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2015.09.18

第3回 『海に降る』原作者特別インタビュー・後編

有村架純主演 ドラマと小説の違いと本音

朱野 帰子

有村架純主演 ドラマと小説の違いと本音

「読後感が爽やか」「深海生物に会いたくなった」「秀逸な幻想文学」「元気になれるお仕事小説」――。2012年の発売以来、多くの読者を惹きつけた人気深海小説『海に降る』(朱野帰子・著)がこのたび文庫版になりました。有村架純主演での連続ドラマも放送決定!(WOWOWにて2015年10月10日よる10時~〈全6回〉放送予定)
 ここでは『海に降る』文庫版がさらに楽しく読める情報をお知らせします。

2015年10月より有村架純さん主演でドラマ化が決定し、再び注目を集めている小説『海に降る』。著者の朱野帰子さんに執筆当時の思い出や、文庫化・映像化にあたっての本音を語っていただくインタビューの最終回です。「原作とドラマで筋が変わるのは、原作者にとって嫌なのでは?」という質問に、朱野さんが思うこととは?

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――WOWOWでの連続ドラマ化(2015年10月スタート)やNHKラジオドラマ化(2012年秋、2015年夏に再放送)と、『海に降る』の世界は映像やラジオの世界に広がっていっています。そのことについては、どのような感想をお持ちですか?

朱野:自分の小説を、ラジオや映像の世界にしたいと思ってくれた人がいた、ということがまずはすごく嬉しいです。
 小説を書いた当時、私はほんとに無名でした。それにも関らず、JAMSTECの研究者やパイロットのみなさんは、ときには休日を返上してまで協力してくれました。「これでちゃんとした小説にならなかったらどうしよう……」というプレッシャーはいつも私の中にありました。ドラマ化されることになって、あちこちで「朱野さんおめでとう」と声をかけてもらえるんですけど、自分が嬉しいというよりは、協力してくれたみなさんに結果を返せた安心感のほうが大きかったです。
 それからもうひとつ、同じ世界を描くのでも、小説、ラジオ、ドラマで、それぞれやり方が違うのが面白いなと思っています。10月から放送になるテレビドラマは小説と少し筋が違うんですけど、その必然性も納得できますし、ラジオドラマの場合も物語の順序が入れ替わったりとオリジナルな部分がありました。それなのに、どの「海に降る」も描かれている世界にブレがない、というのが面白いです。
 深海の世界を描くのってすごく楽しいです。ラジオや映像の作り手の方々はみなさんそれぞれJAMSTECに行って、新たに取材を積み重ねてはいるのですが、出来上がったものを見ると、持ち帰ってきたドキドキワクワクはやっぱり同じなんですよね。子供のころに、ジュール・ヴェルヌの冒険小説や少年誌の科学漫画を読んで胸が熱くなった気持ちを誰もが覚えているというか……。そのロマンを作り手どうし、共有できたんじゃないかと思うと、「ね、そうだよね」と肩を組みたい気持ちになってしまいます(笑)
「原作と筋が違ってしまって朱野さんはいいんですか」と聞かれることがありますが、私はむしろいろんなバリエーションを見てみたいです。とくにテレビドラマは最新の深海探査事情に深く踏み込んで作られているようで、ほんとに楽しみです。深海探査の世界やそれを取り巻く政治や経済の状況が、どこまでが現実でどこまでがフィクションかがわからない感じになっているところが、今回のドラマの見どころだと思います。

――小説執筆後も深海のニュースはこまめに追っていらっしゃる朱野さんですが、深海にまつわるニュースで今注目しているものはありますか?

朱野:最近は深い海のさらに深いところ、海底下の探査について興味が出てきました。深海といえばだれもがまず奇異な形をした生物に興味を持つと思いますが、だんだん詳しくなってくると、熱水噴出孔だったり地殻だったり……つまり微生物や岩など、マニアックな分野に興味が深まっていくんです(笑)
 つい最近も、土星の衛星であるエンセラダスの地下海に、地球の深海底と同じように、今なお活動している熱水噴出環境があることが実験で証明されました。自分の生きている間に地球外生命が見つかるかもしれません。もしかしたらそれは10年以内かも……。

土星衛星エンセラダスの地下海に海底熱水活動!―生命生息可能環境を宇宙に発見―/東京大学大学院

ついに発見!? 地球外生命に挑む科学者たち/クローズアップ現代

 深海に潜れば潜るほど、地球という惑星の成り立ちに迫っていくことができるというのが面白いですよね。それはすなわち宇宙を知ることでもあります。ドラマ「海に降る」のキャッチコピーにも「深海の宇宙」とありますが、このキーワードは深海業界と深海マニアのあいだで今もっとも熱いです。現実世界でも、今後は深海と宇宙がセットになった探査が行われていくのではないでしょうか。
 もうひとつ、興味があるのが、なんといっても6000メートル以深の超深海です。まだまだ未知の領域があるみたいですよ。『海に降る』の小説やドラマにも登場しますが、次世代探査機「しんかい12000」の建造計画も始動しているようです。
 2012年に映画監督のジェームズ・キャメロンが世界で最も深い1万メートル超のチャレンジャー海淵に潜りましたが、その深さの深海を泳ぎ回って調べられる調査船は世界にはまだありません。『海底二万里』のノーチラス号の潜航能力が1万メートル。人類はまだその能力を手にしていないのです。中国が2016年までに造って運用を開始するといっていますが、日本も負けないでほしいです。「しんかい12000」の計画を、マニアのひとりとしてとても楽しみにしています

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

朱野:日常のストレスで呼吸が浅くなっている人や、普段科学に興味がないような人にこそ、ぜひ読んでほしいです。
深海探査の世界は、世知辛い日常からぱっと離れて、何億年、何十億年という壮大な時間が流れる世界に連れていってくれます。本を閉じたとき、自分の住んでいる世界が前よりもちょっとキラキラして見えたとしたら、それ以上に作者冥利につきることはありません。



次回の記事は9月23日(水)公開の予定です。
 

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