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2015.08.05

第2回

「君が代」の「君」は明らかに「天皇」のことである

辻田 真佐憲

「君が代」の「君」は明らかに「天皇」のことである

7月30日に発売された新書『ふしぎな君が代』。「君が代」は、国歌でありながら、その歴史や歌詞の意味がほぼ知られていない実に珍しい歌なのです。6つの謎から「君が代」の歴史に迫る新書をより深く楽しむための「あなたの知らない君が代」エピソードをお届けします。

 

江戸時代のラブソングという解釈

「君が代」はラブソングだ、という主張があります。「君」は「愛しいあなた」を意味し、「君が代」はその人の健康長寿を祈っている歌だというのです。こうした解釈はインターネットを中心に少なからず見られますが、果たして正しいものなのでしょうか?

 結論からいえば、それはほとんど間違いだと断言できます。以下、その理由を説明するとともに、「君が代」の本当の意味を考えてみましょう。

 

◯江戸時代までは多種多様な解釈があった

「君が代」の歌詞は、10世紀に成立した『古今和歌集』のなかにはじめて現れます。正確にいうと少し異なるのですが、オリジナルの和歌が1000年以上前のものであることは確かです。
 ただ、この和歌は「題知らず」「読人しらず」でした。つまり、作った人も、作られたシチュエーションも、すべてよくわからないのです。従って、「君」が誰を指すのかについて定説はありません。
 もっとも、それゆえに「君」には様々な人物が当てはめられました。
 例えば、江戸時代の将軍家では、「君=将軍」と解釈して、「将軍の治世が千代に八千代に永遠に続くように」という意味を込めて歌われました。一方で、「君」はときに「天皇」とも解釈されました。
 また、庶民の間では「君」を「愛しいあなた」と解釈したケースもありました。文禄・慶長年間に上方で流行した隆達節という流行歌がそれです。この場合「君が代」は、「愛しいあなたが千代に八千代に健やかに過ごされますように」という意味になりました。
 このように「君が代」の和歌はオリジナルの意味がわからないゆえに、様々な解釈がなされたのです。とすると、「ラブソング」という解釈にも一理あるということになるのでしょうか。

 

◯明治時代以降は「天皇」で統一

伊沢修二編『小学唱歌』(1892年、国立国会図書館蔵)の「君が代」。説明書きに「天皇陛下ノ万歳ヲ祝スルノ歌曲」とある。

 ところが、「君が代」は明治以降に「天皇万歳」の意味に統一されていきました。
 前回述べたように、「君が代」は1869年ころに国歌の歌詞として採用されました。このとき、歌詞を選んだ人物については諸説あります。ただ、選んだとされる人々はほとんど全員、「天皇万歳」の意味としてこの歌詞を選んだ、と述べています。つまり、「君=天皇」ということです。
 また、この「君が代」は1880年にメロディが改訂され、現在と同じものとなりました。この改訂に深く関わったドイツ人エッケルトは、その翌年にドイツ人向けの雑誌に「君が代」のドイツ語訳を掲載しています。そこでは「君」は「Kaiser」(皇帝)と訳されています。
 来日して間もない外国人が、自分で日本の古典をひもといて意味を解釈したとは考えられません。おそらく当時の政府関係者がエッケルトに解釈を示したはずです。つまり、「君が代」成立に関わった日本人たちもまた、「君=天皇」と理解していたということです。現に、その後の公文書や民間の歌集などでも「君」は天皇と説明されました。
 このような解釈はきわめて自然なものです。明治初頭、西洋列強は君主制の国ばかりでした。英国、ドイツ、オーストリア、イタリア、オランダ、ロシア。これらの国々では例外なく君主を讃える歌が国歌とされていました。それゆえ、日本で君主を讃える歌が国歌に採用されたのはきわめて妥当です。「ラブソング」を敢えて国歌にする理由はまったくありません。
「君が代」は、1937年に改訂された国定教科書で「国歌」と説明され、次のような現代語訳をつけられました。「我が天皇陛下のお治めになる此の御代は、千年も万年も、いや、いつまでもいつまでも続いてお栄えになるやうに」。もはや疑いようにもありません。和歌「君が代」は、明治時代以降に国歌として選ばれた時から「天皇万歳」の歌に変化したのです。

 

◯戦後も解釈は揺るがず

 太平洋戦争の敗戦後も、「君が代」の解釈は大きく変わりませんでした。敗戦直後、「君が代」を「民が代」に書き換えようという声もあがりましたが、これもまた「君=天皇」という解釈が定着していた証拠でしょう。
 1950年には天野貞祐文部大臣が、1987年には西崎清久同省初等中等教育局長が、それぞれ「君」は「象徴天皇」にあたると説明しました。また「国旗国歌法」が成立する1999年には、当時の小渕恵三内閣によって、「君」は「象徴天皇」と解釈するのが適当であるという見解が示されました。
 つまり、「主権者である天皇」から「象徴天皇」に変化したものの、「君」が天皇を指すという解釈は戦後も揺るがなかったのです。
 確かに、江戸時代以前に和歌「君が代」について「ラブソング」という解釈があったのは事実です。しかし、日本文学の研究者ならばともかく、多くの人々にとって和歌の「君が代」などほとんど関心もないはずです。なぜ「君が代」がこれほど話題になるのか。それは国歌の歌詞だからにほかなりません。
 それゆえ、我々にとっての「君が代」、すなわち国歌「君が代」の「君」は、天皇であると断言できます。少なくとも現在のあのメロディの「君が代」を考えるときは、「天皇を讃える歌」と理解したほうが適当でしょう。
(第3回は8月12日公開予定です)
 

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