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2014.12.24

第二回

パーリナイという名の

小嶋 陽太郎

パーリナイという名の

 

 先日、とある出版社の主催する文学賞の贈賞式と、そのパーティーに行く機会があった。
 ……ん? いまなんつった? パ、パパパ、パーティー?
 本当ならあと五行くらい使って「パ、パパパパパパ……(中略)パーティー?」とやりたいところである(紙面つーか画面がもったいないからやらんけど)。
 つまりそれくらい、「パーティー」という単語は僕の人生には無縁のものである。はずだった。
 僕は三か月に一回くらい個人的に開催する2000円の焼肉食べ放題をこれまた個人的に「パーリナイ」と称している。「今夜はパーリナイだぜ」とか言いながらカルビを食いまくる。一時間半後にはたいてい「吐きそう。今夜は最悪のナイト、つまりバッドナイだぜ」とか言いながらしぶしぶレジにお札を二枚置いて帰る。
 しかし、このパーティーはそういったアホのパーリナイとは一線を画するものである。そして、その、本物のほうのパーティーに行ってきた。
「パーティーに行ってきた」などというと、まるで大人の社交界に出入りする業界の人間みたく聞こえる可能性が万にひとつあるやもしれぬから、先に断っておく。まったくもってそんなことはないんです。僕は長野県松本市の自然豊かなところに暮らし、たまに前述のパーリナイという名の嘔吐感にまみれたバッドナイつまり焼肉食べ放題2000円を開催することだけが能の地味男である。何がどう間違ってそのようなアダルティな社交界に紛れ込むことになったんだ。誤って人里に降り立った愚かな子だぬきみたいなものだと思って許してほしい。
 僕はいつも汚いパーカー(歯磨き粉とかついてる)で松本の街をうろついているが、これじゃさすがにまずいかなと思い、ユニクロで買ったウールブレンドジャケットを着てスーパーあずさに乗り込んだ。会場はホテルだった。帝国ホテル。「て、ててててて……(以下略)!」
 まず最初に贈賞式。最前列には報道関係っぽい人がたくさんいて、カメラを構えまくっていた。有名文学賞の贈賞式だけあって、選考委員席には超有名人の方々がずらっといらっしゃいましたよ。とにかくびびる。必要以上にびびる。
 席(受賞者席じゃないですよ、もちろん一般席です)に着いてしばらくじっとしていると、人が多いためか暑くなってきた。なんでウールをブレンドしたやつにしたんだ、ウールをブレンドしてないやつにすればよかった……と後悔しはじめた頃に贈賞式が終わった。その後パーティー会場に移動。立食パーティーというやつである。
 業界の人々がワインを片手に談笑している。僕はなんかわからんけど黄色っぽい色のついたお酒を適当にとって飲んでみた。ユニクロウールのせいで汗をかいて喉が渇いていたのでそれを一息に飲み干し、コップをそこらへんの丸いテーブルに置いて、料理をチェックする。生ハムメロンなるものをはじめて目撃。
 生ハムメロンといえば小三くらいのときにルフィ(海賊)が「サンジ、おれも生ハムメロンが食いてーよ」みたいなことを言っていたのを見て「なにそれぼくも食いてーよサンジ」と思ったことを思い出したのだが、ついにその絶好の機会を得たり。実際食ってみた。
 塩辛くかつ甘い。スモーキーかつみずみずしい。僕の単純な舌には少々複雑すぎた。今度は別々に食べよう。
 続いておそるおそる徘徊していると、ステーキを焼いている人がいた。外だけ焼けて、中が真っ赤なやつ。
「お願いですから中までしっかり火を通してください」
 ステーキを焼いている人に言うべきか言わざるべきか、だいぶ逡巡した。なぜかというと僕が三か月に一度個人的に催すパーリナイでは「くれぐれもお肉はよく焼いてお召し上がりください」と注意書きがされているからだ。しかし本物のパーリナイでは肉を生で提供するのが通常のことなのかもしれぬ……さっきのハムも生だったし。そのように自分を納得させ、恐れおののきながら、意図的な生焼けのステーキを食べた。
 ……(うまさに絶句)。
 肉をよく焼いて食うのは時代遅れであると学んだ。だから、今度から個人的なほうのパーリナイでもレアで食いたいと思ったんだけど、どうだろう。ちょっとアレかな。レアだけに。嘔吐感つーかほんとに嘔吐することになるのもアレだしな。
 そのあと「なだ万」という文字を発見して(な、ななななな以下略)、揚げたての天ぷらを食べた。僕はなんと海老天の尻尾を食べずに残すという暴挙に出た(いつもは食う)。本物のパーティーで海老天の尻尾を食べたら、僕が松本の子だぬきであることがばれるかなと思ったからだ。だけど、だれも僕のことは見ていなかったので、食べてもよかったかなという気がする。
 そんなこんなで、ものすごく緊張した。食べ物の話しかしてないけど、ほんとに緊張した。まじで。
 僕にはやはりパーリナイという名の嘔吐感にまみれたバッドナイのほうが身の丈に会っているということを確認できた素敵なナイトになった。
 みなさんは来たるクリスマス、グッナイをお過ごしください。

 

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