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2014.11.23

第25回

完全無欠の堅守速攻

岡田 仁志

完全無欠の堅守速攻

 盤石の勝利だった。22日に行われた、5位決定ラウンドの1回戦(勝者が5-6位決定戦に進出)。相手はドイツ。日本は3月の親善試合で、このチームに0-3で完敗した。昨年12月の欧州遠征でフランスと互角の戦いをして深めた自信を、ポキリと折られた一戦だ。日本はそこから、ディフェンスの再整備を迫られた。そのドイツを完璧に封じ込み、危なげのない試合運びで1-0の勝利をつかんだ日本チームに、私は最大限の敬意を表する。魚住監督の手腕と選手たちの努力には、両手の皮が剥けるまで拍手を送りたいぐらいだ。

 絵に描いたような「堅守速攻」だった。ドイツは、10番の巨漢アレクサンダー・ファングマンを中心に、直線的な力強いドリブルで強引な突破を図る攻撃が特徴だ。見る者が「危ない!」と顔をそむけるシーンも少なくない。しかし日本の選手たちは、まったく臆することなく、「前に出る守備」をやり抜いた。体格差を物ともせず機敏に体を寄せ、自由にシュートを撃たせない。苦し紛れに撃たれたシュートの先には、必ず日本の選手がいた。ドイツのシュートは日本のゴールに届くことさえほとんどない。ルーズボールへのアプローチも、日本のほうが動き出しが早かった。日本はファウルも少なく、相手の長い足をかいくぐってきれいにボールを奪う。

 そして、矢のようなカウンター・アタック。黒田や川村が、2人で守るドイツ守備陣を右往左往させ、次々と決定的なチャンスを作った。スタンドを埋めた観客が、そのたびに思わず歓声を上げる。メガホンを手にしたサポーターが「チャンスで大きな声を出すと選手はボールの音やコーラーの声が聞こえません。どうか我慢して、心の中で応援してください」とお願いする一幕もあった。日本の選手たちが、そんなふうに観客を興奮させている光景に、私は興奮した。

 スタンドの歓喜が爆発したのは前半13分。黒田が、立ち並ぶ大木のあいだをすり抜けるリスのようなステップで敵陣へ到達し、冷静にシュートをねじ込んだ。彼にとって、欧州の代表チームから挙げた初の得点。大会前、「欧州や南米の代表チームからゴールを奪いたい」と語った日本のエースは、パラグアイ戦に続くこの日のゴールで、両方の目標を達成した。それについて、黒田は試合後、こう語った。

先制ゴールを決めた黒田智成。(写真:増田茂樹)

「体の大きな相手から点を取りたいと思っていたのですが、今日はそんなに気負うことなく落ち着いてプレーできました。もう(南米や欧州が相手でも)特別な試合ではなくて、ふつうの試合と同じ気持ちで臨むことができます。それが、いい結果につながっているんじゃないでしょうか」

ドイツの巨漢ファングマンと日本の守備陣。(写真:増田茂樹)

 8年前の世界選手権アルゼンチン大会で、黒田は世界の強豪国から多くの衝撃を受けた。そこであらためて「ブラインドサッカーはすごい」と感じ、本気で世界一を目指しながら今日まで努力を重ねてきた。

 黒田だけではない。日本のブラインドサッカー関係者のすべてが、いつかこの日のような試合ができることを信じて、代表チームの強化に取り組んできた。だが、もはや「世界」は日本が下から仰ぎ見るステージではない。5-6位決定戦への進出を決めたことで、日本は初めて「世界の上半分」に入った。パラグアイ戦とドイツ戦の勝利で、これまで「世界を追いかける国」だった日本は、「世界と戦える国」になったのである。


※ 大会チケットの購入については、主催者の公式サイト(http://www.b-soccer.jp/7432/news/ticket.html)でご確認を。

 

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