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2015.04.27

『あの女』文庫化特別インタビュー
「小説家になったばっかりに、
煩悩がだだ漏れになっちゃった」

真梨 幸子

『あの女』文庫化特別インタビュー<br />「小説家になったばっかりに、<br />煩悩がだだ漏れになっちゃった」

真梨幸子さんに、『あの女』の秘密をいろいろ伺いました。タイトル改題の秘密、女流作家である珠美と桜子という二人の女性についてなど、面白いお話が続々! これを読んでから『あの女』を読んでいただくと、更に楽しんでいただけると思います。
 

 

――この度は『あの女』の文庫化おめでとうございます! 『あの女』はタイトル通り、女性なら誰も感じている、それぞれの“あの女”への嫉妬や憧れや競争心が思う存分描かれています。なかでも、登場人物の珠美と桜子の女流作家同士の静かな戦いは印象的ですが、この二人の女流作家はどういった女性たちでしょうか。

真梨:売れている珠美と売れていない桜子、私はどちらの境遇も経験しました。なので、二人は、私の分身ともいえます。もちろん、かなりデフォルメしていますよ(笑)。珠美ほどの売れっ子ではないし、桜子ほど屈折もしていませんし、なにより、(西岡のような)どすけべな男性編集者とも遭遇したことはありません。ただ、彼女たちのモノローグは、私の愚痴や本音に近いものがあります。
 でも、珠美と桜子、小説家になってなかったら、案外平和に暮らしていたんじゃないかしら? とも。小説家になったばかりに、煩悩がだだ漏れになっちゃった
 

――確かに、いろいろ女の本音がだだ漏れしています! 『あの女』は象徴的ですが、他にも真梨さんの小説は、女性の感情がいつも生々しく描かれていてそれが好きな読者の方も多いと思います。ですが、いくら女たちの感情がだだ漏れしていても、なぜか「女のドロドロ」というよりも、女性の勢いというか一生懸命の先にある突き抜けた狂気というか、とても潔いものを感じます。それは、真梨さんの女性観から来ているのかもしれないと思うのですが。
 
真梨:女性解放とか、男女平等……なんて言われはじめたのは、人間の長い歴史から見ると、本当につい最近のことです。女性は、多分猿人だった時代から、男性(オス)に選ばれることが人生最大の目的だったんだと思うんです。つまり、「選択」するほうではなくて、「選択される」側としてのスペックを、数百万年という長い時間をかけて身につけてきたわけです。その最たるものが、化粧などに代表される「偽装」または「嘘」。鳥でいえば、進化の過程で手に入れた、美しい羽のようなものです。でも、羽も目立ちすぎれば敵に狙われる。そんなリスクを背負いながらも、華美な羽で空を舞うことを怖れない鳥のようなものじゃないでしょうか、人間の女性も。


――とにかく女たちの動向や発言、感情が気になる本作ですが、『あの女』を形成する大きな要素として、その「女」と、もうひとつ「部屋、土地」があると思います。まずは、物語の鍵を握る所沢、そして、曰く付きの部屋、四〇一二号室。その二つの場所はこの作品の中でとても重要な役割を持ちます。過去の作品も含めて、マンションや、土地の過去といったモチーフが登場することが多いですが、真梨さんが“場所”にこだわる理由、そしてそこに感じているミステリとして魅力とはいったい何でしょうか。
 
真梨場所には、どんなに隠しても隠しきれない「癖」というのがあるように思います。「念」とでもいいましょうか。あるいは「物語」。
 つまり、場所には、すでに「物語」があるんです。「場所」を設定した時点で、その物語はすでに出来上がっている……とも言えるかも。なので、私は、登場人物のキャラ設定する前に、「場所」を決めます。場所を決めれば、どんな人が住んでいて、どんな出来事が起きるのか……というのは、自然と出来上がってくるからです。


 ――『あの女』はとても印象的なタイトルです。『四〇一二号室』の文庫化にともない改題されたものですが、改題をしようとご判断されたのはなぜでしょうか。

真梨:去年、「人生相談。」を出版したときに、ふと、気付いてしまったのです。「あ、私の作品、タイトルの文字数が奇数のときのほうが、売れる!」と。「人生相談。」のときは、「人生相談」だけでは本当に「人生相談」の本だと間違われる恐れもあるかもしれなからと、「。」をつけたんですね。そう、「。」をつけたことで、奇数になったんです! そしたら、それが功を奏したのか、発売すぐに重版がかかり、「王様のブランチ」でも紹介されました。で、割とジンクスとか信じちゃうほうなので、「四〇一二号室、文庫化するならば、……奇数にしませんか?」と、担当さんにダメもとで相談したところ、それが通ってしまったというわけです。


――今年はデビュー10周年ですが、作中の珠美と桜子のように、真梨さんも重版に憧れていた時代から、『殺人鬼フジコの衝動』の大ヒットなど、色々なことと向き合ってこられたと思います。真梨さんにとってこの10年間は、作家としてどんな10年だったでしょうか。

真梨:体感では、3年ぐらいの短さです。なので、未だ、デビューしたての新人の気分です。


――最後に、真梨さんにとっての“あの女”はいらっしゃいますか? 

真梨:陳腐な回答で申し訳ないのですが、それは、「私自身」です。……なんていうのはもちろん嘘で、います。「あの女」。もう、とにかく、気になって気になって。ある意味、恋です(笑)。誰かですって? こんなところでしゃべるわけないじゃないですか(笑)

 

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