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2013.10.15

第九回

O脚の コンプレックス
放り出し 空洞化した 内転筋
育ててみせます 冷や水で

内澤 旬子

O脚の コンプレックス<br />放り出し 空洞化した 内転筋<br />育ててみせます 冷や水で

夜間に独自アレンジしたウォーキングをして筋肉を維持?しながら、右股関節のリハビリ運動を、クルクルパタパタ毎日行う日々。治療とリハビリ運動の成果なのか、一ヶ月ほどで痛みは右股関節一点のみに後退してきたのだから、大変ありがたいことなのである。が、痛みが日常生活にひびかなくなるにつれ、厭きてきた。なにしろ単純な股関節回転運動なのだ。股関節の痛みはなかなかとれない。こんなことして何が変わるんだろうか。
「でも五分くらいやってると結構疲れるでしょ」と治療室のT先生。
 …? はあまあ。
「本当に毎日やってる?」
 疑わしげな目を向けるT先生。も、もちろんですとも。じゃあ、ちょっとやってみてと言われ、診察台のベッドに寝転がり、脚を腰幅に広げて内外に回す。
「ダメ。骨盤の横のところがボコボコ動いてる。腿の外側の筋肉使ってるでしょ。そこを動かすんじゃない。ここ、ここを使って」
 と、手を置かれたのは、右膝のちょっと上の内側。
 んんんん? もちろん触られれば感覚はあるんだが、そこは、なんだか、力が入らない。電波が一本も立たない地域のような空白感。脚を内旋させることはできるんだけどなあ。
「外側の筋肉に代替させて動かしてきたんだね。ほらこうしたら力入らない? 跳ね返してみて」
 T先生が膝上の内側に手を置いて、ぐっと外側に押す。ぐっと内側に返すように力を込める。
「腿の外側は動かさないで!」
 そんな器用に筋肉の部位ごとに指令を分けられません! 脚を内旋と言われりゃ内旋するけど、この筋肉を使わないでこっちを使ってなんて、どうやったらいいんですか! ひょっとして私、脚をどうこうする前に、脳や神経のどっかが損壊してるのかしら。
 軽くパニック状態になるくらい、見当もつけられない動きでなのである。
 なんてこった。
 これまでも、ヨガでここに息入れてとか、伸ばしてとか言われながら身体の一部分を指されて、まるで意識してこなかった身体の部分を発見して驚くことはあった。でもそれは、言われてすぐに意識して動かせたのだ。だからこそ驚けたというか。
 待てよ。足の四点立ちは、出来るまでにかなり時間がかかったんだった。しかしあれは、もともとそんなこと出来る人のほうが少なそうな動きであるから、わからなくても当然かなと構えていられた。
 だけど今回はただ寝転がって、足を内旋させるだけの動きなのである。赤ちゃんだって動かせる。それがちゃんと出来てないって、どういうことなんだ。
「よし。左脚でやってみようか」
 クルパタン、クルパタン。
「出来てるじゃない! ちゃんとここを使えてる。左脚をお手本にしてやってみてよ」
 えええええ。
 左脚とて、ここもそこもなんっにも、まるっっっきりわかりません。無意識に動かすべき筋肉を作動させて、内旋させているらしいんだが、そこは無意識なんで、どう動かしたらそうなるのか、ぜんぜんわからないのである。右も左も脳は同じように指令を出しているはずなのだが。
「ほらここ、骨盤の下を触って。はい廻して。……ね? 動かないでしょ?」
 まあ確かに。外見上、足の付け根アタリの動きは、左右でかなり違うのだ。右の方が盛り上がる。しかし左を目指して右を直せと言われても、なにをどうしていいのか、皆目わからない。
「……。まあとにかく地道に続けてみてよ。軽い動きでも繰り返していれば周りの軟骨や筋肉が育つ。股関節痛めた人は、これで治るひと多いから」
 はあ……。
 翌週には別のリハビリ運動を教わった。それは、足を腰幅のまま前後に開いて、前に出した足の膝を曲げて、後ろの足を伸ばしたまま床から浮かせるというもの。
「ほら、お尻が外側に出る。まっすぐ曲げて。……やっぱり内転筋が使えてないんだ。O脚の人に多いんだよね。はじめはどこかにつかまりながらやって」
 たしかに膝をまっすぐに出したままで後ろの足を持ち上げると、よろよろしてしまう。バランスをとろうとすると、お尻が横に出る。軽くつかまりながら尻を膝と一直線上に置きなおすと、これまで使えていなかったと思われる内側の筋肉がぎゅうっと縮んで意識に浮上。あああ、ここですか???
 どうやらこっちは代わりに働いてくれる筋肉がない動きらしい。おかげで逃げ道なく、どこを使うべきなのかは分かった。使えなくても、お尻を内側に入れながら曲げれば、たよりないけれど、はいいい、と内転筋がかすかに悲鳴、じゃなかった応答する。ああ、脳と繋がっているだけで、ちょっと嬉しい。
 うーーん。四十手前からの付け焼刃ではあるけれど、結構運動して筋肉をつけてきたつもりだったんだが、こんな未開拓のアメリカ大陸みたいなところがいきなり出現するとは。果てしないな、身体。

 で、T先生にペロッと言われたけれど、ここが空白だったからO脚だったんだよね…。なんとなくは分かっていたけど、これほどないとは思わなかった。ほとんど無に等しいとはなあ。
 しかしいい加減ながら七年も習ってきたヨガでも発見しきれなかった内転筋の欠損?が、はじめて一年足らずでこのように暴かれるとは。バレエのごまかしのきかない恐ろしさ、いや凄さをひしひしと感じる。

 それにしても、ここ数年で仕入れて試したことの半分でもいいから、中学時代の自分に伝えられたら。いやホントは小学生からどうにかしたい。おとなしくバレエを習っておけば良かったのだろうか。
 O脚に悩んで、膝を紐で縛って寝ていた十三歳の自分の夢枕に立って、無駄だからやめとけと忠告したくてたまらない。縛ったところでどうにもならないのに。
 いや、膝を縛って寝ていたのも、たいして続かなかったから、ひょっとしたら忘れているだけで、もうすでに私は過去の私の夢枕に立てたのかもしれない。だとしたらあともう三段階ほど踏み込んでレクチャーしたかった。夢枕滞在時間が足りなかったんだろうか。
 あの頃の私は骨をどうにか動かそうと考えていた。たしかに骨の位置を動かさねば、脚と脚の距離は縮まらない。そして私の膝下は骨からして曲がっている。どーしよーもないくらい、曲がっている。幼稚園の入園式の写真からして、膝下は曲がっているのであるから、生まれつきに近い。ロシア国立ワガノワ・バレエアカデミーの入学試験は間違いなく落ちるだろう。
 それでも幼稚園児の写真では、膝と膝の距離は、中学生の時よりもずっと近いのだ。成長するにつれて、離れていったと思われる。
 立ち居振る舞いの癖で「ちゃんと」使わずにきたことで、中学生で脚の内側の筋肉全般が、硬く縮こまって、大げさに言えば弓状に曲がっていったと思われる。
 なんとか膝と膝をくっつけようと、中学、高校時代は真剣であったが、内転筋も体幹筋もほとんどない猫背の猿歩き状態で、いくらがんばったところで、どうにもならない。基礎体力と筋力が足りないのに、姿勢を良くしようとしても、維持もできないのだ。

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TAKA2016.7.13

体の事でとても悩んでます。 記事に書いてあるリハビリ運動をもっと詳しく教えていただけないでしょうか?

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