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2015.12.26

光秀の子孫が恩讐を超えて解明した信長の真実!!

年末年始 連載(2)
なぜ大うつけを演じたか

明智 憲三郎

年末年始 連載(2)<br />なぜ大うつけを演じたか<br />

【再掲】発売後から、また新たに熱い視線を浴びる『織田信長 四三三年目の真実 信長脳を歴史捜査せよ!』(明智憲三郎著)。従来の本能寺の変論とは違う新説を打ち出し、話題となった著者が今度は織田信長に挑んだ。そこで作品の中から気になるテーマを試し読み連載にて掲載。天才信長の頭脳を読み解き、驚愕の真実を目撃せよ!!

連載第二回目は、乱世の家督争いでみせた信長の名演技!! 信長は【大うつけ】を演じていた?
 

 

 それでは信長はなぜ「大うつけ」を演じていたのであろうか。『信長公記』の信長の行儀についての部分を読むと「信長は十六、七、八までは別段の遊びはせず、馬の稽古、水練、弓・鉄砲・兵法の稽古に励んでいた」という文に続けて、奇抜な服装をして町中を行儀悪く歩いて大うつけと言われたと書かれている。どうも大うつけは十六歳から十八歳までに目立った行動のようだ。

 

 その頃は信長にとってどのような状況だったかというと、今川氏・松平氏、あるいは同族の守護代織田家らと抗争を続けてきた父の信秀が病を発症していた時期に重なる。発展家の創業社長がいろいろなことに手を出し、奮闘している最中に発病し、まだ若い息子に実務を委ねつつ育成して、自分の死後に事業継承せねばならない状況に似ている。

 そのような状況で息子が大うつけを演じなければならない理由は何であろうか。現代には思い当たるような例がないが、日本史でも他に似たような例は見当たらない。
 実は中国にはそのような例がいろいろある。我々も中国史に学んでみよう。

晋の司馬遹
 二六五年に晋を建国した武帝の皇太子は暗愚であったが、孫の遹は利口なので武帝は皇太子を廃嫡しなかった。武帝の死後、その皇太子が恵帝として即位したが恵帝の皇后は遹の代わりに自分の養子を皇太子に立てようと狙った。すると遹は保身のためにうつけを装って馬鹿げた行動をとったが、結局、謀略で廃嫡されて殺されてしまった。

唐の太宗
 隋の皇帝煬帝の代(六○四〜六一八)、煬帝の従兄弟李淵の次男世民は兄を退けて自分が父の跡を継いで天下を取ろうと企ててうつけを装った。李淵が唐王朝を建てると世民の兄が皇太子となるが、世民は兄を討って実権を握り皇帝太宗となる。太宗は「貞観の治」と呼ばれる善政を行い、中国史上最高の名君の一人とされた。

唐の宣宗
 唐は中期になると宦官が専横を極めるようになり、皇帝は宦官との確執に手を焼いた。憲宗の子怡は子供のときからうつけとあだ名されていて、憲宗が死ぬと孫の文宗が即位する。怡は甥の文宗やその跡を継いだ武宗にもうつけ扱いされた。武宗の病が重くなると宦官たちが後継者選びの評議の結果、怡を執権に立てた。最も扱いやすい人物とみたからである。ところが、彼の裁決はことごとく的を射て、皆は初めて怡がうつけを装っていたことに気付いた。その後、皇帝宣宗として即位すると、重臣による派閥闘争や宦官勢力の専横を抑えた。

 これらをみると、有能な人物が権力を握る前に暗殺される危険を避けるためにうつけを装っていたことがわかる。信長が大うつけを偽装していたのもまったく同じ理由からであろう。信秀が中国の故事に倣って信長に大うつけを演じさせ、国内外の敵から信長を守ろうとしたのだ。これも「兵は詭道なり」の実践である。信長は大うつけをわざとらしく町中や信秀の葬儀という公の場で演じてみせて噂が広まるようにしたのだ。なかなかの名演技だったといえよう。

 このことは信秀と信長の二人だけの秘密にしていたに違いない。漏れてしまっては元も子もない。孫子も「作戦は士卒に知らせるな」と説いている。そのため、守り役の平手政秀のように演技と気付かずに腹を切ってしまう家臣も現れたのだ。

 守り役の家臣が騙されるぐらいだから、敵は皆騙された。今川氏・松平氏だけでなく国内の織田一族も大うつけが跡を継いでくれた方がありがたい。信秀が死に大うつけが跡を継いだ後に潰せばよいのである。あわてて信秀存命中に信長を暗殺する必要はさらさらなかったのだ。現実に信長が家督を継いだ途端に鳴海城主山口教継が今川氏へ寝返り、続いて清須守護代家老坂井大膳が挙兵して信長を攻めている。彼らは見事に信秀・信長父子の詭道に騙されたのだ。

 

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