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2015.07.15

第8回

ドライブスルー大国ベトナム

小原 祥嵩

ドライブスルー大国ベトナム

道端でサンドイッチから金魚までなんでも買える

ベトナムの路上では昼夜問わず様々な屋台に出会えます。色とりどりの南国のフルーツが山積みになったトラック。注文すると目の前で手際よく調理してくれるベトナム式サンドイッチ(バイン・ミー)の手押し屋台。三角帽子を被ったおばさんが路肩に腰掛けて売っている搾りたてのオレンジジュース。バイクの荷台に据えられた棚にひしめき合うように吊るされた金魚の入ったビニール袋。子犬が小さな鼻を突き出してころころと鳴いている自転車の荷台。果ては、バイク保険の加入まで。とにかく道端で生き物、食べ物、着るものなんでも揃うわけです。

 

 

バイクの荷台で売られている金魚

 

屋台の前には、横付けされたバイクと店主による「おっちゃん、バイン・ミーひとつ!」「あいよ!」という掛け合いが溢れています。ベトナムにマクドナルドがオープンしたのはつい最近のことですが、マクドナルドが来るずっと前からこの国はドライブスルー天国だったのです。

そんなベトナムの日常風景でもある路上での移動販売ですが、時おり行政指導が入ります。というのも、そもそも路上を占拠しての営業行為は禁止されており、路上販売のおばちゃんたちが日常的に違法行為を働いているとのこと。普段が大目に見てもらっているのだと冷ややかな意見を言う人もいます。

つい先日も取締強化期間だったのか、道端の売り子たちが役人に追い立てられる様子を何度か見かけました。担当官数人が車やバイクで営業中の屋台の前にあらわれ、さっさと片付けろと追い立てます。

屋台の店主たちもむざむざと商売を潰されないよう協力し合います。ある日、いつもの屋台で飲み物を買おうとしたちょうどその時、誰かが、「おい、公安が来たぞ!」と叫びました。すると、あっという間にみんな店をたたんで、路地裏に逃げ込んだり、何くわぬ顔をして新聞を読み始めたりするではないですか。そして、結局見間違えだったとわかると、「冷や冷やさせないでよ!」とみんなで笑いあいながら、またいつもどおりの営業を開始します。なんとも、食えない人たちだなぁと思いました。

もちろん政府も本気ですから、店主たちが追い払われることの方が多いわけですが。しかし、たとえ追い払われることになっても、気の強いベトナムの商売人達が素直に従うはずもなく、悪態のひとつもつくものだから、担当官も腹立ちまぎれに高圧的な振る舞いをすることも少なくありません。中には屋台ごと打ち壊され、途方に暮れてしまう人もいるようです。そんな話を聞くと違法行為をはたらいているとはいえ、愛想のいい店主のおじちゃんやおばちゃんたちについつい肩入れしたくなってしまうものです。

 

 

サトウキビ。その場で加工してくれる

 

プロポーズは和食チェーン店で

こうした路上の人情話に加えて、我々ホーチミン在住日本人の心をざわつかせたのが中心部に現れた日本の和食チェーン店の看板です。いくらベトナム料理が美味しいと言っても、毎日毎食というと飽きがくるもので、結局行き着くのは祖国の味です。すでに多くの日本料理屋がホーチミンにはありますが、新しいお店の登場は嬉しいものです。また、この店は数年前にも一度オープン準備を進め、看板まで掲げたものの結局開店までこぎつけられなかったという経緯があり、実際に営業を開始するまで在住日本人たちは高まる期待を抑えつつ、半信半疑でその様子を見守ってきたのでした。

そうした在住者の期待を受け、ついに先日、その日本食レストランがオープンしました。日本では学生や社会人も気軽に利用できる手頃な価格で様々な定食を出すチェーンですので、今まで以上に気軽に日本食を楽しめる、と期待が高まっていたのですが……すこし様子が違っていました。

狙っている客層、ブランドイメージが我々が日本で持っているものと大きく異なっていたのです。まずは価格です。ベトナムのローカルの定食屋であればランチは約3~5万ドン(約170~280円)ですが、この店のランチは20万ドン(約1130円)を越えるものばかり。さらに店構えも異なります。市内の一等地に立派なしつらえの店内は高級レストランのそれなのです。

実は、このように日本でリーズナブルなイメージの飲食店がアジアで高級ブランドに転換するという戦略は珍しくありません。

日本ではお小遣いの限られたサラリーマンや学生の胃袋を満たしているレストランが、家族の記念日や、若いカップルのデート、あるいはビジネスマンの商談の場へと大きく方針転換して成功しています。タイでは日系のカレーチェーンでプロポーズをする人もいたんだとか。

こうしたブランドイメージ転換戦略は、海外への事業展開を目指す日系企業の試行錯誤から生まれてきました。

ベトナム経済が成長を続けているとはいえサラリーマンの給与は日本の4分の1程度です。(ホーチミンの非製造業・一般職の平均月給は約512ドル)。日本と同水準の価格で、日常使いできる購買層は限られます。一方で、先に挙げたようなローカルレストランと競合するのは採算的にも容易ではありません。

たとえ親日的と言われる国であっても、ただ単に日本のものをそのままアジアに持っていけば成功するというほど甘くはないのです。

もしアジアで日本のレストランを見かけたら、一度覗いてみたらいかがでしょうか。日本企業の海外展開の挑戦がどのような形で実を結んでいるのかを知るいい機会になると思います。

それではまた!

 

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