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2013.09.01

第46回 蛇いちご新聞

豊村 真理

第46回 蛇いちご新聞

 

 

 

「なぞなぞ」、「クイズ」に関して思うところを書かせていただきました。皆さんは「なぞなぞ」、お好きですか!?

 

 

 

 

なぞなぞ問題

 ほとんど憎悪といっても良い。私は「なぞなぞ」が嫌いだ。もしも人の親となる日が来てその子供が「なぞなぞ」にハマったりしたら、迷いなく勘当しようと思っている。「その『なぞなぞBOOK』を早く捨てろ! それまで我が家の敷居は、父さん一歩だってまたがせないぞ!!」なぜ自ら父親役を引き受けているのかはさて置き、要するにまぁ、それくらい嫌いです。

 人生ではじめて遭遇した「なぞなぞ」は確か、こんなのものでした。「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足、この生き物、なーんだ?」小学校の遠足のバスの中でガイドさんが出してくれたものと記憶していますが、聞いた瞬間(…そんな生き物、いるわけねぇし)と暗い気持ちになったことを覚えています。ねぇ、みんなもそう思うでしょ? くるりと振り返ると、意外にも必死で考え、悩み込んでいるクラスメート達の姿がそこに。そしてほどなくして方々から「ネコ!」「イヌ!」「ブタ!」といった残念な声が聞こえてきました。するとバスガイドさんは、回答の嵐が止んだタイミングを見計らうと、勝ち誇ったようにこう告げたのです。「はい、ブゥーーーーー!!!!」そして鼻腔をめいっぱい広げて言い放ちました。「正解は『人間』でしたーー!」その時民衆は怒り狂い、バスガイド目がけて突進、倒れたガイドの重みで運転手はハンドルを切り損ねてバスは谷底へ転落、楽しい遠足は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図に…なるわけもなく、皆、感心したように頷いていました。「なるほどー」「あ、そっかー」「赤ちゃん→大人→老人かー」。…こ、こんな強引な「とんち」に、みんな素直に納得しちゃうわけ? さっきのアイツの表情見てなかったの? あの「ブー!」と言う時の人を小馬鹿にした顔を! ナロー、私は認めないわよ!! …その日を境に私は、安易な「とんち」をモチーフとした「なぞなぞ」とは、きっぱり袂を分かって生きて参りました。

 

 

「なぞなぞ」の親戚(?)ということで、「クイズ」も好きになれません。高校生の時に、無理矢理行かされた学校主催の山登りキャンプで「高校生クイズ」出場希望の女子と同室になったことがありました。彼女はとにかく暇さえあればクイズ本を読んでいるような人で、迷惑なことに、どうやら私を練習台か何かと勘違いしているらしく、折に触れてやたらと問題を吹っかけてくる。例えば寝ようとしていると横で突然、「ピラミッドの周りの長さは何メートルでしょう!?」 当時、文系でありながら“世界の歴史を高校3年間で学び取ることは不可能”と割り切っていた私は、世界史の授業は一切聞かないことをポリシーとしていたため、正直この手の問題はお手上げでした。…しかし。よく分かんないけどピラミットって、クフとか何とか、ファラオのクラス感によってサイズにもかなりの隔たりがあるものなんじゃないの? そこを何メートル、とぴっちり割り切って良いものか…。言いよどんでいると、彼女はやはり鼻腔を広げてこう言いました。「はい、ブーーー! 正解は○メートルです!」。……「クイズ」を好きになれないのは、こういう所です。答えをひとつに絞ろうとする。このシステムが理解できません。

 ひとたび世の中に出れば、そこで出会う問題には、明確な答えなど無いことが圧倒的です。○か×かよりは△、白か黒かよりはグレー。あるいは限りなく透明に近いブルー。しかし、そんな「微妙でスッキリしないゾーン」を何とか手探りで進んでゆくことこそ、人生というものではないでしょうか? 確かにそれは苦しい。でもその苦しみから逃げて、安易に「フィフティ・フィフティ」や「オーディエンス」を頼り、いとも簡単に「ファイナルアンサー」を連発してしまって良いのだろうか? いや、良いわけがない。

 自分はあの時なぜあんな事をしてしまったのか? あの人の漏らした謎の発言の真意とは? そして町中にあふれる意味不明な看板、読めない空気、止まないゲリラ豪雨・・・。
 これら、日々の生活に潜むさまざまな「謎」について考え続けることは、たった一つの答えしか持たない「なぞなぞ」や「クイズ」の解決に時間をつぎ込むより、よほどスリリングで、重要な行為であるはずです。

 参考までに一例として、私がここ数年毎日考え続けている「とある謎」をご紹介させていただきたいと思います。

 私は小さなマンションの1階に住んでいるのですが、ベランダの目の前には大家さんの家の門があります。だから朝、窓を開けて「うーん」とか伸びをしていると新聞を取りに来た奥さんや旦那さんと目が合ったりして「…はは、どうも」ということもしばしば。
 要するに微妙な立地なのですが、不動産屋さん曰く「こういう場所にある部屋は、泥棒に入られにくいですよ」。大家さんの目が届きやすいので、本職の空き巣から敬遠される率が高いのだとか。へー。そうなんだ。軽い気持ちで入居を決めたのですが、確かに危ない目に遭ったこともないし、大家さん夫妻もいい人そうだし、まぁ、いい部屋に入居したかな、と納得しかけていた矢先のことでした。

 ある初夏の夕方、窓を開けて自宅で机に向かっていたところ、大家さんの家のインターフォンのボタンをものすごい勢いで押して叫んでいる人がいる。窓が開いていたので、聞くともなく聞こえたのですが、声の主は相当怒っているようです。

 市原悦子ばりにそっとカーテンの隙間からのぞくと、そこにいたのは身長180センチはあろうかという巨大な“怒れるインディアン”。いや、インディアンが日本にいるわけがない…。目をこらしてよく見ると、その人は極太の三つ編みを足元まで垂らした 女性。手が付けられないほどに怒り狂い、高橋名人ばりのBダッシュでボタンを連打するその気迫にあえてタイトルをつけるとするなれば
『インディアン・ジェロニモ〜アパッチ族の逆襲〜』といったところか。

 おろおろしつつもジェロニモの様子を窺っていると、インターフォン越しに返答が。するとジェロニモは大声で言いました。

「ちょっと、お宅のご主人に、用があるんだけど!!!」

 その後、「主人は今いません」とか何とか、数分間のやり取りの末、ジェロニモ(※女性です)は矢も盾もたまらない、といった形相でこう叫びました。
「私、お宅のご主人に、レイプされたんです!!!」

 !!!!!!!!!!!!!!!!!

 …大変なことを聞いてしまった。私は窓を閉め、即座に鍵をかけてカーテンを引いた。そしてヘッドフォンを装着して大音量で音楽を流し、今見たことを忘れるべく全力を尽くしました。そんなデリケートな問題に首を突っ込むなんて…あきらかに健全なご近所付き合いの一線を越えている。目の前の作業に集中することで何とかジェロニモの存在を頭から追い払うことに成功しかけた、その時です。ふと窓を見ると、カーテンの向こうに無数の赤い光が揺らめいている。
「まさか…焼き討ち!?」
 慌ててカーテンを開けると、そこにはたいまつを掲げたアパッチ族の援軍が!! …というのは真っ赤なウソで、「左右を警官に取り抑えられたジェロニモが、暴れながらパトカーに連行されているところ」という本日一番のハイライト・シーン。
(やっぱりジェロニモさん、攻め込む相手を間違えたんだ…。だから警察が迎えに来たんだな。そうだよ。だってまさかあの大家さんが・・・うん。そんな訳ない)。ほっと胸をなでおろしてパトカーを見送ったその時。ふと、気になる事実に思い当たりました。
(大家さんの旦那さんもジェロニモによく似ている)。まさかタデ喰う虫もジェロニモ…!?
 

 

あれから4年。窓を開けるたび、洗濯物を干すたび、私はほぼ毎日、ジェロニモさんのことを思い出します。そして考える。一体、真実はどこにあったのかと。もちろん大家さんが潔白であると信じてはいます。しかしそれでもやはり、怒り心頭だったジェロニモさんの心にも、思いを巡らさずにはいられない。ていうかあの人、マジで誰だったんだろう!?  …以上が私にとっての、この世のあらゆる「なぞなぞ」を凌駕する、世界最高峰の「謎謎」です。

 

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