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2009.10.15

その 15

ある事件 3

せきしろ

ある事件 3

 

 

 

「あなたがタスキをしていたからだよ!」
「タスキ、ですか?」
「そうだよ! タスキだよ、タスキ!」
 正直に言うと私は少々拍子抜けした。もちろんそのような心情は察せられないように務めた。だがやはり拍子抜けしていた。私はもっと別の理由、人を怒らせるに値するほどの理由を予想していたからだ。記憶にはないが、酔った勢いで何かを破損したとか、誰かを傷つけたとか、そのような理由だとばかり思っていたのだ。それなのにタスキをしていたことが原因だという。
「あの……タスキ、ですか?」
「何度言わせるんだ!」
 念のために確認してみたものの、やはりタスキが原因らしく、おまけに余計に怒らせてしまった。人の怒りの沸点はそれぞれだとはわかってはいるものの、「なぜタスキで……?」なる疑問は大きくなるばかりだった。
「タスキだよ、タスキ!」
 電話の向こうから苛立った声が聞こえる。そのトーンのまま相手は話し続けた。
「あなた、自分がしていたタスキのこと、わかってんの?」
「はい、わかってるつもりです」
 タスキをしていた記憶はある。
「そのタスキに書かれていた文字、覚えているの?」
「はい……」
 私の脳裏に朝の光景が蘇ってくる。玄関で寝ていた自分の姿。目覚めるとタスキをしたままの自分の姿。そのタスキには……。「……ハッ、そうかっ!」と私は気づき、ある結論に達した。
 タスキに書かれていた文字は『スケベ代表』の文字。これに対して怒っているのだろうと考えた。相手も文字のことを言っている。それしか考えられない。
 私は『スケベ代表』という言葉を考え始めた。
 まずは、スケベ。
 その言葉は誤解を恐れず言うならば俗っぽい言葉である。漢字で書くと「助平」。辞書をひくと「好き」が変化した「すけ」を擬人化したものだという。意味は「色事を好むこと。また、そういう人や、そのさま」。つまり男女の情事が大好きだという意味であり、少々品位に欠けている印象を受ける。そうなると真面目な人やおかたい人であると不愉快になってもおかしくない言葉である。相手が女性の場合は「セクハラだ」と訴えられても不思議ではない。

 

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