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2000.11.01

懐かしのオールド・パル

オキ・シロー

懐かしのオールド・パル

 


 オールド・パル、昔の仲間という名前のカクテルがある。ルビーのように透き通った、きれいな赤い色の酒である。

 ウイスキーとドライ・ベルモット、カンパリをほぼ同量ずつステアし、ぎりぎりに冷やしてカクテル・グラスで飲む。ほろ苦く、そしてほんのりと甘い、どこか都会の哀愁を感じさせるカクテルである。


 20世紀の初頭あたりに、どうもニューヨークで生まれたらしい。ニューヨークといえば、有名なカクテルにあのマンハッタンがある。そのマンハッタンをドライにし、カンパリを加え、チェリーを抜けば、このオールド・パル。いうならば、あのマンハッタンの男性版のような風味の酒である。


 当時のニューヨークは、血の結束を誇るイタリー系マフィアがのしてきた頃。イタリー産の赤いカンパリが使われたあたりに、オールド・パルの時代背景がうかがえるようで、ちょっと興味深い。


「ニューヨーカー」派の作家ジョン・オハラの小説に、タイトルに同じパルという言葉を使った『パル・ジョーイ』という作品がある。しがない歌手ジョーイが、ステージ用のタキシードと靴だけを手にニューヨークを落ちて、あちらこちらの田舎町を流れていく。その各地方からニューヨークの友人へ、女がらみ、事件がらみの近況報告の手紙を出すという書簡体の連作小説だった。


 ある夜、都心のバーのカウンターで、友人とその『パル・ジョーイ』の話で盛り上がっていた。それを耳にしていたアメリカ帰りのバーテンダーが、ちょうどいいカクテルがあると、このオールド・パルをつくってくれたのだ。もう30年も昔の話である。


 その時、一緒に飲んだ友人、それこそオールド・パルも今は音信不通。一体どこでどうしてることやら……。そんな昔の仲間が気になる夜、バーの片隅でしみじみ飲むにはもってこいのオールド・パルである。

 

撮影強力 : 3rdラジオ (03-3402-2668)

 
 

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