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2015.04.08

第1回 釈迦は「植物のように生きよ」と説いた

稲垣 栄洋

第1回 釈迦は「植物のように生きよ」と説いた

不浄である泥の中から茎を伸ばし、清浄な花を咲かせるハスは、仏教が理想とする在り方。極楽浄土に最もふさわしい花とされてきました。このように仏教ではさまざまな教義が植物に喩えて説かれ、寺や墓のまわりも仏教が尊ぶ植物で溢れています。『なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか』は、そんな植物と仏教の意外な関係、植物の生きる知恵を植物学者、稲垣栄洋さんが楽しく解説した一冊です。ダイジェスト版の短期集中連載第1回は「はじめに」と「目次」をお届けします。

はじめに

 仏典にはさまざまな植物が登場します。

 釈迦の人生を見ても、大切な場面になると必ず傍らに植物があります。

 釈迦が生まれたときは、無憂樹の花が咲き誇っていました。出家した釈迦が悟りを開いたのは、菩提樹という木の下でした。そして、釈迦は沙羅双樹の木の間に横たわり、入滅されたのです。このとき、沙羅双樹は、満開に咲かせた花を舞い散らせ、釈迦の身に降り注いだといわれます。

 仏教発祥の地はインドです。インドの人々にとって植物は、日々の暮らしに欠かせない身近な存在でした。そのため、仏教の世界では、多くの教義が身近な「植物の生き方」にたとえられ、説かれていったのです。

 しかし、残念ながら、仏教の教えで取り上げられる植物はインド原産のものが多く、日本人である私たちにはなじみがありません。

 熱帯気候で育つインドの植物の多くは、仏教が伝わった中国や日本では育てることができなかったため、インドの植物が伝わらなかったのです。

 そのため、日本では、仏教のふるさとのインドとは異なる植物が「仏教の植物」として人々に親しまれてきました。「仏教と植物」というと、もともとのインド原産の植物が取り上げられることが多く、日本人になじみのある植物が紹介されることはあまりありません。

 そこで本書では、そんな日本人に昔から親しまれてきたなじみのある「仏教の植物」を紹介していきます。

 古くから人々に親しまれた「植物の生き方」は、私たち現代人にも多くのことを教えてくれます。種から芽を出し、茎を伸ばし、花を咲かせ、実を結ぶ。やがて、花は静かに散り、枯れてゆく。仏教では、こうした植物のシンプルな生き方を理想とし、植物が咲かせる美しい花を、悟りの境地に達した聖人にたとえました。また、植物の美しく咲き香る姿と静かに散り枯れてゆく姿は無常観を、落とした種から再び芽吹くようすは輪廻転生を表すとされました。

『法華経』というお経があります。これは「華の法の経」と書きます。蓮華にたとえられる経典という意味です。つまり、「蓮は泥より出でて泥に染まらず」といわれるように、池の底の汚れた泥の中(不浄)から茎を伸ばし、美しい花を咲かせるハス(蓮)の花(清浄)のあり方が、一つの理想にたとえられたのです。

『華厳経』は、仏になる修行を花にたとえています。また、『大乗稲経』というお経は、仏教の根本的な教義を、稲が生長して稔るようすにたとえています。
本書では、仏教と関係の深い植物を取り上げ、その特徴を紹介していきます。しかし、それは単に植物の話では終わりません。そこには古人が魅せられた植物の生きる知恵があります。仏教が理想とした、植物の強い生き方を感じ取っていただけたらと思います。

 

目次

はじめに 

第1章

仏教と縁の深い植物の謎 
泥の中から花を咲かせるハスの秘密 
なぜハスは因果倶時のたとえに用いられたのか 
葉っぱがないのに花を咲かせるマンジュシャゲ 
種をつけないマンジュシャゲはどうやって各地に広がったか 
マンジュシャゲが墓地に植えられる理由 
死者を悪霊から守るシキミ 
三千年に一度咲く縁起の良いウドンゲ 
鬼門を守るヒイラギとナンテン 
キクは縁起が良いのか悪いのか 
イネより高級なススキ 
なぜジュズダマに穴があいているのか 
マコモは日本人にとって重要な植物 
どうしてムクロジが無病息災のお守りになったのか 
沙羅双樹の代わりにされたナツツバキ 
お経の木と呼ばれるタラヨウ 
本当は怖い聖なるボダイジュ 
線香の材料となるタブノキ 

第2章

仏教と植物の意外に美味しい関係 
隠元禅師が日本に伝えたのはインゲンマメかフジマメか 
ネギは神聖なのか不浄なのか 
苦難に耐える力を呼び覚ますニンニク 
ダイズの芽生えの力をいただきます 
お寺の前で売られたトウガラシはなぜ辛い 
ソバと蕎麦屋の屋号と寺の関係 
この世とあの世の境界を示すチャノキ 
お盆にご先祖様はキュウリとナスに乗る 
マンダラゲの異名を持つチョウセンアサガオの毒 
釈迦の誕生日とアマチャ 
東海寺では「百本漬け」と呼ばれるダイコンの「たくわえ漬け」 
ゴマは精進料理の隠れた主役 
ミョウガで忘れっぽくなるのも悪くない 
節目となる仏教行事でいただくアズキ 

第3章

心に染みる仏教と植物の話 
仏様の渇きをいやすミソハギのしくみ 
ともに生きるレンゲの智恵 
死の大地にいち早く芽を吹いたスギナ 
比べられて鬼になったホトケノザ 
役に立たないと烙印を押されたイヌタデ 
ホトケノザのおしゃべり 
失われゆく盆花摘みの風習 
ザゼンソウの温かいおもてなし 
キランソウの別名は「地獄の釜のふた」と「医者殺し」 
クローバーの「幸せ」の探し方 
仏具をピカピカにするカタバミ 
ホテイアオイ異常繁殖の真実 
大輪ではなく小さな花をたくさん咲かせるニラ 

第4章

仏教が理想とする植物の生き方 
どうして肉食が禁止されるようになったのか 
どうして植物を食べることは殺生ではないのか 
日本人はすべての生物に仏性を感じる 
キリスト教の自然観、日本仏教の自然観 
キリスト教では悪い草が「雑草」、良い草が「ハーブ」 
自然の力を活用しながら、自然とともに生きる 
雑草に悩まされながら憧れを抱く日本人 
植物の生き方、人の生き方 
植物にとって「自分」とは何か 
命短く進化する 
「寿命」の発明 
植物の寿命 
七十兆の命の集まり 
草の生き方、虫の生き方 
あなたという名の生態系 
命のつながり 
花は無心に咲くのか 
招かれざる客 
花を美しいと思う心 
すべてのものに意味がある 
赤い花は本当に赤いのか 
虫の目、草の目 
植物は動けない 

おわりに 

 

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