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2015.08.10

人生は無価値。戦争戦火戦闘を
恐れる理由はなかった
第1回『神聖喜劇 第一巻』

大西 巨人/のぞゑ のぶひさ/岩田 和博

人生は無価値。戦争戦火戦闘を<br />恐れる理由はなかった<br />第1回『神聖喜劇 第一巻』

 戦争という非日常が日常になった時、世の中はどんなふうに変わるのでしょうか。当時の空気、人々の価値観、そして徴兵制で集められ最前線にいくことを義務づけられた兵隊たちの日々の生活は……。
 社会と人間、軍の不条理を描いた日本文学の金字塔『神聖喜劇』(大西巨人・のぞゑのぶひさ・岩田和博)から、その一部を抜粋してご紹介します。
 連載第1回は、主人公の東堂太郎(とうどう・たろう)が入隊した心情を語る印象的なシーンから。閉塞された社会からの解放を、非日常の戦争に求めようとする渇望——。それはどの時代にもうっすらと流れていることなのかもしれません。

 


(あらすじ)
 対米英開戦から間のない一九四二(昭和十七)年一月。東堂太郎(とうどうたろう)をはじめとする補充兵役入隊兵百余名は、教育召集により、玄界灘(げんかいなだ)に浮かぶ島———対馬(つしま)の要塞重砲兵聯隊(ようさいじゅうほうへいれんたい)へと配属される。三カ月の教育期間が終了した時、彼らを待つものは満期除隊か、それとも引きつづいての臨時召集か。
 あれこれの僅(わず)かな予兆を探りながら一喜一憂する同年兵たちをよそに、暗い時代に追い詰められて虚無主義(ニヒリズム)を抱く若者・東堂は、「私は、この戦争に死すべきである」「一匹の犬となる」と思い定めていた。
 そんな東堂と対峙(たいじ)する内務班長・大前田(おおまえだ)軍曹、班附・神山(かみやま)上等兵ら上官たち。彼らの繰り出す不条理な強権と奇妙なほどの論理性とが共存する軍隊の現実は、東堂の諦観(ていかん)を少しずつ揺り動かしはじめる……。

 

 

 

 

 

第2回の更新は、8月20日(木)予定です。
次回は、日本社会の病理を言い表した上官のセリフ、「我が国の軍隊に“知りません”があらせられるか!“忘れました”だよ」が表明される重要なシーンです。

 

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