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2015.05.31

第3回

泳いでいる運動精子
=良い精子ではない

黒田 優佳子

泳いでいる運動精子<br />=良い精子ではない

不妊治療の医学的停滞、“精子技術”の出遅れが
顕微授精の普及を促してしまった……

 不妊治療の「第3の重要問題」、それはまさに私の専門分野です。今の不妊治療において“卵子技術”の進歩に比べて“精子技術”は出遅れたままであり、その出遅れが顕微授精の普及を促したのです。

 産婦人科において、ヒト卵子をはじめとする女性側の生殖、妊娠に関する研究は長年にわたって盛んになされてきました。ですから、卵巣の研究や排卵のメカニズムはまだまだ解析できていない部分があるとはいえ、かなり解明されてきました。

 その一方で、ヒト精子の研究は、はるかに出遅れています。男性側の生殖を研究する泌尿器科においても、精子を専門に研究する医師たちは、産婦人科と同様に極めて少数であるのが現状です。

 この項の表題に述べた精子技術の出遅れが顕微授精の普及を促したことについては次章で詳しく述べますが、本項では簡単にその原因に触れておきたいと思います。

 すでにART(生殖補助医療)における授精手法の70%以上を顕微授精が占めておりますが、じつは、「顕微授精は精子の状態が悪い方には不向きの治療」なのです。

 言い換えれば、顕微授精は精子の数的不足(精子数が少ない)を補う技術であり、質的異常(精子の状態が悪い、すなわち精子機能異常)をカバーすることはできません。それにもかかわらず、“精子に関する知識の不足”と“精子技術の出遅れ”とが、「顕微授精ならば精子の状態が悪くても1匹でも精子がいれば妊娠可能である」という誤った認識を生みました。

 さらに顕微授精に穿刺注入する精子の選別、評価に明確な基準はなく、泳いでいる運動精子=良い精子という認識にすぎず、出生児は当然健常であると考えられ、先天異常をはじめとする“リスク”に目が向けられることは極めて少なかったのです。


 その陰に潜むリスクは?
 少し専門的な話になりますが、ヒト男性の場合、射精された精子のなかには傷ついたDNAを持つ精子が一部混在しています。ですからART、とくに顕微授精ではDNA損傷がない精子をきちんと選ぶことが極めて重要になります。


 すでに欧米では、顕微授精により出生した子どもの先天異常率が自然妊娠に比べて有意に高いことを述べた論文が多数発表されています。

 これらの問題点を、不妊治療従事者が十分に認識しないまま顕微授精を汎用している現状が、顕微授精児のリスクに繋がっていると考えられます(詳細は本書52ページ。幻冬舎plus連載第4回)。これは、ヒト精子だけに存在する問題点なのです。

 

図20 精子の頭部空砲(左図)とDNA蛍光染色(右図)
空砲(穴が空いている状態)の部位はDNAの密度が低いことが明らかになった。頭部空砲とDNA損傷との因果関係は不明であり、詳細は現在研究中。詳細は本書p.120〜125

 

 

 

 

この連載は『不妊治療の真実 世界が認める最新臨床精子学』のダイジェスト版です(全5回)。詳細に関しては書籍をご覧ください(もくじはこちら)。
第4回「顕微授精の問題点」は6月4日(木)公開予定です。

 

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関連書籍

黒田優佳子『不妊治療の真実』
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