夜12時を越えて26日になると、突然、体が動いた。そこで、MacBook Airを開き、キーボードを叩く。ki-tu-i, ki-tsu-i,つまり、きつい、きつい、きつい、きついと書いていく。僕はまず感情をこうやって書き続けるところからリハビリする。つまり、鬱明けが近い、ということは新作が生まれる予感、ということで、そのまま、キーボードを打っていると、悩んでいた短編小説のラストの書き方と、前半戦との絡ませ方が天からようやく降りてきて、鬱明け宣言。朝5時まで猛烈に書きはじめる。熊本、いや世界一甘くて美味しい太秋柿をむく。昼はフーがジュエリー製作に忙しくて、僕とアオはベンチをテーブルにしてざるうどん。夜は、鬱明け乾杯ということで、熊本で一番美味しいイタリアンと思っているnini(お店の雰囲気もとてもよい)にてCAVAで乾杯。

ということで、鬱になったので、1週間以上になりましたが、食日記終わり。

今はとても元気です笑。。。。。 

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