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2009.09.15

その14

ある事件 2

せきしろ

ある事件 2

 

 

 

 私は恐る恐る電話口の向こうへと言葉を発した。
「…………」
 相手は無言だった。今はこの無言が怖かった。
「あの……どうかなされましたでしょうか?」
「……どうかしたじゃないよ」
 やっと相手の声が聞こえた。声のトーンからも、その口調からも、向こうは怒っているのは明らかであった。私はすぐに謝罪の言葉を口にしそうになったが、その理由がわからない状態で謝罪するのはおかしい気がして、なんとか言葉を呑みこんだ。
「えっと……その……」
「……あなた、自分がしたことわかっているの?」
 相手が静かに問いかけてきた。静かな怒りが私を更に戸惑わせた。
「えっと……」
 私はしどろもどろになった。どう返答すれば良いかわからなかったのだ。実際、自分がしたことも相手がなぜ怒っているのかもわからない状態だ。このまま曖昧な返答を続けていくわけにはいかず、私は正直に対応することにした。
「あなた聞いてるのか!?」
「はい、聞いております」
「ならば質問に答えなさい。あなたは自分がしたことがわかっているのか?」
「……いいえ」
「何?」
 私は意を結して、相手の怒りが倍増することを覚悟して正直に答えた。
「いいえ。申し訳ございませんが、なぜ怒られているのかわかりません」
「…………!」
 相手はまたしても無言になった。漏れ聞こえてきた息の音から相当の怒りを感じることができた。相手は怒りを自分なりに抑えようとしているようで、それが無言になった理由のようだった。電話口から「ハア……」と大きく息を吐く音が聞こえ、相手はまた話し出した。
「……私がなぜ怒っているか教えてあげるよ。それはあなたが……」
「はい……」

 

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