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2015.07.01

第1回

自力で「パラリンピック初出場」を果たす最後のチャンス

岡田 仁志

自力で「パラリンピック初出場」を果たす最後のチャンス

 いよいよ本気を出さねばならぬ。私は緊張している。

 昨年1月から11月まで、私はここで「ブラインドサッカー世界選手権2014 スタンド満員化プロジェクト」と題したコラムを連載した。関係者の懸命の努力の甲斐あって、障害者スポーツには珍しい有料制だったにもかかわらず開幕戦と決勝戦が満員となったが、それでこのプロジェクトが終わったわけではない。それどころか、あれは本番前のイントロダクションに過ぎなかった。本当の勝負は、2ヵ月後。9月2日から7日まで国立代々木競技場フットサルコートで開催されるアジア選手権大会である。

 なぜ、世界選手権より小規模の大会が「本番」なのか? それは、この大会が、来年のリオデジャネイロパラリンピックのアジア予選を兼ねているからだ。魚住稿監督の率いる現在のブラインドサッカー日本代表チームにとって、最大の目標は世界選手権ではない。この競技の最高峰の舞台であるパラリンピック出場こそが、彼らの悲願なのだ。無論、それは9年前から彼らを追いかけてきた私の夢でもある。俺は、あいつらがパラの舞台で活躍する姿を見たくて、この取材を続けてるんだよ。もう、見えない目から悔し涙が流れるのは見たくない。そんなときだけ目が使えるなんて、あんまりじゃないか。

 日本がパラリンピック出場に挑戦するのは、公式には2007年と2011年のアジア選手権に続いて三度目だが、本当は四度目だ。最初に出場を目指したのは、2004年のアテネ大会。日本は2001年からブラインドサッカーを始め、2002年には韓国やベトナムと国際親善試合を行った。その実績を積んだ上で「パラリンピックのアジア予選をやりましょう」と提案したのだが、なぜかそれがスルーされてしまい、IBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)のフットサル委員会は韓国をアジア代表としてパラリンピックに出場させたのである。その不可解な経緯は拙著『闇の中の翼たち ブラインドサッカー日本代表の苦闘』(幻冬舎刊)に詳述したので、どうか一読して悔しさを共有してもらいたい(電子書籍にもなっています)。ちなみに、2003年に公式のアジア予選は開催されなかったが、韓国、ベトナム、日本による親善大会が行われ、日本代表はそこで優勝した。アテネに行けるだけのポテンシャルは、持っていたのである。

 2005年には第1回アジア選手権が開催され、日本はそこでも優勝を遂げた。だが、これはパラ予選ではなく世界選手権の予選だ。その後、中国とイランの登場で、アジアのブラインドサッカーは戦国時代を迎えた。日本は2009年の第3回大会と2013年の第5回大会で準優勝したが、パラ予選となる偶数大会ではどういうわけか2位以内に入れない(北京大会以降、パラリンピックのアジア枠は2)。2007年の第2回大会は「勝てば北京パラ出場」となる韓国戦を0-1で落とし、2011年の第4回大会は「引き分け以上でロンドン行き決定」となるイラン戦に0-2で敗北した。あと一歩、いや、あと半歩のところまでパラリンピックに迫りながら、無念の涙を流し続けてきたのである。

 そして今回の第6回大会は、日本の選手たちにとって、ある意味でラストチャンスだ。2020年の東京パラリンピックは、開催国枠での出場が決まっている。したがって、もし今回リオ行きを逃せば、自力で初出場の切符をつかみ取ることが二度とできない。そう。いまのブラインドサッカー日本代表は、1997年にフランスワールドカップ予選を戦ったサッカー日本代表と同じ立場なのだ。あのときも、2002年の日韓ワールドカップの前に、日本が自力で出場権を勝ち取ることを多くの人々が望んでいただろう。ブラインドサッカーも同じである。

 その「最後の勝負」となるIBSAブラインドサッカーアジア選手権2015の概要が、6月29日に発表された。参加国は、中国、イラン、韓国、インド、マレーシア、日本の6ヵ国。会場は、昨年の世界選手権と同じ国立代々木競技場フットサルコート。総当たりのリーグ戦を行い、上位2チームが9月7日の決勝戦に進出する。つまり、決勝進出を決めた時点でリオ行き決定だ。
 

記者発表会で質問に答える日本代表のエース黒田智成選手(左)と、アジア選手権で大会アンバサダーを務める北澤豪氏。

 日本の試合日程は、2日(水)中国/3日(木)イラン/4日(金)韓国/5日(土)インド/6日(日)マレーシア。のっけから、最大のライバルである中国、イランとの激突だ。中国はアジア選手権4連覇中。イランは昨年のアジアパラゲームスで優勝した。日本はまだこの両国に勝ったことがないので、まずはこの2試合のスタンドを満員にして全力でサポートしなければいけない。続く韓国は、北京行きを阻まれた宿敵である。向こうもムキになってかかってくるが、満員のスタンドで圧倒してやろう。インドは初出場、マレーシアは2009年のアジア選手権で日本が5-0で粉砕した相手だ。しかし油断してはならない。得失点差の争いになった場合、この2チームからどれだけ大量点を奪えるかで決着がつく可能性がある。満員のスタンドからの後押しがあれば、日本はあれよあれよとゴールを重ねるに違いない。

 というわけで、今回のミッションは「日本戦ぜんぶ満員」である。昨年の世界選手権と同様、ホームの利を最大限に活かすことが勝利の必要条件だ。世界選手権では、多くの観客の後押しによって過去最高の6位になった日本だが、パラリンピック予選は、どの国も死に物狂いで向かってくる。五輪と同様、パラリンピアンになると多額の報酬を得られる国も多いからだ。そこで2位以内に入るのは、世界6位になるより難しい。それが、過去の敗北を間近で見てきた私の率直な感想である。アジアは甘くない。とりわけパラリンピック予選は、苦味しか私は知らない。

 観戦チケットの一般発売は、7月21日からの予定。しかし早めに確保したい人には、先行発売のチャンスがある。7月11日と12日の2日間、味の素スタジアムのアミノバイタルフィールドで開催されるブラインドサッカー日本選手権大会だ(*)。これに足を運べば、アジア選手権のチケットをゲットできるのに加えて、リオを目指す代表選手たちのスーパープレーを見ることもできる。ここで多くの人がブラインドサッカーの凄味を知れば、9月の決戦に向けて弾みがつくだろう。アジア選手権の前に、まずは日本選手権のスタンドを埋めることから始めようじゃないか。もう、こうなったら協会の回し者だと思われてもかまわない。日本選手権のほうは、入場無料です。


*正式名称は「第14回アクサブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」。全国から過去最多の14チームが参加予定。詳細は主催者のウェブページでご確認ください。

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