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2015.07.16

第2回

アジア選手権へ弾みをつけた日本選手権

岡田 仁志

アジア選手権へ弾みをつけた日本選手権

 7月11日と12日の2日間、東京調布市のアミノバイタル・フィールドで、ブラインドサッカー日本選手権が開催された(※1)。この競技における国内最大のイベントである。全国のクラブチームにとっては、年に一度のこの大会が最高の目標だ。しかし私が本連載で見据えているのは、あくまでも9月2日に開幕するアジア選手権である。代表だけがブラインドサッカーではないので、各クラブの関係者には申し訳ないけれど、いまの私は9月にリオデジャネイロパラリンピックの出場権を獲得することしか眼中にない。

 その点で、代表チームの「本番」2カ月前に日本選手権が開催されるのは、いささか心配だった。真剣勝負の中で、代表候補選手に大きな怪我でもされたらと思うと、気が気ではない。実際、「いつ何が起こるかわからないスポーツなので、このタイミングでの日本選手権は微妙な面がありました」と語る代表候補選手もいた。とくに怖いのは、選手同士の衝突だ。そのため、「手加減したつもりはないですが、無意識のうちにスピードを落としたり、左右に切り返して衝突を避けるプレーを選んでいたかもしれません」とのこと。日本選手権は毎年あるが、パラ予選は4年に一度。しかも今回は自力で初出場を決めるラストチャンスなのだから、これはやむを得ない面があるだろう。

buen cambio yokohamaの落合啓士(左)と大阪ダイバンズの山口修一。

 しかし一方で、この時期に真剣勝負の試合ができたことのメリットもあったようだ。代表候補のひとりである落合啓士(buen cambio yokohama)は、「僕にとっては日本選手権がこのタイミングで良かったと思います」と言う。

「ウォーミングアップからキックオフまでの気持ちの面を含めた準備は、こういう大会でしか練習できませんからね。それに、アジア選手権は暑さ対策が重要になりますが、今回の日本選手権も気温が高かったので、そのシミュレーションになりました。1日3試合やってもそんなにバテた感じがなかったのは、収穫です。足の裏に水ぶくれができてしまい、2日目に精彩を欠いた面があるのは課題ですが、9月の本番までに何をすべきかが明確になりました」(落合)

 同じく代表候補の加藤健人(埼玉T.Wings)も「暑い中でやれたのは大きい」と言う。「人工芝のピッチは、上からの熱だけではなく、下からの熱もすごいんですよ。足がすごく熱くなるんです。ここ(アミノバイタル・フィールド)の人工芝はアジア選手権の会場(国立代々木競技場フットサルコート)と同じロングパイルなので、その意味でも、いまこれを体験できたのはよかったですね」

 代表チームはアジア選手権に向けて高度な戦術に取り組んでいるので、選手たちはクラブチームとはかなり違う役割を求められる。クラブでは自由にプレーできるが、代表ではそうはいかない。連携プレーの精度を高めるために、攻守ともにいろいろな制約がある。日本選手権ではそのあたりの兼ね合いも難しいところだが、落合は「試合では常に代表でのプレーを意識していました」と言う。

「僕はいつも代表の国際大会から逆算して『いま何をすべきか』を考えています。だから今回も、アジア選手権で必要なプレーを試しました。国内の大会で通用しないプレーは、国際大会でも通用しませんからね。たとえばゴールに背を向けた状態でDFを背負ったときに、もっと反転のスピードを上げないと相手の裏に回り込めないことがわかった。それも、9月までの課題のひとつです」(落合)

 加藤も、代表でのプレーを意識していたようだ。クラブではどちらかというと攻撃が求められる立場だが、代表では中盤の守備で重要な仕事を任される選手である。

ナマーラ北海道戦でゴールを決めた加藤健人(埼玉T.Wings)のシュート。

「ここでゴールをたくさん決めても代表候補としてのアピールにはならないので、とくに攻守の切り替えのところでどういうパスを出すかを考えながらプレーしました。自分がやるからには無失点で終えたいと思っていたので、大阪ダイバンズ戦で2失点したのは残念です。そのせいで、グループリーグを突破できませんでしたし。ただ、ほかの試合は無失点だったので、それなりに満足はしています。あとは、なるべくファウルをしないことも心がけました。代表の試合では、それも大きな課題ですからね(※2)。この大会でファウルが多いと、アジア選手権に向けてイヤな感じが残ってしまう。僕もチームもファウルが少なくて、大会ではフェアプレー賞もいただいたので、その点は良かったと思います」(加藤)

 落合の所属するbuen cambio yokohamaは6位、加藤の所属する埼玉T.Wingsは7位で大会を終えた。どちらもベスト4以上を狙える好チームだけに、悔しい結果だろう。しかし代表チームにとって、この大会は有意義なステップとなった。Avanzareつくばでは、川村怜と佐々木ロベルト泉がチームの優勝に貢献。惜しくも準優勝に終わったが、たまハッサーズの黒田智成と田中章仁も、お互いの居場所が見えているとしか思えぬ絶妙のパスワークを見せていた。代表監督の魚住稿(Avanzareつくば所属)も、「代表選手たちにとっては、良い紅白戦にもなったのではないでしょうか。アジア選手権に向けて弾みをつける大会になりました」と満足そうだ。

「山口修一(大阪ダイバンズ)や川村など、多くの代表候補たちがいい動きを見せてくれましたね。ただしアジア選手権は、それぞれの選手が日本選手権のように自由にプレーしていては勝てません。戦術的な制約の中で、どれだけ良いプレーができるか。これから合宿やスペイン遠征を通じて、そこをさらに磨いていきます」(魚住)

 日本の頂点を目指す戦いは終わった。これからはブラインドサッカー界の総力を結集して、アジアの頂点を目指すことになる。9月の東京は暑い。選手たちはもちろん、応援に駆けつける者もいまから暑熱馴化に努めるべし。観客にとっても、われわれ報道陣にとっても、過酷な大会になるはずだ。

 

※1 正式名称は「第14回アクサブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」。全国から過去最多の14チームが参加。試合結果などの詳細は主催者のウェブページでご確認ください。

※2 ブラインドサッカーでは前後半それぞれ4つめのチームファウルから、相手に第2PKが与えられる。それで決着がつく試合も多いので、ファウル数を減らすことが大事。

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