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2015.08.16

第4回

魚住監督インタビュー「どんな手を使ってでも勝たなければいけない戦い」

岡田 仁志

魚住監督インタビュー「どんな手を使ってでも勝たなければいけない戦い」

 決戦の開幕まで、およそ2週間。7月末にスペイン遠征を敢行して強化を図ったブラインドサッカー日本代表チームは、8月15~17日の強化合宿、さらに8月26~29日の直前合宿を経て、9月2日にいよいよ国立代々木競技場フットサルコートで本番を迎える。リオパラリンピックを目指すチームは、どこまで仕上がったのか。このアジア選手権で勝つために、残された短い時間で何をすべきなのか。2012年に就任して以来、代表チームを手塩にかけて育ててきた魚住稿監督に話を聞いた。



 

――スペイン遠征では、スペインのAチームとBチームに加えて、トルコ代表と3日間で6試合を行いました。いろいろなテストができたと思いますが、手応えはいかがですか。

 

昨年の世界選手権で、ベンチから戦況を見つめる魚住稿監督(右)。左は参謀役として監督を支える阿部良平コーチ。

魚住:非常に有意義な遠征になりました。スペインAとは2敗(0-1、0-2)、スペインBとは2勝(3-1、3-1)、トルコとは2引き分け(0-0、1-1)でしたが、どのチームもライバルのイランと似たところがあるので、参考になりましたね。世界選手権後から取り組んできた新しい攻撃の戦術がうまく機能して、ラインを上げて点を取りに行けば取れるという自信を得られました。攻撃のスイッチを入れたときに、敵陣でしっかりボールをキープできるようになりましたからね。ただスペインAとの2試合目では、点を取りに行ったところでカウンターから失点してしまいました。中盤の2人のポジショニングが少しでもズレると、ボールを失ったときに危険な状態になります。これは本番までに修正しなければいけません。

 

――世界選手権までは1-2-1のダイヤモンド陣形(※1)で守備を固め、攻撃は1人に任せるスタイルでした。しかし得点力を上げるために、いまはその陣形のまま押し上げて、攻撃に人数をかける形になっています。上げ下げのタイミングや各選手のポジショニングなど、ベンチからの指示も以前より難しくなったでしょうね。

魚住:監督はピッチを横から見て指示を出すので(※2)、選手と選手の高さ(前後)の距離感はわかるんですが、幅(左右)のズレがつかみにくいんですよ。それを50センチから1メートルぐらいの精度で修正しなければいけません。以前は2~3メートルのズレでも許容範囲でしたけど、いまは「左にもう一歩動け」と指示するレベル。とくに中盤の2人の位置をいかにうまく整えるかが、僕自身の課題だと思います。

 

――見えない状態でその精度のポジショニングが求められるようになったのは、驚くほどの進歩ですよね。2002年に日本でブラインドサッカーが始まった当初は、ピッチ全体(20m×40m)を敵陣の左右と自陣の左右に4分割して、各自がそのエリアを1人で担当するような感じだったそうですから。

 

魚住:数年前から、代表チームではピッチを4メートル四方ずつに50分割して「1-A」「3-C」といった具合に「番地」をつけています。でも、もはやそれでも足りくなってきましたね。4メートル四方だと、2ステップ分の幅がありますから。1ステップのズレを修正するには、もっと細かく区切らないといけない。

 

――選手たちには失礼ですが、正直なところ、4年前はそこまで代表チームが進歩するとは思っていませんでした。選手たちの平均年齢も高いので、ロンドンパラを目指した2011年のアジア選手権がピークだと思っていたんです。

 

魚住:そう思っていた関係者は多いでしょうね。2012年に代表監督に就任したときには、「どうして大変な役回りを引き受けたの?」と言われたこともあります。でも、日本代表は現在のチームがいちばん強い。もし過去の代表チームと対戦できたなら、間違いなくいまのチームが勝ちますよ。

 

――4年前に負けたときは、リオを目指すかどうか悩んでいた選手もいました。プロではないので、仕事や家庭との両立は大変ですよね。

 

魚住:みんな、仕事や家庭を少しずつ犠牲にしながら、すべてを懸けてやってくれています。彼らが背負っているものの大きさも、これまでにないぐらい重いですよね。それがあるからこそ、昔よりも強いチームになっているんじゃないでしょうか。

 

――監督が背負うものも重いでしょう。去年の世界選手権前とは気持ちも違いますよね?

魚住:全然違いますね。世界選手権は、自分たちで設定した「ベスト4」という目標への挑戦でした。「いまの自分たちがどこまで世界に通用するか」というチャレンジですから、達成できなくても何かを失うわけではなかったんです。

 

――実際、準々決勝で中国にPK戦で敗れてベスト4には進めなかったわけですが、誰もが立派な戦いだったと思っています。代表チームだけでなく、あの大会を通じて日本のブラインドサッカー界が得たのものもたくさんあったでしょう。

 

魚住:しかし今回のアジア選手権は、結果がすべて。生き死にが懸かっていると言ってもいいぐらいの戦いです。どんな手を使おうが、勝たなければいけない。そういう覚悟の強さは、世界選手権とはまるで違いますよ。もちろん世界選手権も必死で戦って、ベンチで声を出しているだけなのに4キロも体重が落ちましたけどね(笑)。大会後に学校に行ったら「先生どうしたんですか !?」と生徒にビックリされましたよ(※3)。今回はもっと痩せるんじゃないかな。

 

――大会直前の監督は、毎日どんなことを考えるんでしょう。夜は眠れてます?(笑)

 

魚住:おかげさまで、グッスリと(笑)。毎日毎日、対戦相手のビデオを見て研究したり、試合展開を頭の中でシミュレーションしたりしてますね。インドとマレーシアはあまり情報がないので細かいことまでは想像しませんが、中国、イラン、韓国との3試合については、相手の選手や戦い方をよく知っていますから、あらゆる試合展開を想定して采配の準備をしています。

 

――最後に端的な質問ですが、2位以内に入ってリオへの切符をつかむには、リーグ戦5試合でいくつの勝ち点が必要になるでしょう。

 

魚住:勝ち点11が最低ラインになると計算しています。3勝2分ですね。ただしその場合は得失点差の争いになる可能性が高いので、できれば勝ち点12が欲しい。この4年間で、選手たちはそれを取れるだけのポテンシャルを身につけました。必ずリオに行きますよ。



 

 魚住が監督に就任して以来、日本代表は多くの国際試合を通じて経験を積んできた。ちなみに彼がガイド(コーラー)兼コーチだった2008~2011年の国際試合は22試合、成績は5勝5分12敗。「魚住ジャパン」となった2012年以降は41試合とほぼ倍増し、13勝15分13敗の成績だ。2011年まではすべてが公式戦だったが、2012年以降は強化のための親善試合が増えた。公式戦にかぎれば、魚住監督は2敗しかしていない。  

 もちろんこれは、魚住監督の手腕と選手たちの努力に加えて、協会、スポンサー企業、サポーター、さらには選手の家族や職場などの関係者が、総力を挙げて代表の強化に取り組んできた結果でもある。就任以来、魚住監督が一貫して掲げてきた「総力戦」は、ここまで順調に進んできた。あとは大会本番で、その「総力」を最大限まで増強するだけだ。言うまでもなく、スタンドを埋めるあなたもこの「総力戦」の一部になる。販売中の入場券(※4)は、観戦チケットではなく「参戦チケット」だと言いたいぐらいだ。それを手に、魚住ジャパンを全力で後押ししてもらいたい。

 

※1 チームのシステムは、フィールドプレーヤー4人の布陣をDF-MF-FWの順で表す。FWが2人なら、1-1-2。

※2 監督はサイドフェンス外のベンチにいて、センターライン付近から指示を出す。ゴールラインから12mに引かれるガイドラインの内側が、指示を出せるエリア。ガイドラインの外側(それぞれのゴール前)はGKとガイドが指示できるエリア。

※3 魚住監督は都立高校の体育教員である。

※4 チケットのご購入はこちらで!→「アジア選手権2015チケットガイド

 

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