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2012.05.15

その4 高い コラム: 高いモノには勝てない

片岡 K

その4 高い コラム: 高いモノには勝てない

 

姿が見えない時は、決まって高い所にいる。

 

猫はどこまでも登って──

上から目線。

少しでも高い所に登りたがる。

高い所には気になるヤツがいるし。

旨いもんが隠れていたりするから。

たまにピンチもある。

届きそうで届かないジレンマ。

股が裂けそうになったり。

急にパニクることもある。

上にも下にも行かれない…。

それでも他の動物より高い場所にいたい。

人間よりも上にいたい。

高いっ!と必死になっても、実は低かったりする。

時には力を合わせて、高くなる。

「兄ちゃんが取ってやるよ」

「母ちゃん、電球替えてやるよ」

値段の高い食い物も大好き。

単純にお金も好き。

何コレ。高そうだねえー。

ペットホテルは高くても、主人がいないから嫌い。

プライドも高い。

教養も高い。

そして運動神経も高い。

なので、王様扱いされるのは悪くない。

高いもの。芸術性。

高いもの。将棋の段位。

ブレイクダンスのテクもかなり高い。

悔しかったら、ここまで来てみろや。

 

 

 

高いモノには勝てない
片岡 K

 高いモノには勝てないな、といつも思う。

 まずボクは、高い場所が怖い。女のコと観覧車に乗るたびに「一番てっぺんまで行ったらキスしよう!」などと企んでいるものの、実際にてっぺんまで行くと怖くて足がすくみ、キスどころではなくなってしまう。
 ボクは声を大にして言いたい。遊園地のアトラクションはどうして毎回毎回あんなに高い所へボクを連れて行くのだろうか。ジェットコースターなんて乗り物、一度も楽しかった経験がない。お金を払ってなぜわざわざあんな恐怖を味わなくてはならないのか。冗談じゃない。冗談じゃないと思いながらこれまでに何度も乗った経験があるのは、隣に乗った女のコが「きゃあああ」なんて言って抱きついてくれるかもしれないという淡い期待があるからです、すいません。でも結局、アレに乗っている間ずっとボクは体を硬直させて目をつぶり、ただひたすら「早くこの時間が終わってくれええ」と願うばかり。よし決めた。もう二度と乗らない。死ぬまで乗らない。完敗だ。

 金銭的な面でも、ボクは高いモノに非常に弱い。高いと知った瞬間に、いつも負けてしまう。気取ったボーイさんに「こちらシャトーブリアンです」なんて言われて肉料理を出された瞬間、「旨いっ」と言いそうになっちゃうぐらいだ。食ってないのに。旨い食い物だから高いのか、高い食い物だから旨いのか、そのあたり、甚だ自信がない。
 ロマネコンティという超高級ワインをご馳走になった時のこと。ボクのグラスに注がれたほんの150cc程の液体を「それだけで8万円ぐらいだ」と小山薫堂クンに聞かされた。そう聞いてしまうと、飲んだ後の感想はもちろん「うわーこんな旨いワインは人生で飲んだことがない!死ぬほど旨い!ああ、もう死んでもいい!」になってしまう。その時は本気でそう思った。心底そう感じた。だけど、後から考えるとまるで自信が持てなかった。実際の話、ボクはその3日後ぐらいにロマネコンティと同じ品種で、ロマネコンティの数メートル先の畑で採れたという葡萄で作った1本2万円のワインを飲んだのだが、これも死ぬほど旨かった。最初に金額を聞かされなかったら、こっちに軍配を上げていたかもしれない。いや、この際だから白状します。正直言うと、ワインなんか何飲んでも旨いや。800円のワインも1万円のワインも100万円のロマネコンティも、ボクの舌にはほとんど判別不能。小山薫堂クンに完敗である。

 でもね。そりゃそうだろーって思う。だってあんなもの、食文化も食生活もまったく違う遠い異国の人たちの嗜好品じゃないか。ボクたち日本人にいったい何がわかると言うのか。だってさ、もしもアフリカあたりの人たちが「日本酒の中でも久保田の萬寿は格別だよなあ、千寿よりも味が柔らかくトゲがない」なんて品評してたら、どうするよ? ボクなら頭突きの一発でも食らわせるけど?「醤油も味噌も知らずに育ったお前らが、偉そうに日本酒を語るんじゃねえっ!」とタンカも切るけど?そんなタンカを切ったボクでさえ、ホントのこと言えば萬寿も千寿もよくわかんなかったりするからね。フランス人やイタリア人だって、似たようなもんじゃないかと思うんだよ。 
 と、ここまで書いて、キッチンの下に久保田の萬寿が大事にしまってあることに気づいた。冷蔵庫の中にはドンペリのロゼも冷えてる。もう2年か3年ぐらいずっと冷えてるような気がしないでもない。いつか何かイイ事があった時に飲もうと決めている。やっぱり旨い酒だもん。なぜ旨いかって、言うまでもないでしょ。値段が高いからじゃん。高いモノには勝てないのだよ。乾杯だ。

 

 

本連載に掲載されている写真について、該当する著作権者がいらっしゃいましたら、webmagazine@gentosha.co.jp 「じわじわ来る□□」係までご一報ください。

 

 

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