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2015.09.04

母上へ、まだ生きて居りました――
<戦地からの手紙>
第3回『君死に給ふことなかれ』

古川 薫

母上へ、まだ生きて居りました――<br /><戦地からの手紙> <br />第3回『君死に給ふことなかれ』

太平洋戦争末期、形勢不利の日本軍はなりふり構わぬ常軌を逸した作戦に打って出る。「菊水作戦」。世に言う特攻作戦である。これにより合わせて1800機とも言われる海軍機、陸軍機が特攻を実施し、3000名を超える若い兵士が海の藻屑と消えたのだった。
その作戦に並行し、終戦間際には「赤トンボ」と呼ばれた練習機までもが特攻作戦に駆り出されたことはあまり知られていない――。

戦時中、その赤トンボの整備士のもとへ、特攻隊員から匿名の手紙が届きます。本作「君死に給ふことなかれ」(古川薫著)はその手紙の差出人の消息を、戦後70年の時を経て捜し求めた実話を元に綴られました。
一通の手紙に寄せる思いが、70年の時を超えて、私たちに大切なことを語りかけます。


混乱極まる戦時下、命を掛けて戦いに向かう兵士たち。熾烈な現地から日本で待つ家族へ送られた手紙がたくさんありました。連載第3回目は作品より、ひとりの兵士から両親に送られた手紙を紹介します。

母上へ、まだ生きて居りました。
もう家では死んだと思つて居られるかも知れない。さうするとあきらめて居られるのに、また手紙など出して、御心配をかけるより、いつそ出さない方がよいかも知れない、などと思つて見ましたが、(以上のことはあまり本気で読まないで下さい)それでも不孝の様な気がするので、よい便があつたのを幸ひ書いてゐます。
いつか一週間に一度は便りをすると約束したことを思ひ起し、〝あんな広言を言わねばよかつた〟と後悔してゐます。
出さなかつた訳もあり、出せなかつた理由もあります。云はなくてもお察しして頂けると思ひます。
六月二十日と云へば田植の時期だつたと思ひます。お忙しい事でせう。
お祖母さんを初め皆んな(順序不同は生来の筆不精に依るもの)元気にてお暮しの事と思ひます。
玲子も清子も元気ですか。朗らかな娘に育ててやつて下さい。椙子も目出度く三年に進学したら奉仕作業に行つてゐることでせう。
今は此処に居ますが、どこに行くか解りません。
暖かい微風がそよ〳〵と吹いて、大きな芭蕉の葉が揺れてゐます。
親類にも近所にも御無沙汰ですからお会いになつたらよろしく。
呉れぐれもお体御大切に。
悟兄さんは如何ですか。しつかり養生して元通り御健康なお体になられる様、弘が云つたとお伝え下さい。  台湾○○基地にて


父上へ
天祐神助上にあり。
七度生れ変りてを期す。
祖母様御両親様の御健康をふや切なり。
兄上の御快癒一日も早からんことを。
妹達をよろしく。
武運目出度くば靖国の庭にて。

 

残された者の想いと散りゆく者の願い――
戦後70年、一通の手紙からその最後の特攻の「真実」が解き明かされる。その全容は、
古川薫著「君死に給ふことなかれ」をご覧下さい。

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