毎日を1%ずつ新しく生きる! 刺激と感動のマガジン&ストア

★がついた記事は無料会員限定

2015.02.20

はじめに「受賞のことば」

哲学とは一種の観光である。

東 浩紀

哲学とは一種の観光である。

「紀伊國屋じんぶん大賞2015」大賞を受賞した、東浩紀さんの『弱いつながり 検索ワードを探す旅』。受賞を記念した対談を公開する前に、まずは東さんの「受賞のことば」をお届けします。東さんが本書で訴えたかったことがあらためて見えてきます。

 

 紀伊國屋じんぶん大賞に選ばれたとの報を聞き、光栄に思っています。

 本書でぼくが訴えたかったのは、ひとことで言えば、「哲学とは一種の観光である」ということです。観光客は無責任にさまざまなところに出かけます。好奇心に導かれ、生半可な知識を手に入れ、好き勝手なことを言っては去っていきます。哲学者はそのような観光客に似ています。哲学に専門知はありません。哲学はどのジャンルにも属しません。それは、さまざまな専門をもつ人々に対して、常識外の視点からぎょっとするような視点を一瞬なげかける、そのような不思議な営みです。ソクラテスの対話編には、哲学のそんな本質がすでに明確に刻まれています。

 しかし、そのような観光客的な知のありかたは、現実の観光産業の隆盛とは対照的に、いまの日本ではもっとも蔑まれ、憎まれるものになってしまっています。メディアは専門家に支配されています。そして大衆はつねに答えを求めています。日本をよくするのはどうすればいいのか、いつ結婚しいつ子どもをつくればいいのか、格差社会で生き抜くにはいくら貯金すればいいのか、無数の専門家が無数の答えを提供しています。けれどそのような答えに疑問を投げかけ、立ち止まらせる言説は必要とされない。ぼくとしては、この本では、そんな風潮に小さな一石を投じたつもりでした。

 本書は、哲学や思想にまったく親しみのない一般読者に向けた、一種の啓蒙書というか自己啓発書です。気軽に、観光ガイドのように読める本です。この受賞をきっかけに、より広い読者が手にとってくれることを望んでいます。

 哲学は役に立つものではありません。哲学はなにも答えを与えてくれません。哲学は、みなさんの人生を少しも豊かにしてくれないし、この社会も少しもよくはしてくれない。そうではなく、哲学は、答えを追い求める日常から、ぼくたちを少しだけ自由にしてくれるものなのです。観光の旅がそうであるように。


紀伊國屋じんぶん大賞2015 ──読者と選ぶ人文書ベスト30


 

 

★がついた記事は無料会員限定

関連書籍

東浩紀『弱いつながり』
→電子書籍はこちら
→書籍はこちら(Amazon)


音声コンテンツ

東浩紀さんトークイベント「自由な観光客であれ、そして、観光客を無視する村人であれ」
音声コンテンツ配信中!

記事へのコメント コメントする

コメントを書く

コメントの書き込みは、会員登録とログインをされてからご利用ください

おすすめの商品
  • ピクシブ文芸、はじまりました!
  • 文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作!
  • 無理しないけど、諦めない、自分の磨き方
  • 時短、シンプル、ナチュラルでハッピーになれる!
  • ビジネスパーソンのためのマーケティング・バイブル。
  • 有名料理ブロガー4名が同じテーマでお弁当を競作!
  • ドラマこそ、今を映すジャーナリズム!
  • 砂の塔 ~知りすぎた隣人[上]
  • 小林賢太郎作品一挙電子化!
  • あなたがたった一人のヒーローになるためには?
朝礼ざんまい詳細・購入ページへ(Amazon)
文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作!
ピクシブ文芸、はじまりました!
エキサイトeブックス
今だけ!プレゼント情報
かけこみ人生相談 お悩み募集中!