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2015.03.26

ヒットは必然だ。ゲームニクス理論を支える四原則(後編) ~ファミスタで読み解く

サイトウ・アキヒロ

ヒットは必然だ。ゲームニクス理論を支える四原則(後編) ~ファミスタで読み解く

日本のゲーム制作のノウハウを体系化したゲームニクス理論。このあらゆる分野に応用できる日本発の「おもてなしの知恵」で日本製品の魅力を見つめなおす、サイトウ・アキヒロ著『ゲームニクスとは何か』。その一部をダイジェスト版でお届けしています。(全5回)

前々回はスペースインベーダーとスーパーマリオから、前回はドラクエから、人を夢中にさせるための3つの原則を見てきました。今回は第四原則「ゲームの外部化」について見ていきます。

*  *  *
 

 第四原則「ゲームの外部化」は、ゲームと実社会の関係を示す原則です。

 テレビゲームには、学習や福祉などの実社会とリンクする要素が数多くあります。テレビゲームなどのノウハウを教育や介護など社会問題の解決に幅広く役立てていこうという「シリアスゲーム」は、そうしたゲームの可能性を示す一例です。

 ここで、ゲームと社会の関係を、もう少し引いた視点で眺めてみましょう。

 そしてこの両者の関係性が、双方向的に存在していることに気づいていただきたいのです。

「テレビゲームとしてのエンタテインメントを、リアルな世界に持ち出す」ことと、「リアルな世界をゲーム内に誇張して再現する」という、双方向からの考え方です。

 第一の、「テレビゲームとしてのエンタテインメントを、リアルな世界に持ち出す」というのは、ゲーム内で獲得した経験値や、プレイヤーの体験を、現実世界に適用することを意味しています。

 具体例を挙げましょう。ダイエット器具にゲーム要素を採り入れて、楽しみながら体重を減らすなどは、もっとも分かりやすい例でしょう。知育ゲームを遊びながら脳年齢を若返らせるというのも、ここに当たります。

 第二の「リアルな世界をゲーム内に誇張して再現する」というのは、ドライブゲームやスポーツゲーム、シミュレーションゲームなど、現実を題材にしたゲームで多く見られます。

 ここでは野球ゲームの代表作「プロ野球ファミリースタジアム」(=ファミスタ)を例に読み解いてみましょう。

 このゲームは実際の野球という競技を、テレビゲームの世界で再現したものです。そのため、基本的なルールは野球と同一です。個々の選手にも、実在のプロ野球選手をモデルにした能力値が設定されています。

 しかし、実際のプロ野球を完全に再現することは不可能でした。グラフィックや動きなどは、かなり簡略化されたものになっています。

 中でも最大の違いが、一試合にかかる時間です。現実のプロ野球では、一試合に3時間以上かかる例がほとんどです。しかし「ファミスタ」では、約20分で一試合が終わります。

 では、プレイ時間が短くなったことで、ゲームのおもしろさは半減したでしょうか? 答えは反対。その分だけ「投げて、打つ」という野球の本質的な魅力を、濃縮して表現することができました。そしてホームランを打ったとき、まるで実際にバットを振ってジャストミートしたかのような、リアルな“感触”が味わえるゲームになったのです。

 テレビゲームにおいてプレイヤーが求めているのは、現実そのままのリアル感ではありません。現実をうまく抽象化し、誇張することで、“現実よりもリアル”な「超リアル」感を演出できるということが、大きなポイントなのです。

 

ゲームから、ゲーム外の世界へ

 どうですか。ここまで読んでいただければ「なぜ子供たちがゲームに熱中してしまうのか」その理由の一端が見えてきたでしょうか。

 具体的に、実際のゲームを例にして説明しましたが、考えれば考えるほど、この「人を夢中にさせる」ノウハウが、他のいろいろなことにも通じていると感じていただけたのではないでしょうか。

ゲームニクスとは何か』を読んでいただければ、自らテレビゲームをするときはもちろん、他人のやっているテレビゲームを見ているだけで、「ああ、なるほどテレビゲームには、確かに熱中する要素がつまっているな」「あ、ここはこういう方法で人を惹きつけているぞ」などという観点が身につき、「人を熱中させる仕組み」を体験したり観察したりすることができるようになるはずです。

 と同時に、ゲーム以外のことでも、「なんでみんな、〇〇にこんなに夢中になってるんだろう?」「どうして、こっちはヒットしているのに、こっちはヒットしていないんだろう?」「人気商品を作るのに、どこにポイントを置いたらいいのだろう?」「失敗した仕事の理由はどこにあるんだろう?」といった疑問が出たときに、ゲームニクスの四原則を応用すれば、今まで思いもつかなかった答えが出るかもしれません。そして、あなたにビッグヒットをもたらすかもしれません!

 ゲームニクス理論は、実は、日本の誇るべき「繊細で丁寧なもてなしの感性」に支えられたノウハウです。まさか、そんな「日本の伝統」が「ゲーム」の中に歴然と存在しているなんて、考えたことのある人は少ないのではないでしょうか?

 身の回りのさまざまなものや出来事が、ゲームニクスによって、新たな視点を生み、多面的な有機性を持ち、より真理に近づくことができると、私は信じています。

 

※次回「ゲームニクス実践編。子供を授業に夢中にさせる方法」は4月2日(木)更新予定です。

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関連書籍

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