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2009.11.01

その 16

ある事件 4

せきしろ

ある事件 4

 

 

そして次。代表の文字。
 こちらも辞書をひいてみるといくつかの意味があり、このタスキで使われているのは「その技術や能力が特に優れていて、ある集団の中から選ばれた人」という意味であることはすぐにわかる。
 つまりは「色事を好む技術や能力が特に優れていて、ある集団の中から選ばれた人」という意味のタスキをしていたことになる。説明的に変えてみるとなんだか無性に恥ずかしくなった。きっとこの抗議してきている人も羞恥心を抱いたのであろう。「恥ずかしくないのか!」とそれは怒りに変わり、「スケベなどハレンチだ! 信じられん」と激怒したのだろう。そして抗議した。もっともな流れだ。私でも恥ずかしくなったくらいなのだから、生真面目な人ならなおさらだ。これは怒られて然るべきだろう。
「……ちょっと!」
「…………」
「ちょっと! もしもし!」
「あっ、はい!」
 考えごとに夢中になり、私は少々沈黙してしまっていた。
「ちゃんと聞いてるの?」
「はい、聞いてます!」
 電話の向こうはさっきより苛立っているようだ。
「で、タスキにはなんて書かれてたか覚えてるの?」
 先ほどその質問に答えようとして考え込んだのだった。それでまだ答えていない状態だった。私はすぐに答えた。
「タスキには『スケベ代表』と書かれていました」
 私の言葉に対し、抗議の主は呆れた口調を感じさせながら言った。
「そうだよ。『スケベ代表』だよ……。私はその言葉に怒っているんだよ!」
 私の思った通りだった。やはりこの人にとっては『スケベ代表』は低俗な言葉であったのだ。しかもそれをつけたまま私は堂々と街を歩いていたわけだ。その姿を見て、抗議されたとしても仕方ない。
「申し訳ございませんでした」
 私は誠意を込めて謝罪した。
「本当にわかっているのかね。申し訳ございませんで済む事と済まな……」
 相手の言葉を遮る形となってしまいながらも、私は謝り続けた。
「怒りはごもっともです。あんな低俗なタスキをつけて公道を歩いていたのですから。不愉快な思いをされたことでしょう」
 私の謝罪はまだ続く予定だったのだが、相手の思わぬ言葉で中断となった。
「低俗……?」

 

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