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2015.05.16

第1回

「きょう、自分が死ぬ」なんて考えたことがありますか?

中山 祐次郎

「きょう、自分が死ぬ」なんて考えたことがありますか?

 AKB48のメンバーなど著名人と直接交流できるスマートフォンのアプリ「755」をご存じですか。「755」で、一般ユーザーでありながら、著名人顔負けの人気者となった「藪医師(やぶいし)」。34歳独身、大腸がん手術が専門の現役外科医です。
 その藪医師こと中山祐次郎さんが、初めての著書『幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと~若き外科医が見つめた「いのち」の現場三百六十五日』を刊行しました。
 連日の手術、術前術後のケア、後輩の指導、論文執筆や学会発表など、若手医師の日常はとにかく過酷。その激務の合間を縫って、ときに眠れなくなり食べられなくなり涙しながらも、書かずにはいられなかったのが本書です。
読売新聞の読書欄でも紹介され大きな反響を呼んだ本書の一部を、全3回でご紹介します。第1回は「はじめに」からです。

* * *

 あなたは、「きょう、自分が死ぬ」なんて考えたことがありますか?

 私は都内の病院で働いている、医者になって九年目の外科医です。
 大腸がんの手術が専門です。平日は毎日二、三件の手術があり、一年に二五〇件ほどの手術をやっています。
 同世代の外科医よりはたくさんの手術を経験していますが、がんの外科医としては、まだまだ若造です。

 医者になってからというもの、日々病院で働きながらいろいろな患者さんたちにお会いして、思うことがたくさんありました。
 何千人もの患者さんのいのちの現場で見たこと。
 嬉しかったこと、哀しかったこと。
 そんななかで、あるひとつの疑問が私の頭から離れなくなりました。

「なぜ、いのちの終わりはこれほどまでに辛いのか」

 その疑問のお話をする前に、まず私という人間についてお話しさせてください。
 私は三十四歳の男で、地方の国立大学の出身です。大学を卒業してから、東京都内の病院に勤務しています。今のところ大学の医局というものには属さず、研修医の頃からずっと同じ病院で働いています。
 そんな私ですが、少し変わっている、と言われることがあります。
 日々医師として病院で働いていますが、医者以外の人づきあいも大切にしていますし、医学関係でない本も読むように心がけています。医師でなかった頃の感覚を失わずにいたいと強く思っているからです。

 医師になってからというもの、実にいろいろな体験をさせていただきました。
 まるで『Dr.コトー』のような、人口三〇〇〇人の離島でお医者さんをやったこともあります。
 研修医の頃、病室に入るまでかぎが三つもあるような、精神科病院の閉鎖病棟で働いたこともあります。
 救急車に同乗して、今にも死にそうな人を搬送したことも何度もあります。
 ボクシングのリングドクターもやりました。
 一日に一〇人以上も心臓が止まった人が運ばれてくるような病院でも働きました。

 そのなかで感じた、たくさんの違和感や「おかしいだろう」ということ。それを私は、ややもすれば忘れてしまいそうになりました。多忙を言い訳に、そんな想像力を失ってしまいそうになった時期もありました。
 それでも私は今、やっぱり忘れたくないと思っています。
 日々医者として生活しているなかで、なんとか自分のなかに留めておきたい。
「病気が怖い」
「死ぬのが怖い」
 こんな当たり前の患者さん側の感覚を、失いそうになっていく自分がとても怖いと思ったのです。

 ですからあるときは医師として、あるときは患者さんとして、ふたつの立場を行ったり来たりできたらよい。病院で医師として働いている間も常に、「私がこの患者さんだったらどう感じるか、どう思うか」ということをずっと考え続け、大事にしてきたのです。

 そんなことを何年も考えているうちに、とうとう我慢ができなくなりました。
 お伝えしたいことがある。それも、一刻も早く。
 そんなきっかけで、出版の見込みもないまま、私はこの本を書きはじめました。

 ですが実のところ、私が医学書でない本を執筆することには、大きなためらいがありました。
 医者の世界は、狭く閉鎖された空間です。学歴、学閥、権威、年功序列。そういったものが厳然と存在する業界です。山崎豊子さんの『白い巨塔』という名作がありましたが、教授をピラミッドの頂点とするヒエラルキーは、正直言って今でもたいして変わっていません。
 そして、まっとうな医師は患者さんに寄り添い、論文を書き、医業に専念すべしといった雰囲気があります。つまり、ちゃんと仕事をしていたら本を書く暇なんてないだろう、ということです。ですから、私はこの本を書くことで、自分のキャリアを閉ざすことになってしまうかもしれません。

 でも、私は執筆を決意しました。

 その理由は、混乱のなか、死の恐怖に打ち勝てずに切ない最期をお迎えになる患者さんをたくさん目にし、一介の若手医師の私ではありますが、「なんとかしたい」と思ったからです。まず「自分がいつかこの世を去る」という、とても辛いこの真実を知っていただきたい。それを知ることで、そしてこの本がきっかけになって、少しでも安らかに旅立つ人が増えてくれればと思い、手術の合間をぬってキーボードに私の想いを叩きつけました。

 幸せに死ぬ。
 満足し微笑んで、旅立つ。

 変な表現かもしれませんが、この本でお伝えしたいのはこんなことです。

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