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2015.08.15

特攻に臨む兵士から届いた感謝の手紙
散りゆく者の願いとは――
第1回『君死に給ふことなかれ』

古川 薫

特攻に臨む兵士から届いた感謝の手紙<br />散りゆく者の願いとは―― <br />第1回『君死に給ふことなかれ』

太平洋戦争末期、形勢不利の日本軍はなりふり構わぬ常軌を逸した作戦に打って出る。「菊水作戦」。世に言う特攻作戦である。これにより合わせて1800機とも言われる海軍機、陸軍機が特攻を実施し、3000名を超える若い兵士が海の藻屑と消えたのだった。
その作戦に並行し、終戦間際には「赤トンボ」と呼ばれた練習機までもが特攻作戦に駆り出されたことはあまり知られていない――。

戦時中、その赤トンボの整備士のもとへ、特攻隊員から匿名の手紙が届きます。本作「君死に給ふことなかれ」(古川薫著)はその手紙の差出人の消息を、戦後70年の時を経て捜し求めた実話を元に綴られました。
一通の手紙に寄せる思いが、70年の時を超えて、私たちに大切なことを語りかけます。

 

連載第1回目は、本作のあらすじと、実際に届いたその手紙の内容を紹介します。

【あらすじ】飛行機好きの少年・深田隆平は念願叶って飛行機製作会社に奉職する。しかし戦況の悪化に伴う原材料不足で新しい飛行機を造ることは叶わず、もっぱら「赤トンボ」と呼ばれる練習機の整備に明け暮れた。ある日、自身も軍隊に召集されることになった隆平は、最後に修理した赤トンボの操縦室計器盤の下へ密かに自身の思いを刻みこんだ。
「栄光ノ赤トンボニ祝福ヲ。武運長久ヲ祈リツツ本機ヲ誠心整備ス。羽田工場技師補・深田隆平」
そんな彼のもとに見ず知らずの兵士から手紙が届く。それは、彼の整備した練習機で特攻に向かう兵士からのものだった。衝撃を受けた隆平。しかも乗り手は同年代の若者に違いない。手紙にはM・Kとイニシャルだけが添えられていた。

あれから70年の歳月が流れ、隆平はM・K氏の消息を尋ねる旅に出る。自らも空襲で許嫁を亡くすという辛い経験をした隆平が、ついに探り当てたM・K氏の素性、その美しくも悲しい青春賦とは……?

 

実際に届いたM・K氏からの手紙を以下に紹介します。

 

取り急ぎ一筆します。自分は今、台湾のある基地におります。間もなく九三中練で特攻出撃します。なつかしい赤トンボでの出撃とは思いもよらぬことでした。羅針儀下の貴方の一文を発見し、最後のお別れを告げたくなりました。深田さんが誠心整備された栄光の赤トンボを操縦して行きます。
 かなわぬまでもやれるだけの事はやってまいります。これは町の人にたのんで投函してもらった違法の手紙なので匿名にします。読後、焼き捨てて下さい。自分も消えます。貴方の未来に祝福を。その未来のなかに俺の時間も少しばかり入れてください。
 昭和二十年七月二十三日                          M・K
 深田隆平様

 

無謀ともいえる練習機での特攻の指令。散りゆく者として、残された者に託したかったわずかな願い――。その後、この赤トンボは数奇な運命を辿ることとなるのでした。

第2回の更新は、8月19日(水)予定です。「赤トンボ」の実際の戦闘風景を、アメリカ艦隊からの視点で綴った作品の一部を紹介いたします。

 

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