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2000.12.01

悲劇の美酒アドニス

オキ・シロー

悲劇の美酒アドニス

 

 

 アドニスは、ドライ・シェリーとスィート・ベルモットでつくる古いカクテル。ワイン系同士の酒がかもし出す優美な風味が、なんとも魅惑的なアペリチフの傑作である。

 このアドニスという名は、ご存知ギリシャ神話に登場する美青年の名前。美の女神ヴィ-ナスが、息子キューピッドのいたずらがきっかけで、今でいう不倫の恋に激しく身を焦がす、その相手の青年である。

 19世紀も終わりに近い1884年、この恋物語をモチーフにした、その名もずばり『アドニス』というミュージカルがブロードウェイで上演された。これが大ヒット。その評判にあやかってニューヨークで生まれたのが、このカクテルだという。これもミュージカル同様、評判をよんで、特に当地のレディたちに大いに愛飲されたそうだ。

 ベースのドライ・シェリーに、スィート・ベルモットを3~4分の1ほどと、オレンジ・ビターズ1ダッシュを加え、素早くステア。きりきりに冷やして、すらりと美形のカクテル・グラスで飲む。

 このアドニス、容姿も風味も、ギリシャ神話のアドニスに負けず劣らずの美青年ぶり。シェリーもベルモットもワイン系だから、口当りはあくまでソフトで優しい。ベルモットの柔らかい甘味が、ドライなシェリーをなんとも艶っぽい酒に仕上げている。

 ヴィ-ナスの恋は、アドニスの不慮の事故死で悲劇に終わる。ほんのりと甘く、口当りの優しいアドニスにも、その悲劇のきざしは感じられる。まるで恋の行末を暗示するように、1ダッシュのビターズのほろ苦味が、舌にかすかに残るのである。

 美青年アドニスを気取るもよし。若くして命を散らしたアドニスに思いを寄せるもよし。いずれにしろ、ロマンチックな気分にさせてくれること受けあいの美酒、アドニス。特にシェリー好きな人には、こたえられない風味のカクテルだと思う。

 

撮影強力 : 3rdラジオ (03-3402-2668)

 

 

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