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2005.02.01

第27回 レンタルビデオ・最後の聖戦

五十嵐 貴久

第27回 レンタルビデオ・最後の聖戦

 というわけで、いよいよベストテンの発表である。わたくしは何を一人で盛り上がっているのか。だいたいがこのように見た映画や読んだ本などを記録しておくというのは、そんなことまったくする必要がないという意味で、非常に孤独な作業であります。誰にも頼まれないのに、なぜ君はそのようなことをするのか。そこに山があるからなのか。いや、山などない。
 しかしにもかかわらず、わたくしは過去十数年、同じようなことを延々とひっそりと誰にも言わずに続けていたわけで、これがWebという形で他人の目に触れるというのは、嬉しいんだか怖いんだか。

[DATA]
マッチスティックメン MATCHSTICKMEN
監督:リドリー・スコット
製作総指揮:ロバート・ゼメキス
脚本:ニコラス・グリフィン
原作:エリック・ガルシア
出演:ニコラス・ケイジ、サム・ロックウェル、アリソン・ローマン、ブルース・マッギル、ブルース・アルトマン
2004年 アメリカ 116分

[STORY]
詐欺師のロイは極度の潔癖性だが、詐欺をしているときは潔癖性を忘れることができた。そんな彼のもとに、離婚した妻との間に生まれた娘アンジェラが現れる。突然娘と暮らすことになり困惑するロイに、アンジェラはさらに詐欺師の仕事をしたいと言い出した。


 くどいようですが、わたくしニコラス・ケイジという役者にまったく興味がない。しかしこの男がマネー・メイキング・スターであることは間違いなく、いったいアメリカ人は彼のどこに魅力を感じているのであろうか。
 しかしそれはそれとして、本作は大変よくできております。わたくし個人的にはメッチャクチャな大作よりも、これぐらいのレベルの小品を愛するところがあり、その意味で甘くなってるところもありますが、ともあれ一見の価値はあるでしょう。まあ一応わたくしもコンゲーム小説を書いた人間なので、とりあえずランクインさせとかないわけにもいくまい。あと、アリソン・ローマンがよかった。

[DATA]
キル・ビル Vol.1 KILL BILL Vol.1
監督・脚本・製作:クエンティン・タランティーノ
出演:ユマ・サーマン、ルーシー・リュー、ダリル・ハンナ、デヴィッド・キャラダイン、サニー千葉、ジュリー・ドレフェス、栗山千明
2003年 アメリカ

[STORY]
長い眠りから覚めたザ・ブライド。彼女は、結婚式の最中にビルが率いる毒ヘビ暗殺団の襲撃を受け、夫やお腹の子を殺されていた。その復讐のため、伝説の刀鍛治を訪ね、名刀ハットリ・ハンゾウを譲り受ける。そして、暗殺団のメンバー5人のリストを手に、ザ・ブライドは旅に出る。


 タランティーノ映画に対する世間的な評価というのは高過ぎると思う。ぶっちゃけ、ヲタクサイドからの熱烈な身びいきに過ぎないのではなかろうか、とまで思う。しかし、レストランと映画は期待しないで行くべきである、という五十嵐貴久的見地からすると、これもまたその好例であり、大変血沸き肉躍るというか、結構な出来でありました。
 それにしても、ユマ・サーマンは去年いったい何本ぐらいの映画に出たのであろうか。どうも見る映画見る映画、何でも出てたような気がする。そしてユマ・サーマンもまたわたくしにはさっぱりその魅力がわからないのである。

[DATA]
ミスティック・リバー MYSTIC RIVER
監督:クリント・イーストウッド
原作:ブライアン・ヘルゲランド
原作:デニス・ルヘイン
音楽:クリント・イーストウッド
出演:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、ローレンス・フィッシュバーン
2003年 アメリカ

[STORY]
ボストンの貧困地区で遊ぶジミー、デイブ、ショーンの3人のうち、デイブだけが二人組の男に連れ去られた。数日後、デイブは命は助かったものの、暴行を受け、無惨な姿で見つかった。25年後、ジミーの娘が殺される。捜査を担当するショーンの前に容疑者として現れたのは、デイブだった。


 非常に嫌な話で、確かに好みではないのだが、やはり骨が太い映画というのもたまには見ないとイカンと思う。既に定評あるところではあるが、監督としてのイーストウッドの手腕というものは、あなどれないというべきだろう。俳優としての余技とかそういうレベルではなく、映画史的な監督なのではあるまいか。
 ただ、どうしても暗い話なので、わたくしとしては減点せざるを得ないというか。なるべくなら何らかの形で救いが欲しいと思うのである。

[DATA]
マトリックス リローデッド/MATRIX RELODED
監督:ラリー&アンディ・ウォシャウスキー
製作:ジョエル・シルバー
脚本:ラリー&アンディ・ウォシャウスキー
出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス

[STORY]
人類の覚醒に危機感を覚えたマシン軍団は人類最後の都市ザイオン壊滅を企む。72時間後にはザイオンが滅ぼされることを知ったネオは、マトリックス内のすべてのドアへアクセスできるという人物メーカーを探す。マシンが人類を支配する未来世界を舞台に、彼らの戦いを驚異のビジュアルで描き大ヒットを記録したSFアクションの第2弾。


 これはですね、まったく矛盾した話ではあるのですが、無闇やたらと金をかけた映画というものを決してわたくし否定するところではありません、と。ただ、映画単品(いや別に居酒屋のつまみじゃないんだけどさ)で見比べた場合、コストパフォーマンスのいい映画の方が点が甘くなる、という話であります。従って「マトリックス」シリーズなんかは出来がよいので誉めたたえてもよかろうかと。
 特に高速道路上のバトルシーンはいわゆるSFX史上でも特筆すべき出来栄え。どうせならこの方向でどこどこまでも押すべきだったのではないか。確かに「マトリックス」的世界観、というのも重要なことなのだろうけど。

[DATA]
呪信999
監督:ピーター・マナット
脚本:ナティヤー・シラコーンウィライ
出演:チュラチャック・チャクラポン、ポーンラー・テールー、シーリター・チェーンセン、テーパリット・ライウィン
2002年 タイ 107分
[STORY]
ある学園に「999-9999」に電話をかけると悪魔につながって、どんな願いも叶う、という噂が流れた。好奇心旺盛な学生が面白半分に噂の電話をかけると、電話をした彼女の仲間が次々と無残な死体で発見される。タイで大ヒットしたアジアン・ホラー。

 わたくしの立場としては、常にハリウッド至上主義でありまして、確かに90年代からアメリカ映画はつまらなくなりました。明らかに面白くないものが多い。それは認めた上で、しかしそれでも歴史、人材、技術、資金、その他あらゆる意味でハリウッドはやはり他国の上をいっている。それは事実でありましょう。
 しかしだ。21世紀に入って、とうとうハリウッド的映画製作の方法論はかなり厳しくなってきたのかもしれない。この「呪信999」とか、あるいは韓流ムービーを見ていると強くそう感じるのはわたくしだけではないでしょう。
 後から来る奴は有利なのよ、という話ですな。100年アメリカ映画見て育ってきた連中が、その蒸留されたエッセンスみたいなものだけをうまく拾い上げると、このような形にさえなってしまう。これはパクリとかそういうレベルの話ではなく、いいものだけを見て育つと、そりゃ消化も素早くなるわな。というわけで、タイ映画というわたくし的にはどうしたらいいのかよくわからんなあ、というジャンルであるにもかかわらず、堂々の6位。立派なものだ。

[DATA]
フォーン・ブース PHONE BOOTH
監督:ジョエル・シュマッカー
脚本:ラリー・コーエン
出演:コリン・ファレル、キーファー・サザーランド、フォレスト・ウィテカー、ラダ・ミッチェル
2003年 アメリカ

[STORY]
自称・一流パブリシストのスチュは、電話ボックスから浮気相手にと狙っている女優のパメラに電話をかける。受話器を置いて外に出ると、その電話が鳴り、思わず受話器をとったスチュに、相手は「この電話を切ったらお前の命はない」と言う。スチュはどこからかライフルで狙われ、次第に騒ぎが大きくなり、警察やマスコミが集まり始める。やがて、妻とパメラも現場にやってきて……。

 その文脈からいきますと、本作は小品ながらも異常なまでによくできていて、映画ってこうじゃないとイカンのではなかろうか、とまで思った。こんなこと考えているのはわたくしぐらいのものであろう。しかし、低予算でも時間がなくても面白いものは造れるのだ、という意味合いにおいて、大変勇気を与えられる映画でありました。伊丹十三氏いわく、「映画はシナリオ」だそうだが、まったくそういうことでありましょう。ワンアイデア、ワンシチュエーションでも、十分に面白いことはやれます。

[DATA]
黄泉がえり
監督:塩田明彦
原作:梶尾真治
出演:草 剛、竹内結子、石田ゆり子、哀川翔、山本圭壱、伊東美咲、田中邦衛
[STORY]
九州の阿蘇地方で、死者が当時のままの姿で蘇るという現象が多発する。厚生労働省に勤務する川田平太は、故郷で起こったこの現象の調査に乗りだし、そこで、死んだ親友の婚約者だった女性と再会する。黄泉がえりの法則を見付けた平太は、彼女のために親友を蘇らせようとするが……。

 唯一邦画でランクインしましたが、正直言うとこのレンタルビデオ評においてはあまり邦画について触れておらず、その中で書くのもどうだろうかという思いがありまして、このようなことになるわけです。確かに細かい部分での不満はあるのだけれど、それでもここまでやりきっていただければノー問題。
 韓国映画でお腹いっぱいな一年だったが、こんなことも出来るのだから、決して邦画は負けていないと思う。いきなり国粋主義者になってしまいますが、技術において邦画はまだまだ可能性があると思います。問題は志だな。

[DATA]
ボイス
監督:アン・ビョンギ
脚本:アン・ビョンギ/イ・ユサン
製作:アン・ビョンギ
出演:ハ・ジウォン/キム・ユミ/チェ・ウジェ
2002年 韓国 102分

[STORY]
若手女性シャーナリストのジウォンは、援助交際に関するスクープ記事を書き、その記事による強迫電話に悩まされていた。そこで新しい携帯電話を手に入れたある日、まだ誰も知らないはずの携帯電話が鳴り、電話に出た彼女の友人の子供・ヨンジュが電話は、恐怖に目を見開き、絶叫し始めた。その日を境に、ヨンジュが異常な行動をとり始めたため、ジウォンは調査を開始した。すると、ジウォンの携帯番号を使用した人たちは、次々と謎の死を遂げていたという事実を知る。

 ホラーとは何か。わたくしも一応はホラーサスペンス作家でありますから、失笑してしまいますが、ともあれホラーというジャンルへの興味はございます。自分でやろうとはまったく思わないですけれども。そして原典主義であるわたくしとしては、何をやるにしてもオーソドックスな演出、基本を押さえたシナリオがあるべきではなかろうか、という意見を有しておりまして、その意味で完全無欠なホラー映画でありました。それはともかくとして、子役の親はいったいどのように娘の映画出演について考えていたのだろうか。情操教育への配慮とかはないのだろうか。ああ怖い。

[DATA]
ラブストーリー LOVE STORY
監督・脚本:クァク・ジョエン
出演:ソン・イェジン、チョ・スンウ、チョ・インソン、イ・ギウ
2003年 韓国

[STORY]
女子大生・ジヘは、35年前の母の手紙と日記帳を見つけた。その手紙には父の友人である男性との秘められた初恋が綴られていた。読み進めるうち、その初恋はある事件をきっかけに引き裂かれたことを知るジヘ。そして、そこに残された真実が、ジヘの恋に一つの奇跡を起こす。

 もうね、卑怯を絵に描いたような物語です。これは揶揄してるのでも非難しているのでもなく、ただひたすら悔しいと。なぜわたくしともあろうものが、このエンターテインメントしか愛さない男が、このような展開のストーリーを考えつかないまま今日に至っているのか。いっそ悲しい。
 もちろん、この映画で扱われている小道具、手紙というのは、非常に取り扱いが危険なもので、これを小説でやると大変面倒くさいことになるであろうし、その割に効果がないのでは、とも思う。わたくし、やる気はそこそこあるし、面白いことをやろうという気持ちは常にあるのですが、技術がないからな。
 だから思いつかなくてもよろしいのだが、それでもなんでも、あからさまにここまでグッドジョブをされるとやっぱり悔しい。死ぬほど泣けるので、いろいろティッシュとか準備してから見るよーに。
 

[DATA]
ラブ・アクチュアリー LOVE ACTUARY
監督:リチャード・カーティス
製作:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ダンカン・ケンワーシー
音楽:クレイグ・アームストロング
出演:ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、コリン・ファース、ローラ・リニー、エマ・トンプソン、アラン・リックマン
2004年 イギリス 135分

[STORY]
クリスマスを控えた12月のロンドン。秘書に恋をした英国首相、傷心の小説家、片思いを続けるOL、初恋中の11歳の少年、夫の浮気に気をもむ主婦……それぞれ違う人生を送っている人々だが、みんなクリスマスに人生のクライマックスを迎えたいと思っている。イブの夜、19人のドラマが動き出す。

 そして堂々の第1位は本作。わたくしは自分で小説を書く場合に一応心掛けていることがあって、とにかく主人公は一人だと。当たり前に思われるかもしれませんが、わたくしは非常に移り気かついいかげんな性格なので、ふと気がつくといろんな登場人物についてやたらと触ってしまい、その結果としてどんどん話が長くなるという欠点があるのですが、それゆえにこそ、主人公は明確に一人にしておきたいと思っております。
 事程左様に群像劇は難しかろう、と。そのへんを見事にさばき、完成されたシナリオを作り上げた監督のリチャード・カーティスは素敵だと思う。甘っちょろいと言えばそれまでなんですけど。


 ああ、とうとう終わった。というわけで、五十嵐貴久「レンタルビデオ・最後の聖戦」も今回で終わります。こんなことにおつきあいしてくれた幻冬舎関係者の皆様にお礼を申し述べて、最後の挨拶に変えさせていただきたい、と。ではでは、またの機会に。
 あ、ただいま臨時ニュースが入りまして、どうやら五十嵐貴久「安政五年の大脱走」がこの春文庫化されるらしいです。とりあえずぱっと見た感じで明らかに時代小説なので敬遠されていた方もいらっしゃると思うのですが、中身はバリバリ全開のエンターテインメントなので、どうしても読んでほしい。ズバリ言って、面白いです。自分で言うか、普通。

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