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2015.05.14

第4回

家族からも地域からも排除され「風俗」に行き着く
──ノゾミさん・19歳

NHK「女性の貧困」取材班

家族からも地域からも排除され「風俗」に行き着く<br />──ノゾミさん・19歳

 働く単身女性の3人に1人が年収114万未満。――2014年1月27日に放送されたNHKクローズアップ現代「あしたが見えない~深刻化する”若年女性”の貧困」と、その続編として同年4月27日に放送されたNHKスペシャル「調査報告 女性たちの貧困~”新たな連鎖”の衝撃」は大変大きな反響を呼びました。
 その後、日本社会の将来を左右する深刻な事態として認識されるようになった「女性の貧困」問題の、最初の一石を投じた2本の番組に、取材しながらオンエアできなかった内容や、登場した女性たちのその後などを盛り込んで書籍化したのが『女性たちの貧困』です。
 本書の担当編集者は、原稿を読みながら、「これが現代の日本で起きていることなのか」と驚き、怒り、たびたび絶望的な気持ちになりました。でも、私たち一人ひとりにできることは、できれば目を背けたい現実をまず知ることだと考えます。

 全6回のダイジェストでお届けする『女性たちの貧困』。第4回目は第4章「セーフティーネットとしての『風俗』」から、風俗店で働く妊娠中のノゾミさんの話です。

前回の記事:第3回「母子家庭でも子どもが保育園に入れない──沙織さん・29歳」

*  *  *

 風俗店での取材のほかにも、「風俗」の仕事をしているという女性に数多く出会って話を聞いた。多くは、なんらかの事情でアンダーグラウンドの世界へと落ちていった女性のようだった。

 育った家庭環境による影響も大きい。保護者でなくても、“特定の誰か”からどれだけの愛情を受け、手をかけられて育ってきたかが、次の世代の子どもに大きな影響を及ぼすと強く感じている。

 取材で出会った、髪の毛を金色に染め顔に複数のピアスをつけている19歳のノゾミさんは、妊娠中だった。仕事は風俗店勤務。

「ホストの彼氏は同じ時期に別の女性にも妊娠させていて、そっちの女と結婚することを選んで、私は捨てられた」と話していた。出産後は子どもを養子縁組に出すという。

 19歳にして2度目の妊娠だった。1人目は中学生のときで、相手は同じ年の彼氏。出産したが、彼氏の親が引き取ったため、その後、子どもに会ってもいないし、行方ゆくえも知らないと話していた。

 彼女の母親は交際する男を次々に替えながら、男に依存する生活を続けていた。家に全然帰ってこなかった。小学校にはほとんど通わず一人で過ごしていた。母親が置いていった数万円のお金で、1カ月や2カ月を過ごすことが普通だったという。

 そしてたまに帰ってきたと思うと、母親の新しい男に暴力を振るわれた。幼少期になんのいい思い出もないと話す。

 一緒に誰かとご飯を食べたこともないのだろう。ノゾミさんの箸の持ち方はめちゃくちゃだった。

 小さい頃のトラウマなのか、彼女は大きな音に過剰に反応してしまう。一時期、飲食店で働いていたこともあったが、皿が割れる音で、急に涙が止まらなくなったという。そういうことの積み重ねで、仕事ができなくなり、昼間の仕事は辞めたという。

 中卒が最終学歴。就職することなど、最初からあきらめていた。気分が落ち込んで人に会いたくなくなり、部屋に引きこもることもしばしばある。でも、風俗の職場には、自分と似た子が多く、一緒にいて楽なのだという。

「最近、周りのお世話になった人が、30歳になる前くらいで自殺して死んでいく。自分も将来像とか描くことができない」と表情乏しくつぶやいていた彼女。夢や希望などという言葉は、彼女の中に存在しないのだろうか。

 生まれた環境が学歴にも大きく影響するとは、よくいわれていることだ。学歴が低いと就職に響く。家庭が安定しない女性は、若年で妊娠し結婚する傾向があることは先に述べた。そして若年結婚の離婚率は高い。

 若くして妊娠した女性は、社会的に通用するスキルが乏しいため、就労することはさらに困難になる。また、日本では、離婚した女性のほとんどが、養育費を受け取っていない。ちゃんと受け取っているケースは、2割程度にとどまっている。こうした現状も放置され続けている。

 取材から見えてきたものは、社会のセーフティーネットからこぼれ落ち、排除された女性たちが行き着く場所が、「風俗」だったという現実だ。収入が得られるだけではない。そこでは、生活支援、精神的サポートまでが繰り広げられている。

 しかし、当然のことながら、それは女性にとって決して安全な仕事ではない。違法なサービスを強要され、妊娠し、さらに追い詰められていく女性も少なくない。

 

※第5回は5月21日(木)更新予定です

※書籍『女性たちの貧困』にはここで紹介したノゾミさんほか、中学で母子家庭から家出しその後風俗店で働き始めた27歳のゆきえさんや、デリヘル店社長の三上さんへの取材など、「風俗」がセーフティーネットとして機能しているという皮肉な現実について掲載されています。興味を持たれた方は是非、書籍をお求めください。

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