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2014.11.20

第22回

光ったダイヤモンド

岡田 仁志

光ったダイヤモンド

 19日のグループリーグ最終戦。勝ち点4の日本は引き分け以上で準々決勝進出が決まる。一方、勝ち点1のフランスは、絶対に勝たなければいけない試合だ。しかも、グループ2位で確実に突破を決めるには、2点差以上の勝利が必要だった。日本が圧倒的に有利な立場である。

 しかし私はキックオフ前、3年前の苦い試合を思い出していた。2011年12月に仙台で開催されたアジア選手権。リーグ戦の最終日にイランと対戦した日本は、引き分け以上でロンドンパラリンピック出場権を獲得できた。ところが、前半は0-0で終えたものの、後半に失点を重ねて0-2で敗戦。後半の選手たちには、戦い方に迷いがあった。「攻めるのか守るのか」――その意思統一が図れなかったことが、敗因のひとつだった。「引き分けでOK」は、楽なように見えて、実は難しい。

 だが、日本チームは同じ失敗をくり返さなかった。戦い方に迷いはない。守る。守って守って守り抜く。パラグアイ戦からのグループリーグで魚住稿監督が掲げた方針を、選手たちはこの試合でも最初から最後まで貫徹した。見栄えのしない泥臭い戦い方であることは百も承知だ。忍耐力とひたむきさ。そんな自分たちの良さを活かして戦うことを、魚住監督は大会前から断固とした口調で明言していた。

敵の足下のボールを確実に狙う加藤健人のシャープなディフェンス(写真:増田茂樹)

 1-2-1のシステムでコンパクトにまとまったダイヤモンド型の守備陣形を崩さず、敵のボールホルダーをフィールドの外へ追い出しているかぎり、失点することはない――終始フランスの強力なアタッカーに押し込まれながらも、選手たちはそれを信じていたに違いない。少しも慌てることなく、守備で試合の主導権を握っていた。焦っていたのは、むしろフランスのほうだっただろう。

 その「ダイヤモンド」をキープする上で鍵を握っていたのは、中盤で守備的な役割を担う加藤健人とDFの田中章仁の「声」の連携だ。加藤が言う。

「アキさん(田中)とは、試合前に『2人で声をかけ合いながらポジションをしっかり確認しよう』と話し合っていました。守備に関しては監督に期待されているのがわかっているのでプレッシャーもありましたが、アキさんとは長く代表で一緒にやっているので、かなりうまくやれたと思います。フランスは勝たなければいけない試合ですから迫力がありましたし、ロンドンパラリンピック銀メダリストとしてのプライドも持っていたと思いますが、自分としては『攻められている』というより『攻めさせている』という気持ちでプレーすることができました」

 見えないサッカーで、ボールを扱う以上に難しいのが「ポジショニング」だ。ボールはひとつだが、「ダイヤモンド」は3人の味方と自分のポジションを把握しなければ作ることができない。この試合にフル出場した加藤と田中は、その難しい仕事を最後までやり遂げた。加藤は、危機察知能力も抜群だった。危ない場面にはことごとく顔を出し、ファウルを犯すことなく確実にボールをクリアする。フランスがコーナーキックを高々と浮かせ、中央の選手がそれを受けたときには、動いているボールにしっかりと足を出し、シュートをさせなかった。

PKのホイッスルを待つ佐々木ロベルト泉。(写真:増田茂樹)

 試合の終盤に幸運が訪れたのは、加藤をはじめとする守備の踏ん張りがあったからこそだろう。カウンターを仕掛けてシュート体勢に入った黒田智成が足を引っかけられて、PKを獲得。前日のモロッコ戦で第2PKをGK正面に蹴って止められた佐々木ロベルト泉が、これをゴール右下に突き刺した。徹底して「守る」と決めた試合で先制してしまうのだから、サッカーは面白い。その直後、フランスに第2PKを決められたが、1-1でタイムアップ。3度目の世界選手権で初めて、日本はグループリーグを突破した。日本の「ダイヤモンド」は、硬度も輝度も抜群だった。

 グループAを2位で通過したため、次の準々決勝(対戦相手はグループBの2位)は21日(金)の11時キックオフ。この満員化プロジェクトにとっても、新たな試練である。平日の午前中にスタンドを埋めるのは、容易ではない。ちなみにフランス戦のスタンドは、およそ9割の入りだった。満員なら、勝って1位通過できたかもしれない。準々決勝以降のノックアウトステージに「引き分け」はないから、チームの目標である「ベスト4進出」を達成するには、満員化が必須だろう。あなたのポジションは、国立代々木競技場フットサールコートのスタンドにある。選手たちよりも、ポジショニングは簡単なはずだ。

グループリーグ突破を決めてスタンドサポーターと喜びを分かち合う日本の選手たち。(写真:増田茂樹)

(取材協力:瀬長あすか)


※ チケットの購入については、主催者の公式サイト(http://www.b-soccer.jp/7432/news/ticket.html)でご確認を。

 

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