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2015.08.19

つぎつぎに 出でくる兵打ち 殺しつつ…
〈冷静さと虚しさと〉
第2回『兵隊万葉集』

早坂 隆

つぎつぎに 出でくる兵打ち 殺しつつ…<br />〈冷静さと虚しさと〉<br />第2回『兵隊万葉集』

戦地へ行った一兵卒たちが詠んだ短歌をひろい、紹介した『兵隊万葉集』(早坂隆著)。そこから一部を抜粋し、彼らの“生の声”をお届けします。
 今の私たちと同じ、普通の生活をしていた人々が、戦地で何を見、何を思ったか。「戦後の〈演出〉も〈デコレーション〉も存在しない。まったく無垢の裸の言葉」の数々に、私たちが感じることとは……。

 

 激しい戦闘が続く毎日。日本では現在、「先の大戦」と言うと、昭和一六年一二月に勃発した真珠湾攻撃以後の対米英戦のイメージが強い。しかし、既に昭和一二年に始まった中国との戦いの中で傷付き、倒れていった将兵の数も甚大である。そのことも、忘れてはいけない。対米英戦も、中国との戦争の延長線上に位置付けられる。

 第一一師団の歩兵第一二聯隊を中心とする天谷支隊(天谷旅団長が指揮)は、上陸後の一〇日間で、三四〇〇名が僅か九〇〇名になった。中国側の抵抗は、日本の予想を遥かに超えるものであった。

 そんな最前線での日々の中で、兵隊たちは自らの人間性をどう保とうとしたのだろうか。あるいは保てなかったのか。ある者は、つい先日まで隣にいた戦友のことに思いを馳せる。自らも死と対峙(たいじ)する一兵卒たちが残した、哀しき挽歌である。


青き葉を 小瓶にさして 立ててあり
      友のしかばねの 焼かるところ
                 

 ――篠原高三(『聖戦短歌集』S13・10)


をとつひに 手を握り合ひて 別れたる
        友の戦死を 今日聞く吾は


                  ――加藤正雄(『聖戦短歌集』S13・10)

 

 戦争は、両国の人々の命を無惨に奪っていく。対面する個人個人に恨みがあるわけではない。一人ひとりが「中国人が憎くてたまらない」からこの地に上陸してきたのではないのだ。志願兵もいたとは言え、その多くは徴兵制の仕組みの中で、家族や友人と別れ、銃をとっている者たちであった。

 また、志願兵の中にも、「食う為に」入隊した貧しい寒村出身者が少なくなかった。そこに戦争の底知れぬ虚しさがある。

 日本に国民皆兵の徴兵制が完成したのは明治二二年。その後、昭和二年の兵役法などを経ながら、近代国家としての兵力を急速に整えていった。

 通常(戦時には変わる)、満二〇歳を迎えた男子は徴兵検査を受け、新兵として入隊することになる。入隊後は二年間(海軍は三年間)、軍隊生活を送ることが義務とされた。

 また、除隊後の五年四カ月間(海軍は四年間)は予備役である。予備役とは、戦時になった場合に随時動員される者のことを指す。

 国民の義務として兵隊となり、心ならずも前線に送られた多くの兵たちは、人間社会のある一面が本質的に喜劇的であることを、時に驚くほど冷静に客観視しながら描写する。彼らの率直な心の流露は、現代に生きる私たちの耳目を驚かすに足りる。


火の街に 流るる血汐 なめている
      黒き小猫を 見て居たりけり
                  

――海野隆次(『聖戦短歌集』S13・10)


つぎつぎに いでくる兵射ち 殺しつつ
       何か寂しき 思ひありけり
                   

――甘楽竹史(『聖戦短歌集』S13・10)


屍は 避けむと思へ 疲れいて
     馬も踏みゆき 我も踏みゆく
                 

――石川清(『支那事変歌集〈戦地篇〉』S13)


敵軍の 少年兵が 死の際まで
     防ぎまもりたるは あはれなるかな
                  

――加藤正雄(『聖戦短歌集』S13・10)


(戦場掃除)
敵兵を 埋めしその手に 向日葵(ひまわり)を
     供ふる兵を 我は見つるも
                 

―ー池田勇(『傷痍軍人聖戦歌集』S14・1)

 

 

最終回の更新は、8月29日(土)予定です。

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